本調査を通じて得られた、全国の学習支援の実態と課題
今回の調査で、全国的に子どもの貧困対策としての学習支援に大きな関心があることが分かりました。学習支援が子どもの貧困対策として大きな柱になっています。学習支援事業を平成27年度に実施した自治体は3割台ですが、平成28年度に学習支援を始める自治体は5割を超えます。しかし、都市部と地方では、事業の担い手のNPOなど民間団体や個人、財源などに大きな差が見られ、地方では、まだまだ事業の実施に困難があることも分かりました。
事業の対象世帯(生活保護世帯、ひとり親世帯、就学援助世帯など)が全て参加(登録)しないのは、学習支援に対する消極性、学ぶことへのあきらめが対象世帯の子ども、親の双方に見られることが要因のひとつといえるでしょう。
学習支援事業の費用は厚生労働省が定めた「基準額」があるものの、自治体によって大きな差があります。自治体の「積極性」、「財政力」が影響しているものと思われます。
学習支援の方法も「教室」、「訪問」、「両方」と様々ですが、保護者支援、教室に来られない世帯への支援が訪問という形で行われています。
学習支援事業ですが、「悩みなど相談」、「挨拶や話題の提供」、「基本的なマナー、言葉づかい」、「いじめや虐待への気づき」など、日常生活の相談・支援や居場所としての事業にもなっています。
本事業は、生困法を根拠に行われており、事業内容は自治体の主体性が生かされる事業づくりが可能になっています。事業の目的も、学習習慣の改善、学習成績の向上、進学率の向上とされていますが、仲間づくり、不登校対策、高校中退対策も行われています。
しかし、運営上の課題も少なくありません。とりわけ、関係機関の連携、学校、教育委員会との連携の必要性を訴える団体は少なくありません。
(1) 生活困窮者自立支援法……既存の制度では十分に対応できなかった生活保護に至る前の段階の生活困窮者に対し、「自立の促進」を図ることを目的として、平成27年4月に施行。これにより福祉事務所を設置する自治体は、生活困窮者がワンストップで相談できる窓口の創設など、自立相談支援事業を行っている。また、生活困窮者が就労できるよう各種支援を実施。失業などにより一時的に住む家を確保できない人のために、家賃を補助する制度も盛り込まれている。
(2) NPO法人さいたまユースサポートネット……高校中退者や通信制高校生、不登校や引きこもり、障害などで生きづらさを感じている子ども・若者など、この社会に居場所がなかなか見つからない子ども・若者たちの学び直し、居場所づくりなどを、地域づくりを通じて、無償で応援するさいたま市を中心に活動するNPO。
(3) 独立行政法人福祉医療機構(WAM)……社会福祉振興助成事業(WAM助成)は、国庫補助金を財源とし、NPOやボランティア団体などが行う民間福祉活動を対象とした助成金制度。高齢者・障害者などが地域のつながりの中で自立した生活を送れるよう、また、子どもたちが健やかに安心して成長できるよう、民間の創意工夫ある活動や地域に密着したきめ細かな活動に、助成というカタチでお手伝いしている。