給食無償化の実施状況
滝口〔弁〕 現状、地方自治体で給食無償化というのは、どの程度行われているのでしょうか。
渡邉〔弁〕 文部科学省が実施した「平成29年度『学校給食費の無償化等の実施状況』及び『完全給食の実施状況』」によると、1,740自治体のうち、小学校・中学校ともに無償化を実施している自治体は76、小学校のみ実施の自治体が4、中学校のみ実施の自治体が2、一部無償化・一部補助を実施している自治体が424と報告されています。
本目〔議〕 最近の新聞記事では、小中学校ともに無償化を実施している自治体は254である、と報道するものもありますね。近年、給食無償化を実施する地方自治体は増えてきている様子です。
義務教育の無償
滝口〔弁〕 義務教育については、憲法上無償とする旨が定められていると思います。憲法上、学校給食費は無償にはならないのですか。
渡邉〔弁〕 はい。憲法26条2項後段は、「義務教育は、これを無償とする」と定めています。この義務教育の無償の範囲について、いわゆる授業料の不徴収にとどまるのか、修学に必要な一切の費用が含まれるのかが、学説上争点となっていました。
滝口〔弁〕 過去の裁判例を教えてください。
渡邉〔弁〕 この点については、実は最高裁まで争われた事案があります。事案の概要としては、公立小学校に在学する児童の保護者が、保護者が支払うべき義務教育期間中の教科書代金について、国が負担すべきであるという理由から、同代金の徴収行為の取消し及び同金額の支払等を求めたものです。
滝口〔弁〕 最高裁の判断を教えてください。
渡邉〔弁〕 最高裁は、憲法26条2項の意義は、国が義務教育を提供するにつき有償としないことを定めたものであり、教育提供に対する対価とは授業料を意味するとして、無償の範囲を授業料の不徴収にとどめるという判断を行いました。
滝口〔弁〕 つまり、給食費は授業料ではないので、義務教育の無償として憲法上保障されるわけではないということでしょうか。
渡邉〔弁〕 そのとおりです。
給食無償化の法的根拠
滝口〔弁〕 そうすると、法律上、保護者負担と定めている学校給食費を無償化することのできる法的な根拠はあるのでしょうか。
渡邉〔弁〕 学校給食法上は保護者負担である旨が明記されていますが、解釈上、保護者の負担を軽減することは可能かもしれません。
滝口〔弁〕 どのような解釈なのか、内容を教えてください。
渡邉〔弁〕 昭和29年9月28日の文部事務次官通達では、学校給食費を保護者負担とする学校給食法11条に関し、「これらの規定は経費の負担区分を明らかにしたものでたとえば保護者の経済的負担の現状からみて、地方公共団体、学校法人その他の者が、児童の給食費の一部を補助するような場合を禁止する意図ではない」としています。
滝口〔弁〕 一部ではなく、全部を補助することはできないでしょうか。
渡邉〔弁〕 国会では、当該通達に関し「児童の給食費の一部を補助するような場合を禁止する意図ではない」との答弁がなされたことがあります。
本目〔議〕 ただ、国会答弁も結構玉虫色で、全員の給食費を全額補助しても問題はない、とまではいってなかったようにも思われます。