三重県地方自治研究センター上席研究員 髙沖秀宣
自治体議会の「劣化」に対する危機意識
地方自治体は人口減少局面に突入しており、今後多くの厳しい課題に対して地域の実情を踏まえ、的確に対応していくことが求められていることは異論のないところであろう。そうした中で自治体議会においては、議会活性化に向けた主体的な取組が進められている一方で、現状の自治体議会の在り方については、一部の町村議会などにおいて無投票当選の割合が増加する傾向にあるなど、議員のなり手不足が深刻な問題になっている。
また、昨年4月の統一地方選挙に見られたように、地方選挙の投票率が低下するとともに、自治体議会に対する住民の関心が大きく低下してきており、政務活動費の使途の問題等により議員の資質等に注目が集まり、議会の在り方が厳しく問われていることなど、自治体議会及び議員に対する住民の信頼確保が大きな問題となってきている。
このような状況の中、昨年3月には、総務省から「地方議会に関する研究会報告書」が公表されたが、その内容があまりにも高尚で洗練されていて、県内の自治体議会の実態を反映していないのではないか、また活用しにくいのではないかと考え、三重県地方自治研究センター(以下「自治研センター」という)でも同年5月に、「市町議会の在り方に関する研究会」を設置して、自治体議会が直面している諸課題について議論することとした。
自治研センターの問題意識は、先に述べたようないわゆる「議会の劣化」が厳しく指摘されている現状となっていることを議会人は深く認識し、議会全体の力を結集して真の二元代表制の実現に向けて、また、住民の信頼確保に向けてさらに一層の議会改革に取り組むべきであり、そして、「議会の劣化」に対する危機感を共有することは、議会関係者だけでなく、執行機関や住民との間においても重要である、との認識であった。
研究会委員の構成
自治研センターでは、この研究会の委員構成について、できるだけ市町議会の実態を反映させるため、学識経験者だけでなく、やはり現職の議員や首長経験者、そして行政経験者も含め、さらには議会事務局職員や一般市民にも委員を委嘱することが重要ではないかと考えた。
結局8人の現役・元自治体議会議員、首長経験者2人、行政経験者2人、議会事務局長1人、市民等2人で、学識経験者には立命館大学の駒林良則教授と地元三重県内の四日市大学から松井真理子教授にお願いした。中でも自治体議会に関心を持っている一般市民の方にも就任いただいて、市民の立場から議論いただいたことが特筆されるのではないか。