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2017.01.25 政策研究

被災地に公立初の“森の学校”を

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森の学校のためのソフト面のハードル

 このように校舎などのハード面では、多くの方々の協力の中、理想の実現に向かって進みました。もう1つの大きな壁は、いわゆるソフト、運用面でのハードルです。これが一番難しく、時間を要するハードルとなります。
 2012年、教育委員会が主催する地域の校長先生や地区会長などで構成される「学校建設検討委員会」に、私もオブザーバーとして参加させていただきました。その際に伺った森の学校への印象は、「森の維持管理、草刈りなどは誰がするのか」、「森でケガでもしたら誰が責任をとるのか」、「学級崩壊が起こりそうなとき、教職員全員が飛んでいく体制をとっているのに、森の学校でそれができるのか」、「クラス担任に森を使った授業をする余裕がない」……。責任問題ばかりが先生たちにのしかかっている教育現場では、残念ながら森の学校どころではない現実がありました。ここ数年、提出書類の増加など、先生方の負担は増えるばかりです。生徒のことを一番に思い、よい授業をしたいと思っていても、森を使って授業をするような余裕はなく、しかも、私立の学校と違い、教員の採用は宮城県が行うため、森の学校を希望された先生ばかりが赴任してくるわけではないのです。
 森の維持管理は、東松島市と協定を結んだアファンの森財団が行い、責任についても当財団がとると宣言しました。誰かが、腹をくくらなければ始まりません。
 森を活用した授業も、先生方と相談しながら専門知識を持った当財団スタッフが出前授業を提供しています。仮設の校舎から「復興の森」までバスで移動し、3年生の総合的な学習の時間は、「ふるさとの宝物探し」として生き物調べを、5年生にはツリーハウス前の田んぼの田植えから稲刈りまで地元の農業法人の方と一緒に行っています。田んぼや畑や山や海など地域の自然を全部使ってこそ、森の学校です。また、週末は課外授業として、いかなる災害が起きても命を守れるアウトドアスキルを身につけられるよう、森や海でのプログラムを提供しています。
 森の学校の目的は、先生方に負担をかけることではありません。先生自身がリラックスでき、子どもたちと向き合うことができる学校でなければならないのです。

写真4 森を活用した出前授業の一環である田んぼの生き物調べ写真4 森を活用した出前授業の一環である田んぼの生き物調べ

この記事の著者

一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団

森を守る。子どもたちの笑顔と日本の未来のために――作家C.W.ニコルが、1986年より日本の森の荒廃を憂い、長野県黒姫にある放置された里山を自ら買い取り、生命力豊かな本来の日本の森をよみがえらせることを目的に森づくりを始めました。2002年、森を永遠に残すためにC.W.ニコル・アファンの森財団を設立。手入れを始めて30年目の森には、地域的に絶滅が危惧される動植物が戻り、森の生態系が戻りつつあります。また、生命力あふれる豊かな森は人の心も豊かにすることを信じ、身体に障害のある子どもたちや心に傷を負った児童養護施設の子どもたち、被災地の子どもたちを森に招く「5センスプロジェクト」を実践。これがきっかけとなり、津波による被害を受けた小学校の再建に当たり、公立初の“森の学校”にすべく、東松島の森の再生と子どもたちの心のケアの活動を続けています。森林保全活動を通じて、地域の自然共生型社会形成に寄与することを目的に活動を展開しています。

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