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2018.08.27 政策研究

「香川・目黒虐待死事件」の検証と再発防止提言-全件共有論への危惧を中心に-

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日本大学危機管理学部准教授 前文京区子ども家庭支援センター所長
日本公法学会・警察政策学会・日本子ども虐待防止学会等所属 鈴木 秀洋

目次

はじめに
第1 警察・児相間全件共有論への危惧
 1 児童福祉法等と刑事訴訟法等との基本理念の相違を看過している点
  (1) 通告は子ども・保護者のSOSであり支援・介入の端緒である
  (2) 虐待対応は警察介入をメインロードとしてよいのか
 2 現行児童福祉法制度活用への言及がない点
  (1) 立入調査・臨検・捜索等の制度─介入の法制度は存在していること
  (2) 現行法制下の警察との連携の実務通知・指針
  (3) 現行刑事法制度(警察官職務執行法・警察法含む)
  (4) 行政手続一般及び他の行政手続との比較の視点
 3 児童福祉(相談・ケースワーク支援等)の専門性─要対協による関係機関ベストミックス・支援拠点の設置に言及がない点
  (1) 要対協との関係について
  (2) 市区町村子ども家庭総合支援拠点との関係について
 4 まとめ(結論)
第2 虐待死防止のための提言(4つの提言)
 1 相談対応件数の上限の設置(ケースワーカーの強制設置とメンタルヘルスケア)
 2 要対協調整機関専門職配置の迅速化と権限付与・義務化
 3 市区町村子ども家庭総合支援拠点の迅速設置と補助拡大─市区町村中心主義へ
 4 現行法制度を使いこなすケースワーカーの能力向上と専門アドバイザーがいる日常
おわりに

はじめに

 「目黒区虐待死事件」再発防止の解決策として、児童相談所と警察とが全件共有すべきとの提言(以下「全件共有論」という)が行われ、署名活動が広がっている。いくつかの都道府県では導入がされている。
 しかし、全件共有論は、筆者の児童福祉行政の指揮をとってきた立場、行政法・地方自治法の教鞭を執っている立場、児童福祉と刑事の架橋を研究テーマとしている研究者の立場(警察政策学会所属、日本子ども虐待防止学会所属)からして、解決提言として極めて疑問であるため、全件共有の弊害を指摘するとともに全件共有に代わる具体的提言を行うこととしたい。
 筆者自身は、多機関情報共有・連携推進論者である。東京23区において、危機管理課長として暴力団排除条例立案担当し警察との積極的な連携を行い、また東日本大震災に際しては妊産婦・乳児救護所の制度設計を行い医療と行政のネットワークづくりを推進、さらに居所不明児童を救うべく、子どもおせっかい地域ネットワーク構築など行政機関の足りない部分を多機関で凸凹を埋めて住民の命を救うべきとの立場で様々なネットワークづくりを推進してきており、多機関連携ネットワークづくりにより行政課題を解決してきた。
 その立場をしても、全件共有論に賛同できないのは、以下に指摘するとおり全件共有論は、子ども(家庭)の命を救うことにはならない(弊害の方が大きい)と考えるからである。以下論点を整理するとともに、虐待死防止のための具体的提言を併せて行う。

第1 警察・児相間全件共有論への危惧

1 児童福祉法等と刑事訴訟法等との基本理念の相違を看過している点
 児童福祉法制と刑事訴訟法制とはその基本理念・基盤を異にする。児童福祉法制は保護者を逮捕し処罰するための法制度ではない。この点に常に立ち戻って法制度設計を行わねばならない。
⑴ 通告は子ども・保護者のSOSであり支援・介入の端緒である
(ア) 通告の受け止め方
 日常の子どもに係る相談や通告は様々なものがある。市区町村や児童相談所には、子どもの発達の悩み、育てづらさの悩みや、衣食住に係る悩み、子ども同士のトラブルの悩みや、学校でのいじめ、おむつがとれない、ぐずって泣き止まない、ご飯をあまり食べない、このような相談もある。このような相談は、果たして虐待のおそれがある案件ではないと判断してよいものだろうか。客観的には小さなことと思われるような事柄で主観的には大きな不安を抱えて虐待や自殺に向かう例は少なくない。何度もたたかれその外傷が明らかであるとの例は実務上は決して多いとはいえない。
 何をもって虐待案件として全件共有とするのか。虐待に係る(本人又は第三者の)電話や相談を受けてそれを虐待案件として受理する等の協議過程(ケース会議等)が必ず入るのである。リトマス試験紙につけて直ちに虐待という結果が判別できるものではない。虐待ケースと評価したとしてもそこに固定的な意味はない。その後、統計上の位置付けを変更することも少なくない。虐待か否かの線引きが重要なのではなく、当該案件の見立てと対応方針の決定が重要なのである。
 また虐待に至るおそれを広くカバーしておく必要があるのは虐待のおそれを刑事罰発動要件とみるのではなく、児童福祉法1条の基本理念である子どもの権利主体性、すなわち命を守るためであり、守るべき命は、体と心の両面である。直ちに保護者から引き離せばそれで解決するという単純なものではない。①引き離しが必要な場合もあれば、②親を支援することで子どもが救われる場合もある。家庭全体の力学・姿を見立てる必要がある。そして、その見立てによる支援・介入の是非は、一人ひとり異なる子どもの将来(の自己肯定感)に大きな影響を与えるのである。
(イ) 介入根拠法令相違の理解
 通告の共有ではなく、通告の意味内容を関係機関が共有することが大切である。
 この点、通告を適切に行われるようにするために、「虐待」か「しつけ」かその区別基準が明確にされる必要があるといわれることがある。しかし、上述したように児童福祉法及び児童虐待の防止に関する法律(以下「児童虐待防止法」という)の考え方からすれば、虐待の定義を明確にして、虐待者を逮捕し、処罰することが目的ではない。「虐待のおそれ」という概念を広く捉えてカバー対象とするのは、その表出をSOSと捉え、支援・介入の端緒と考えるからである。
 警察と全件共有し、刑事罰発動の要件と兼ねる方向への制度・運用改正は、虐待構成要件をより明確にすることを求めることになるし、虐待の所掌は、児童福祉法及び児童虐待防止法(以下両者併せて「児童福祉法等」という)の射程ではなく、むしろ警察の所掌・射程とすべきということになる。
 しかし、ネグレクト事案でも、性的虐待でも、心理的虐待であっても、その場で展開されていない限り、事前に警察が情報を得て現場に踏み込んだとしても直ちにその場で事実関係が明らかとなるものはむしろ少ないといえよう。子どもに確認しようとしても、保護者を目の前にして子どもが被害(その意味を含めて)を、初めて訪ねてきた信用できるかどうかも分からない大人に、告白できると考えること自体が幻想である。
 子どもの命を守るとは、繰り返しの訪問や信頼関係の構築によって保護者や子どもの真意を引き出していくことである。それをよくなし得るのが、児童福祉法制を修め、児童福祉法等を根拠に支援・介入を行う児童福祉職の職員である。警察の介入とは大きく趣旨を異にする。根拠法規及びバックグラウンドの組織規範が異なる。同じ介入手法(獲得目標)でよいならば、同じ法律・同じ組織でよいはずである。
 個人に刑罰を科す刑事手続法規を根拠とする活動とは根本的に目指す姿が異なるものである。この点、全件共有論からは、刑事警察活動ではなく行政警察活動であることを強調した反論がなされることが予想される。しかし、行政警察活動による社会秩序維持目的を含めて考えたとしても児童福祉法等とは根本的に目的が異なる。
 むろん、上記は、警察との連携を消極に解す論拠ではない。現行法における児童相談所と警察との連携については、児童虐待防止法10条において、児童相談所から警察署長への援助要請等の規定がある。また平成28年4月1日・雇児総発第6号「児童虐待への対応における警察との情報共有等の徹底について」が発出されていること。さらに、児発133号平成2年3月5日付厚生省児童家庭局長通知(平成30年3月30日改正)「児童相談所運営指針」(第8章第14節)でも、警察との関係(191〜194頁)の項目を設け、①警察の位置付け、②児童相談所へ通告される事例、③児童相談所へ送致される事例、④委託一時保護、⑤少年補導、非行防止活動等、⑥虐待事例等における連携、⑦要保護児童対策地域協議会における連携、⑧その他という項目で、詳細な連携の定めを置く。
 こうした通知は、現行法下での運用を具現化したものであり、この法運用を否定し全件共有論を展開するのであれば、これに代わる具体的な法文の提示ととともにその法改正に伴う具体的な法運用案の提示(通知)がなされなければ、現場は混乱するばかりである。
⑵ 虐待対応は警察介入をメインロードとしてよいのか
(ア) 全件共有の有効性のエビデンスは本当にあるのか
 全件共有論は、警察との関係にのみ言及しており、要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」という)全体の情報共有についてのビジョンに言及がない。今回の「目黒区虐待死事件」では(また他の虐待死事案の分析においても)、なぜ、現行の児童福祉法に規定されている法定のネットワークである要対協では足りず、全件共有を導入していたら救われた命であると主張するのか根拠が明らかでなく、事例(注2後藤前掲書)が詳細分析なく列挙されている。
 全件共有を導入した県の事例として、警察官が行くことで保護者がドアを開けてくれた例があるという事案紹介がされているようであるが、それは果たして全件共有の成果なのであろうか。
 今回、香川県警は現に介入しているが、その後も虐待は続いていた。果たして香川県警の2度の介入は評価されるべきなのか。全件共有論者が香川県警の対応を非難せず、品川児相が全件共有しなかったことに焦点を当てて批判している点は疑問である。この点、警察の本務は1回的介入を行いその場で命の確認と保護者に強い注意喚起を行えば成功であり、後は児童相談所の問題であると考えているのかもしれない。しかし、今回の事案において、目黒区転居後に全件共有がなされていたとしても、上記警察の意識・運用の下では、筆者は、虐待死の日時が少し後ろにずれただけである蓋然性が高いと考えている。

(イ) 支援と介入のベストミックス
 ⒜ 介入後のつなぎこそ
  全件共有論は、警察の果たすべき介入の手法・達成目的・効果測定とセットで導入の是非を論じないと、子どもの命が後に危険に曝され続けるというマイナスがあることに目を向けるべきである。
  今回の事件において、目黒に転居した際に、仮に警察が子どもの存在を確認できたとした場合、警察はその後の支援までも考えた対応やつなぎができるのであろうか。具体的には、初動、そしてその後に、どのような機関に、どのようにしてつないでいくことがこの子どもや家庭を守ることになるのか、その部分の見立てと協働こそが命を継続的に守っていく上で重要である。
  児童福祉行政の相談・ケースワークは、1回の介入ではなく、その後こそが勝負である。警察の介入に過度の期待と幻想を持つことは危険である。児童福祉行政がこれまで蓄積した専門性(支援業務の多層・多面性)をあまりに低く見積もりすぎてはいないか。児童福祉のケースワークは、支援を土台としつつ、支援と介入とのベストミックスである。過度に介入に傾いた児童福祉ケースワークは、中長期的には保護者を一層追い込み、その追い込みは子どもの安全安心を奪うことになる。
 ⒝ 介入後のつなぎ
  筆者のこれまでの経験からすれば、警察が任意で確認できなかった場合、会えるまで何度も訪問を繰り返すという運用はなされてきていない。児童相談所なり地域の子ども家庭支援センター(市区町村子ども部署)に対して、その旨を伝えて事案を引き継いでいるのが通常である(そもそも保護しても児童相談所に引き渡すという制度設計であり、警察の介入は基本的に1回的である)。
  とするならば、警察が介入したら子どもを救えたという見解は、警察が介入した場合にたまたま親と子どもがいて、子どもを現認して、親も子どもも警察の疑いを払拭するだけの説明がなされて安心して帰るか(注意喚起して帰るか)、逆に現行犯に足る事実を確認して保護者の逮捕と子どもの保護というようなその場での1回的に何かしらアクションができる場合を想定した議論といえる。
  多くの場合は、警察が介入したとしても、その家庭は日常生活を送っていくことになる(泣き声通報に対し、夫婦喧嘩だといわれ注意喚起して終わる場合も多いというは現職の警察官複数から聞く話である)。
 (C) 萎縮効果
  では、一度警察がきたことによりその家庭はどうなるのか。
  誰が警察に通告したのか疑心暗鬼になり、次からは窓を閉めて声が漏れないようにするという親の声を聞く。自分が警察からマークされたと考えたら、ありがたいと開放的になるだろうか。萎縮効果が働くのが多くの国民心理である。
  現実に、警察が介入したその後に、児童相談所等が家庭を訪ねていくときに事前に警察が介入している場合には、非常に次からの関係性がつくり難いとの話を多く聞く。実際に筆者もその経験をしている。警察に注意されたことにより、二度と警察がこないように子どもを外に出さないようにするというプレッシャーを受ける、一層外部との扉を閉ざす、そういうその後の経過を辿る事例の多さを知らないのであろうか。注意喚起・威嚇だけではかえって子どもの姿が見えづらくなり、潜ってしまったり、隠されてしまったりして、危険に曝されることになる現実が多いのである。
 ⒟ 効果主張論への再反論
  確かに、その1回的な注意喚起や威嚇で、一瞬効果がありそうに思えることもあろう(体罰の効果でも主張される)。その場で保護者が反省したとの弁も聞く。しかし、子どもにとって果たして事態は改善しているのか。その場だけの聞くふりでかえって危険を高めていた事例を複数経験している。
  この点、当該家庭に関しては2度目の通告・通報がなかったということが1回的介入(注意喚起・威嚇)効果を証明しているとの反論があろう。しかし、通告がなかったということは、必ずしも虐待事実がストップしたということではない。子ども側からすれば、保護者への注意喚起が、今度は子どもに向けられ、親がさらなる「支配」を強める場合は稀なことではない(なお、児童相談所も単なる注意喚起を行ってケースを終了させているとの批判があるがその点は児童相談所が本来的役割を果たしていないとの問題であり、全件共有論とは別の問題である)。
  仮に、警察の介入時に子どもに会えた・確認できたという場合でも、そこで扉を閉ざされずに、その後、子どもが児童相談所又は地域の子ども家庭支援センター等と継続的な関係を築けなくては命を守ることにはならないのである。
 ⒠ 介入手法の蓄積
  児童相談所等においては、最初の入り方についての蓄積があるが(現実には不十分な職員もいるが)、110番通報で現場に駆け付けた警察官がどのような支援的な言葉で(又はその後も家庭に関与できる形の言葉遣いで)家庭に入っていくのか、そのトレーニングを受けている例とその効果を十分に知らない。
  警察の介入後も、継続的にその家庭で当該子どもが親と生活をともにし続けるリスクを考えつつ、継続的な関わりを有することは警察の本務ではないし、よくなし得る任務ではない(これは警察批判ではなく、法的な本来的任務・所掌の問題である)。児童福祉部門が蓄積してきた専門性を低く見積もりすぎるべきではない。
  無論、現在の110番通報の場合も、警察が家庭に対してより福祉的・支援的スタンスも学んだ上での介入手法を拡充していくことも考えられよう(警察が福祉行政領域の所掌を拡大すると考えれば、警察の中に虐待対策室を設けるなどはひとつの流れではあるし、福祉警察の創設とでも評価できる流れともいえよう)。しかし、この方向は、全件共有論が主張する「メリットとしての警察(単独での)介入の増加」とはベクトルが異なろう。

2 現行児童福祉法制度活用への言及がない点
⑴ 立入調査・臨検・捜索等の制度─介入の法制度は存在していること
 全件共有論者があまり言及していないが、現行児童虐待防止法には、知事による出頭要求(8条の2)、立入調査(罰則あり)(9条)、再出頭要求(9条の2)、臨検・捜索(9条の3)というように、介入のための制度が定められている。そして、かかる制度は、行政法の分野においては、強制調査の中でも例外的に、最も強制の度合いの高い実力行使を伴う「行政調査」手法と評価されるものである。
 児童福祉の理念を捨てることなく、この枠組みの中での強制介入制度を設けており、この介入は児童相談所が主体的に行う本務中の本務である。警察は援助という位置付けであるこの法制度設計をよりよく運用できるための議論の具体が詰められるべき事柄であり、全件共有論はこの法制度設計では不十分であるとして、新たに、警察主導のハンドリングを目指すものといえ、現在の児童福祉法制度全体との親和性がない。
 筆者は、現在の児童福祉法制度の活用・強化が有効であると考える。現に『子ども虐待対応の手引(平成25年8月改訂版)』(厚生労働省)第4章には、立入調査、出頭要求、臨検・捜索について事例を挙げて詳細な手続の説明がなされている。この手引き記載の知識の共有及びこの知識・手続を組織で蓄積していくことが不足しているだけであり、この点の研修(実技含む)や実践により本務を本務足らしめることができよう(弁護士活用が有効な分野である)。
 なお、平成20年に解錠を可能とする新たな立入制度等を創設、さらに平成28年改正で、立入調査の後に最出頭要求を経ずに裁判所の許可状により臨検・捜索が実施できるようになり、子どもの安全確保強化という意味では制度深化させて現行法制度となっている。
⑵ 現行法制下の警察との連携の実務通知・指針
 現行の児童福祉法制度の下では、児童相談所の介入に関しては、前述のように警察は援助する法制度体系をとっている。
 しかし、このことは、児童相談所と警察の連携が消極ということではない。児童相談所と警察との情報連携については強く推奨しており、現実に、平成28年4月1日・雇児総発第6号「児童虐待への対応における警察との情報共有等の徹底について」「1 警察から児童相談所及び市区町村に対する照会への対応」において発出している。また、「児童相談所運営指針」にも明確に書き込まれている。
 もちろん、書き込まれている情報連携の実際の運用がなされていたのかについての検証は必要である。しかし、児童相談所の情報をすべて警察が共有しておくという曖昧な制度提言をするよりも、通知や指針の徹底が必要なことである。
 筆者は、全件共有では今以上に責任の所在が曖昧となると考える。現状やるべきこととしては、子どもにかかる事案に関して、警察が110番通報を受けて介入するのであれば、案件の緊急性を見極めつつも、児童相談所や市区町村子ども部門等に状況を確認し、現場に行くという個別対応でよいはずである。日常的な児童相談所・市区町村子ども部門等と警察との間の連携及び意思疎通ができていればそれは決して困難なことではない。実際の現場でも行ってきていることであり、そのことは通知と指針の運用の徹底ということである。
⑶ 現行刑事法制度(警察官職務執行法・警察法含む)
 行政・警察が個人の家に入っていくためには根拠法が必要である。そして、現行の児童福祉法等における警察の位置付けは、援助(児童虐待防止法10条)というものである。
 この点、全件共有論は、こうした現行の児童福祉法制度の縛りの中での警察の立ち位置の不都合性を主張するのものといえる。その意味で全件共有論は、児童相談所情報を持っているだけでは意味がなくその情報を積極的に使って介入をすることが論理的帰結となるはずである。そして、今回の目黒虐待死事件においても、警察は児童相談所と全件共有していれば虐待が疑われる家庭に立入り、子どもの安全を確認できたと主張しているがその根拠法令については言及していない。
 例えば、「近隣で子どもの泣き声がする。虐待でないか」と110番通報がなされ、警察が対象者宅に赴く場合、現行法では、次の刑事訴訟法の規定及び警職法、警察法の規定(を解釈して)しか家庭に立ち入っていく場合に根拠とし得る規定はないはずである。
 そこで、現行児童福祉法制の援助的な立場とは異なり、児童相談所とは別に警察が独自に介入する場合、又は児童相談所との主従のハンドリングを逆転させて警察が主体的に介入することができるのか、以下現行法制度を検討してみる。
(ア) 警察官が強制的に立入る法的根拠がないことについて
 ⒜ 憲法・刑事訴訟法上の逮捕や捜索等の強制処分(9)
  現行憲法(33条・35条)・刑事訴訟法で、根拠となるのは、保護者の身体拘束を行うのであれば、刑事訴訟法199条の通常逮捕(罪を疑うに足りる相当理由・必要性+令状)、同210条緊急逮捕(重大事案・充分理由・令状暇なし)、同212条の現行犯(準現行犯)逮捕の要件(現に罪を行い・行い終わった)を満たさねばならない。
  また、捜索・差押えを行うのであれば、同218条令状による捜索・差押(正当理由と必要性)、同220条の逮捕に伴う捜索・差押えの要件を満たさねばならない
  暴行・傷害等の犯罪事実を捜査し(証拠収集をし)、令状を取得した上での立入りが原則となる。
  「目黒区虐待死事件」において、警察官が事前に当該保護者の過去の虐待情報を得ていたとしても、それのみで、目の前で暴行、傷害等の虐待事実を発見しない状況下では、強制的に子どもの安全確認はできなかったものと考える。
 ⒝ 行政警察活動としての警職法等
 (α) 警職法
  警職法にも立入権の規定(同6条)がある。しかし、避難等の措置(同4条)・犯罪の予防及び制止(同5条)に係る危険な事態の発生と生命身体等への危害の切迫性を要件とし、かつ、やむを得ないと認めるときに、合理的必要な限度の下での立入りを認めているにすぎない。
  なお、警職法2条は、職務質問規定を定め、この実効性を図るのに必要な限度での所持品検査を認めているが、居住空間に強制的に立入って行使することを想定した規定ではない。個々人の居住空間すなわちプライバシーの権利保障(憲法13条)は確保されねばならない。ちなみに、消防法4条1項ただし書は、「…ただし、個人の住居は関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立入らせてはならない」との規定を設けており、比較する上で参考になろう。
 (β) 警察法
  また、警察法2条の規定がある。しかし、同条は組織法としての警察の責務規定である。この規定をもって、強制的に家庭に入る根拠と解釈することはできない。
 (γ) 巡回連絡
  さらに、警察官が巡回連絡として意見や要望を伺い、身近で発生する犯罪の予防や事故防止に役立つ情報を知らせる活動を行っているが、この巡回活動も強制的に立ち入る権限とし得るものではない。
 ⒞ まとめ
  全件共有論は、警察が110番通報を受けた場合に児童相談所の情報を受けてさえいれば子どもの身体を確認できて命を救えるという主張をするが、こうして検討してみると、それは任意で行う行政警察活動を事実上強制的に行使しうるという主張であり(注⑵160頁には、現実に警察であれば市民は多くの場合従う、との記述)、法的理論たり得ない。保護者が拒否した場合でも警察が主体的かつ強制的に、子どもの身体・生命等を確認するためには、令状請求を行うなど強制処分を定める刑事訴訟法上の手続を原則どおり踏んでいく必要があろう。
  保護者が拒否した場合でも、警察が主体的かつ強制的に、子どもの身体・生命等を確認するためには強制処分を定める刑事訴訟法の規定要件を満たしている(その事実がある)と主張せざるを得ない。
  子どもの命を守るために警察が果たす役割は重要である。しかし、そのための法制度を十分確認しておく必要がある。現行刑事法令等の改正や法解釈論を展開せずに、現行法で介入出来るかのような主張は国民を誤導するものである。制服を見せて過度に威嚇して萎縮させて相手が従うであろうことに期待するという提言は、警察権行使と個人のプライバシー保障に関し、これまで積み上げられてきた学問的哲学・土台、判例を無視した議論であり、法的問題が大きい

(イ) 全件共有論下における警察介入の優先順位付け
 ⒜ 共有による責任の曖昧さの危険
  全件共有論は、年々児童虐待対応件数が増大している現状に対し、児童相談所の負担を軽減するとして、独自介入の効果をも主張している。しかし、そうだとすると、果たして警察は全件共有下の介入の順番・優先順位をどのようにつけるのであろうか。共有した全件の家庭のすべてに直ちに介入することは現実的には不可能である。
  しかし、全件共有のメリットは、単独でも警察が情報を得て出動機会を増やすことで子どもの命を救えるという理屈なのだから、虐待のおそれがあるとの家庭情報を得ていながら、情報をただ収集・管理しているだけで、直ちに介入しないで放置しておくという運用はできないだろう。警察が情報を得た以上、行政警察権の行使、刑事司法警察活動の開始は不可欠ということになる。仮に有している情報で優先順位が低いと警察が見立てたにもかかわらず、虐待死事件が起きた場合には、当然警察の不作為責任が法的に問われる、そのような法制度設計の提言でなければ意義を見いだすことは困難である。
  筆者が解釈するように、全件共有論の方向性が警察の法的責任をより重くするという主張でなく情報をお互いの組織がただ持ち合うという共有状態を主張しているにすぎないのであるとするならば、責任の曖昧さを生み出すだけのマイナスしかないと考える。情報共有論は、その先の役割分担・責任の所在論とセットでなければならない。全件共有論は、もらった情報に基づき警察が直ちに「動く」ことを前提としているはずであり、その対応手法についての具体的な詰めがない限り(協定を締結する等のレベルでは済まない)、虐待相談件数が多い地域においては、目に見えないSOSを埋もれさせる危険がある。
 ⒝ 警察との部分最適の危険
  そうでなければ、全件共有論は、警察が情報を得れば、その情報を精査して児童相談所に案件の確認や指示等ができると期待するのかもしれない。また、全件共有をした後に、お互いの組織で全件の見立て合わせを行うことになると期待しているのかもしれない。
  しかし、児童相談所は警察とだけ情報連絡をし合っているわけではない。市区町村との日常的な情報交換、連携、一時保護判断の調整等を頻繁に行っている。その他の関係機関と様々な情報交換、連携・役割分担をし合っている。
  現状でも限界に近い仕事をこなしているといわれている児童相談所に、全件についての虐待情報の見立てを警察に説明する時間と労力があるのであろうか、それはまた必要なことなのであろうか。調整コストは莫大であり、児童相談・ケースワークが崩壊する危険が高い。警察との情報交換の優先順位を常に上げた仕事が、必ずしも子どもと家庭の安全・安心を守る児童福祉行政となるとは限らない。全体かつ総合的視点が必要である。
  筆者は、虐待事案(判断も難しい)を見立てて、然るべき事案を警察に渡す(渡したものについてはきちんと見立てと役割分担を徹底する)という児童福祉の専門官としての主体的ハンドリングを維持すべきと考える。この作業は簡単ではない(後述するようにひとりでやるべきことではなく、医療者や弁護士をチーム内において協議して進めていくべきものである)。確かに、現状の児童福祉司は十分なし得ていないのではないかとの批判を否定することはできない。
  しかし、だからといって、警察が主体的な介入判断(介入の専門的手法含む)をすべきことを制度付けるべきなのだろうか、警察に委ねることがよくなし得ることなのかという点を、もう一度児童福祉法等の理念に立ち戻り、かつ、現実を見て議論・判断する必要がある。現状での全件共有の弊害は数多いのに対し、メリットは見いだせない。
(ウ) まとめ
 今回の虐待死事件における死亡した子どもの手紙が公開されたことにより、警察が踏み込むことを期待する議論がなされる。しかし、前述したように、現行の刑事訴訟法や警職法等の改正を行わないのであれば、全件共有をしても警察が介入できる場面は広がらないことについて冷静な法的議論がなされるべきである。現行法制度の下で警察が強制介入できる要件は厳格である。これまで積み上げられてきた限界基準を軽視すべきではない。

⑷ 行政手続一般及び他の行政手続との比較の視点
(ア) 犯罪捜査目的との峻別
 全件共有論は、児童相談所の情報・資料を警察が活用することを当然のように考えている節がある(注2後藤前掲書)。
 児童相談所が収集した情報を警察が得ておきながら、当該保護者に対する刑事処罰するための刑事司法警察活動資料として使用しないということが果たしてあるのだろうかということである。この点、当然保護者の暴行・傷害等については立件していくということであれば、児童相談所が児童福祉法等の理念の下に収集した情報・資料を保護者処罰という刑事罰目的のために自由に利用するということになる。
 この考え方は、これまで、行政法における行政調査の法体系においてとられてきた基本的考え方とは異なるものである。すなわち、行政法理論の下では、行政調査は特定の行政目的の下で認められるものであり、行政調査権限を他の目的、とりわけ犯罪捜査のために利用して行政機関が情報収集を行うことが脱法行為として許されないことは当然であると考えてきたのである。参考として、銀行法25条(立入検査)の条文を挙げると、「(立入検査の権限)は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」となっている。
 全件共有論は、児童相談所を警察の手足としてしまう法制度設計につながっている。この点について、全件共有論者は、行政調査手続と刑事手続との関係について十分な法的説明をする必要があろう。
(イ) 告発規定の不設置
 前述したように児童虐待防止法においては、立入調査、臨検・捜索等の規定を設けているが、各種行政法規(出入国管理及び難民認定法、国税犯則取締法等)の調査には同じように調査・資料提供規定を設けるとともに令状手続を定めているものある。詳細な比較論稿は別稿とするが、本論稿では、注で表を掲げるとともに、児童虐待防止法の特徴として告発規定がないことを挙げておきたい。その趣旨に関しては詳述しないが、子どもを守る児童福祉法制度の特別の意味を見いだすことができよう

3 児童福祉(相談・ケースワーク支援等)の専門性─要対協による関係機関ベストミックス・支援拠点の設置に言及がない点
 児童福祉の専門性とは、児童相談所と警察による監視と注意喚起ではない。要対協機関をフル活用して多層的継続的支援介入をし続けるものである。警察との関係だけでなく、要対協全体の情報共有のビジョンを示すことが先決である。部分最適はあり得ない。 
⑴ 要対協との関係について
 全件共有論は、警察との情報共有を強調するが、果たして、現行法上に規定された要対協という法定の枠組みについてはどのような理解をしているのか。要対協すべての関係機関間での情報全件共有を志向するのか。そうでないなら、要対協全体の全件情報共有は否定しつつ、児相と警察の全件共有のみを先行させる主張根拠はどこにあるのであろうか。
 警察の動き方次第で、特にその動きの意図や関わり方を関係機関にきめ細かに伝え続けることをしないと、他の関係機関のケースワークや関わりに多大な影響を及ぼす。
 児童福祉法25条の2は、DV防止法にもない、ストーカー規制法にもない、要保護児童対策地域協議会という法定の情報共有・役割分担のネットワークを定めている。
 虐待対応においては、このネットワークを通じて市区町村(子ども部門、保健部門、教育部門、福祉部門、その他)、保健所、児童相談所、警察、民生委員、地域NPO、里親、施設、弁護士、医師会・歯科医師会、病院等が相互に情報共有を行い、役割分担をして、子どもの命を守るために実際に動いている。そして、その法制度設計は、既存のものでもなく、固定のものでもなく、自治体(協議会)がその構成(メンバー)を定めることができるのである(児童福祉法25条の4)。
 この法制度があるからこそ、機関相互の情報のやり取りが守秘義務違反とされずに行われている。現実に日々子どもの生命身体の安全を確保し続けているのである。助かった命については言及がなされないから多くの人が知らないだけであることは強調しておきたい。
 確かに、この要対協間における情報共有が関係機関で十分なされていないのではないかとの批判はあろう。それについては、平成28年の児童福祉法改正がひとつの答えとなろう。要対協の調整機関に専門職を配置するという形で、要対協間の役割分担と、迅速な関係機関間での情報のやり取りを行うことと、役割分担をして動かすことができる司令塔の配置が求められている。この司令塔のハンドリングについての議論をすべきである。
 すなわち、子どもの権利主体性をきめ細かに保障しようとする児童福祉全体の法制度設計と運用を語ることなく、一部分のみの制度変更、特に警察と児童相談所のみの情報共有は、多くの関与者を蚊帳の外に置くことで、全体の情報共有と役割分担を崩壊させてしまう蓋然性が極めて高い。つまり、要対協の法制度に言及がなく、児童相談所が情報を抱え込んでいるとか、情報共有がなされていないという批判を展開することは、法制度を知らないということがないとの前提であれば、意図的に言及をしないことで児童福祉行政全体への有効な提言となり得ないのである。
⑵ 市区町村子ども家庭総合支援拠点との関係について
 前述したように、児童福祉行政を担っているのは、児童相談所のみではなく市区町村が重要な役割を果たしている。平成28年児童福祉法改正により市区町村に支援拠点を設けることが規定され、児童相談所のみならず、市区町村が虐待対応の司令塔となる旨が定められている。この制度設計の中に警察と児童相談所との関係性をどう位置付けるかが議論されるべきなのである。
 この法改正に触れずに、児相と警察の二者間に歪曲した全件共有の議論展開は、各関係機関全体の情報共有と役割分担(個別のケースワーク)に悪影響を及ぼす危険がある(地域包括支援センターと支援拠点の一体化の関係、市区町村と児童相談所との情報共有の問題など要対協全体の情報共有の在り方と随時の役割分担の議論が必要である)。
無題


 

4 まとめ(結論)
 以上から、全体の現行法制全体のバランスのとれた(法制度上の根拠と権限に裏付けられた)役割分担と橋渡しの具体的議論の詰めがなされるべきである。
 具体的運用論とセットでの提言が必要である。筆者としては、児童福祉法制度と刑事法制度との総合的視野に立った裏付けがなく、かつ、具体的有効性の検証がなされていない、責任の所在が曖昧となる全件共有論に反対である。

第2 虐待死防止のための提言
(4つの提言)

 以下、筆者として再発防止のための主な提言を4つ挙げる。

1 相談対応件数の上限の設置(ケースワーカーの強制設置とメンタルヘルスケア)
 児童福祉司が丁寧なケースワークを行うためには、それができる上限件数を定める必要がある(ケースワークの知見をきちんと引き継いでいける件数ともいえる)。100件以上のケース対応は不可能を強いている。例えば複数担当制を前提とした上で30件以上のケース割当となる場合は、強制的にケースワーカー配置を追加することを義務付けることを法定化すべきである。加えて、通常より短期かつ定期的なメンタルヘルスケア検診についても義務付けて職員の健康を守っていくことも大切である。
 人の生死という生身に関わり、継続的に相談を担当し、他機関と調整をするという仕事の重みを直視すべきである。

2 要対協調整機関専門職配置の迅速化と権限付与・義務化
 専門的知見を有する児童福祉担当が司令塔となり、どの機関を動かし、どのようなアプローチで支援・介入を行っていくのか、要対協関係機関間の全体コーディネートを常に迅速に行い、連携・役割分担(バトン)を指示する司令塔が必要であり、その司令塔の権限を拡充すべきである。
 具体的には、児童福祉法25条の3の規定は、「(要対協が)…情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるときは、関係機関等に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる」と定めている。
 しかし、この規定が「できる」規定となっているので、情報提供を求められた関係機関も、情報提供をしてよいのかどうか逡巡することになる。特に個人情報を有している団体等は躊躇するのである。この規定を改正し、「しなければならない」と義務規定とし、それと併せて、調査を受けた機関についても回答義務を課す規定を設ける。さらに調査対象となる関係機関の拡大も必要である。こうすることで全体の見取図が詳細となり介入の迅速化につながる。

3 市区町村子ども家庭総合支援拠点の迅速設置と補助拡大─市区町村中心主義へ
 平成28年改正の目玉のひとつとして支援拠点設置がある。児童相談所が支援も介入も行うことは現実には難しい。地域の資源を知り、面でつないでいる市区町村が地域資源をつなぎ、切れ目ない支援を継続的に担っていくことで、児童相談所は児童福祉的視点を有しつつも難しい介入事案について労力を注ぐことができよう(注意喚起で終わることがないようになろう。一層、高度医療的役割が求められる)。このように、市区町村と児童相談所の役割分担と連携の制度設計の修正が必要である。地域に専門職を備えた拠点を増やすことが急務である。
 筆者が全国調査した限り(平成30年2月1日時点)では、全国の市区町村1,741自治体(政令市含む)のうち、93自治体しか支援拠点(機能設置)設置ができていないという状況である。設置が進まない理由として、財政的支援等の問題が挙げられている。国や都道府県による財政その他支援の加速化が望まれる。
 現行法制度下においては、児童相談所と市区町村子ども家庭総合支援拠点(子育て世代包括支援センターとの一体化)が児童福祉の中核となる枠組みである(その枠組みを超えるものについて警察に迅速にバトンを渡す場合がどのような場合か、その基準を明確にすることが求められるが、画一的基準・細分化が必ずしもうまくいくとは限らない。前述したように児童福祉法制は臨検・捜索までの規定を設けている)。
 ケースによって主担当となる機関を変えていくこともケースワークとして必要なことである(学校や保育園、里親、施設、地域のNPO、子ども家庭支援センター、保健サービスセンター、児童相談所等)。当たり前のことであるが、地域で生活していく子どもと家庭に関わる以上、総合的かつ継続的な関わりが、生身の揺れ動く人間を対象とする児童福祉行政においては求められるのである。

4 現行法制度を使いこなすケースワーカーの能力向上と専門アドバイザーがいる日常  子どもと家庭に関わるには、専門的知見や人生に関する深い洞察(経験)が不可欠となる。①新卒配置は原則行わないこと、②いくつかの部署経験や一定の研修期間を修了した後に、子ども対応及びケースワークの専門能力認定を受けた後に配置すること(司法修習制度等を参考)、③上記のようにケースワーカーには、児童福祉法令の知識、保育・保健・医療・心理等様々な知見が求められるが、ひとりのケースワーカーにすべての知見等を求めることは理想論でしかない。常にサポートできる法律専門家としての弁護士、臨床心理士、精神科医、小児科医といったスーパーバイザーと受理会議や、同行もすることを繰り返すことで着実に実力を高めていくことができる(逆にそれがないと高まらない)。常時見立てをぶつけ合い、見立てを学び合える環境(チーム)によって、個人の能力もチームの能力も向上し、それが蓄積させていく体制をつくっていくことは急務である。

おわりに
 今回の目黒区虐待死事件については、これから真相が明らかになっていくであろう。本論稿で十分言及できなかった点としては、①児相間の移管引継ぎ及び地域資源への適切なつなぎの重要性の視点である。現行児童福祉制度全体のグランドデザイン提示とその実行こそが鍵になると考える。また②死亡児童には兄弟がいる。その兄弟への眼差しの重要性である。法制度設計・運用において落としてはならない視点である。こうした点についてまた他日を期したい。
 さて、本論稿では、警察と児童相談所との全件共有論が魔法の解決策であるかのように語られる状況に対して、法的・実務的観点の両面からそこに論点をフォーカスした。
 虐待通告はSOSの発信であり、関わりの出発点である。親への1回的注意喚起で子どもは救えない。要対協をフル活用する。地域資源はいろいろある。直ちに、地域の子育てひろばその他地域の居場所(こども食堂等)を案内する。健診案内等の保健指導を行う。保育所入所のお誘い等を繰り返し届ける。こうした支援や支え手がたくさんあることを伝えて、保護者の肩の荷を下ろす。
 こうした提言に対し、従わない保護者には力で介入しなければ子どもの命は守れないとの声が大きい。しかし、力に対し力で対抗することで果たして子どもの命を本当の意味で守れるのだろうか(16)。命とは体と心との統合体である。子どもの真の意味の継続的安全と安心をどの場所でどのように支えていくのか。力ずくでその場所から救ったと思ったことが、介入した人間の自己満足であったということが後に分かる場合もある。命のプラスマイナスは当該子どもごとに千差万別であり、将来にまったく異なった相貌を表す。「子どもの心を破壊しない介入」の多面的・多層的な制度設計をしなければならない。
 今、関係機関をつなぐ要対協の司令塔の力量が問われ、子どもに関わるすべての関係機関の力と本気度が問われている。子どもと家庭に本気度が伝わるかという全人間力及び全組織力(チーム力)が問われている(この分野に関わり続けている人間として自分に向け続けたベクトルとしてそう思う)。
 上記の保健・医療相談、保育提供、生活保護等の経済的支援、教育的支援、法的支援等を組み合せた支援及び介入の手法を重畳的に継続し続けることでしか、子どもの命は救えないと考える。決して1回的注意喚起では効果はない。
 月並みな改善策に思えるだろうか。それを続けられるチームをつくり・継続維持していくための法整備・財政的整備を行っていくことこそが再発防止の有効策なのである。

(「政策法務Facilitator」59号(2018年7月号)に一部加筆)


⑴ 2018年6月6日付朝日新聞デジタル「死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」によれば、船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)が3月に死亡した事件で、警視庁は6日、すでに傷害罪で起訴されている父親の無職船戸雄大容疑者(33)を、保護責任者遺棄致死の疑いで再逮捕し、母親の優里容疑者(25)も同容疑で新たに逮捕した。2人は1月下旬ごろから結愛ちゃんに十分な食事を与えずに放置。3月2日に低栄養状態などで起きた肺炎による敗血症で死亡させた疑いがある。雄大容疑者は2月末ごろに結愛ちゃんを殴ってけがをさせたとして傷害容疑で逮捕、起訴されていた。また、結愛ちゃんは香川県で2016年と17年に計2回、県の児童相談所で一時保護された。後に、病院から児童相談所に通報があったが3度目の一時保護はされなかった。18年1月に目黒区に転居。県の児相から引き継ぎを受けた品川児相が2月9日に家庭訪問していたが、優里容疑者とは会えたものの、結愛ちゃんには会えなかった。雄大容疑者については、結愛ちゃんに暴行を加えてけがをさせたとして香川県警が昨年2月と5月に傷害容疑で書類送検していたが、いずれも不起訴になっている」。
  2018年6月27日付毎日新聞「SOS届かず「パパいらん」「パパがたたいた」訴えたが きょう起訴判断」
⑵ 後藤啓二『子ども虐待死ゼロを目指す法改正の実現に向けて』エピック、2016年。
⑶ 筆者の大学時専攻は刑事訴訟法(渥美東洋)専門ゼミ。また現在中央大学法科大学院「社会安全政策と法」(堤和道・河井潔両教員とのオムニバス(児童虐待・DV・ストーカー対応等担当)授業担当。
⑷ 鈴木秀洋「災害時要援護者に対する危機管理─災害時お腹の中の赤ちゃんを守るプロジェクト」自治研究第88巻第11号、2012年、104−126頁。当時全国初との評価。
⑸ http://www.city.bunkyo.lg.jp/kyoiku/kosodate/jidogyakutaiboshi/osekkai.html
⑹ 隣の家でものすごい音がしたとして電話があり、現場に行ってみるとトレーニングをしていたということや、赤ちゃんの夜泣きだったり、近隣紛争だったりということもある。
⑺ 福祉行政報告例によれば、知事による出頭要求(平成27年度32件→同28年度51件)、立入調査(平成27年度85件→同28年度119件)、再出頭要求(平成27年度4件→同28年度8件)、臨検・捜索(平成27年度1件→同28年度1件)。
⑻ 櫻井敬子=橋本博之『行政法 第5版』弘文堂、2017年、160頁。
⑼  
憲法
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

○刑事訴訟法
第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
2 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
3 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
第二百条 逮捕状には、被疑者の氏名及び住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき官公署その他の場所、有効期間及びその期間経過後は逮捕をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
2 第六十四条第二項及び第三項の規定は、逮捕状についてこれを準用する。
第二百一条 逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。
2 第七十三条第三項の規定は、逮捕状により被疑者を逮捕する場合にこれを準用する。
第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
2 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
3 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。
4 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
5 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
6 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。
第二百十九条 前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
2 前条第二項の場合には、同条の令状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。
3 第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。
第二百二十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。
一 人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
二 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。
2 前項後段の場合において逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付しなければならない。第百二十三条第三項の規定は、この場合についてこれを準用する。
3 第一項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
4 第一項第二号及び前項の規定は、検察事務官又は司法警察職員が勾引状又は勾留状を執行する場合にこれを準用する。被疑者に対して発せられた勾引状又は勾留状を執行する場合には、第一項第一号の規定をも準用する。

○警察官職務執行法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、警察官が警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。
2 この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。
(質問)
第二条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。
3 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
4 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。
(保護)
第三条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、とりあえず警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
 一 精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞のある者
 二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)
2 前項の措置をとつた場合においては、警察官は、できるだけすみやかに、その者の家族、知人その他の関係者にこれを通知し、その者の引取方について必要な手配をしなければならない。責任ある家族、知人等が見つからないときは、すみやかにその事件を適当な公衆保健若しくは公共福祉のための機関又はこの種の者の処置について法令により責任を負う他の公の機関に、その事件を引き継がなかればならない。
3 第一項の規定による警察の保護は、二十四時間をこえてはならない。但し、引き続き保護することを承認する簡易裁判所(当該保護をした警察官の属する警察署所在地を管轄する簡易裁判所をいう。以下同じ。)の裁判官の許可状のある場合は、この限りでない。
4 前項但書の許可状は、警察官の請求に基き、裁判官において已むを得ない事情があると認めた場合に限り、これを発するものとし、その延長に係る期間は、通じて五日をこえてはならない。この許可状には已むを得ないと認められる事情を明記しなければならない。
5 警察官は、第一項の規定により警察で保護をした者の氏名、住所、保護の理由、保護及び引渡の時日並びに引渡先を毎週簡易裁判所に通知しなければならない。
(避難等の措置)
第四条 警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危険防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。
2 前項の規定により警察官がとつた処置については、順序を経て所属の公安委員会にこれを報告しなければならない。この場合において、公安委員会は他の公の機関に対し、その後の処置について必要と認める協力を求めるため適当な措置をとらなければならない。
(犯罪の予防及び制止)
第五条 警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。
(立入)
第六条 警察官は、前二条に規定する危険な事態が発生し、人の生命、身体又は財産に対し危害が切迫した場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、已むを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において他人の土地、建物又は船車の中に立ち入ることができる。
2 興行場、旅館、料理屋、駅その他多数の客の来集する場所の管理者又はこれに準ずる者は、その公開時間中において、警察官が犯罪の予防又は人の生命、身体若しくは財産に対する危害予防のため、その場所に立ち入ることを要求した場合においては、正当の理由なくして、これを拒むことができない。
3 警察官は、前二項の規定による立入に際しては、みだりに関係者の正当な業務を妨害してはならない。
4 警察官は、第一項又は第二項の規定による立入に際して、その場所の管理者又はこれに準ずる者から要求された場合には、その理由を告げ、且つ、その身分を示す証票を呈示しなければならない。
(武器の使用)
第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危
 害を与えてはならない。
 一 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。
 二 逮捕状により逮捕する際又は勾引状若しくは勾留状を執行する際その本人がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。
(他の法令による職権職務)
第八条 警察官は、この法律の規定によるの外、刑事訴訟その他に関する法令及び警察の規則による職権職務を遂行すべきものとする。

○警察法1条・2条
(この法律の目的)
第一条 この法律は、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障し、且つ、能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めることを目的とする。
(警察の責務)
第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。
⑽ 渥美東洋『刑事訴訟法 新版』有斐閣、1990年、94頁は、立法的解決が望ましいとしつつ、令状入手の時間的余裕がない場合の緊急捜索・押収を刑事訴訟法220条1項2号を準用して肯定することは憲法に反するものではないとする。
⑾ http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/shokai/katsudo/koban/junkairenraku.html
⑿ 前掲注⑻櫻井=橋本163頁。最決平成16年1月20日刑集58巻1号26頁参照。
⒀ 表:行政手続に基づく令状のまとめ
20180810_1_1

⒁ 鈴木秀洋「児童福祉行政における危機管理─子どもの命を紡ぐ」危機管理学研究(日本大学危機管理学研究所)、2017年、創刊号、128〜142頁。
⒂ 「平成29年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 市区町村子ども家庭総合支援拠点の設置促進に向けた支援手法に関する調査研究報告書」(平成30年3月)研究代表 鈴木秀洋。http://www.nihon-u.ac.jp/risk_management/pdf/rm_180424_2.pdf
(16) 2018年6月21日付日経DUAL 鈴木秀洋インタビュー記事「目黒虐待死 再発防止のため、私たち親にできること」
 http://dual.nikkei.co.jp/atcl/column/17/101200003/061800120/
  2018年7月10日付都政新報「虐待死を防ぐのは警察介入か〜再発防止提言〜」。

鈴木秀洋(日本大学危機管理学部准教授)

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鈴木秀洋(日本大学危機管理学部准教授)

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