3 まとめ
日々の暮らしをしながら、上記17回もの口頭弁論期日を積み重ね、主張・立証活動、準備を重ねて、遺族として生きてきたことの心労はいかばかりであろうか。被告側の準備書面等を読み、度々出てくる事実と異なる記載や剣太への攻撃的記述を何度も読まされ、反論するために証拠を集め提出しなければならない苦しみ、そして、進行協議や証人尋問等(3)で、裁判で直接被告側と顔を合わせることが、「毎回どれだけ心をかきむしられる思いを重ねてきたか」、「心折れる経験を乗り越えてきたか」との奈美さんの言葉が私の頭と心から離れない。
心の情景のほんの一部ではあるが、私たちは、こうした客観的な時系列と証拠をたどることで、理解の端緒とすることは、せめてできるのかもしれない。
(1) 特に剣道部員や関係者の氏名については省略し、また本事案では、医学的知見の水準を検証することを主たる目的とはしていないため、その点の文献記載の内容面の詳細を一部省略している。
(2) 元立ちとは、剣道の稽古のときに相手の技を引き出し、打ち込みなどを受ける側のこと。
(3) 詳細を次回掘り下げる。こうした立証活動を記録した裁判記録を廃棄することが、どれだけ原告に再び立ち直れないほどの痛みを与え、かつ、社会に多大な損失を与えることになるのか、罰則規定及び復元義務を課す制度設計が求められよう。