地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2023.04.10 議員活動

第12回 「給食無償化」から教育の担い手を考える

LINEで送る

給食無償化を取りやめることは可能か

滝口〔弁〕 一度無償化した後に、再度、保護者負担に戻すことは難しいと思いますが、法的な観点からはいかがでしょうか。
千葉〔弁〕 今回の給食無償化のような給付行政をいったん実施した後にやめることは、侵害的な処分になると思います。ですので、このような処分を争うとなると、行政にとっては不利な部分もあるかと思います。
滝口〔弁〕 政治の観点からはどう思われましたか。
加藤〔議〕 感覚的には、一度無償化を行ったらやめられないのであれば、始めるに当たっては、ランニングコストの問題を考えつつ、慎重に考えなければいけないとは思います。

さらに踏み込んで給食無償化を考える

滝口〔弁〕 この給食無償化の議論は、予算面の制約だけではなく、少子化対策や貧困対策といった大局的な観点からも論じられるべきかと思うのですが、その点はいかがですか。
加藤〔議〕 子育てをする上では、教育費は気になるところだと思います。高校や大学に入る際の費用のことを考えると、やはり子どもをたくさん産むということを躊躇(ちゅうちょ)してしまう。給食無償化のような規模にとどまらず、奨学金のような形で補助できれば、少子化対策としてのインパクトは大きいと思います。
石田〔議〕 給食費については近年、未払、特に払えない家庭があるというのが問題となっています。また、現在の日本の大きな課題として少子化が挙げられます。そのような社会の課題の解決方法の一つとして、学校給食費の無償化が挙げられると思います。本来的には国がやるべき問題であるとも思いますが、地方自治体からこういったムーブメントを起こすことで、国を動かすということも考えられます。
滝口〔弁〕 これまで給食というのは、どちらかというと栄養の摂取といった子どもの心身の発達や保健衛生的な観点で論じられていて、教育の一環であるというのは比較的新しく出てきた切り口だと思います。ですので、そういった給食の趣旨から、これに対して費用を出すという視点はあり得るのではないでしょうか。
石田〔議〕 給食を通して食育を行うという視点は、ひいては自給率を上げていくということや食材の国産化といった話ともつなげられると思います。そのために国産の食材を使うことは負担が大きいので、行政がその費用を負担することで、給食を通して新たな教育をすることができると思います。もちろん、給食の無償化だけで少子化の問題が解決するわけではないですが、きっかけの一つにはなるのではないでしょうか。
本目〔議〕 これまでの議論を聞くと、やはり最終的にはトップが腹をくくって決断できるかどうかの問題ではあると思います。また、やはりこれは法律にも書かれていることですので、国が動くべき話ではあると思います。

むすびに

滝口〔弁〕 給食無償化は単に予算の問題だけではなく、国と地方自治体との関係、保護者と行政とのバランス、少子化対策など様々な局面に関わることが分かりました。議員と弁護士との相互理解がさらに深まることを祈念し、今回の勉強会を終わりにしたいと思います。

渡邉健太郎(弁護士)

この記事の著者

渡邉健太郎(弁護士)

1979年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、6年間の社会人経験(東京メトロ勤務)を経て、東京大学法科大学院へ入学。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。現在、堀法律事務所に所属。第一東京弁護士会総合法律研究所スポーツ法研究部会副部会長、公益財団法人日本バスケットボール協会裁定委員。

Copyright © DAI-ICHI HOKI co.ltd. All Rights Reserved.

印刷する

今日は何の日?

2024年 5 4

日中貿易協定調印(昭和30年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る