◉対象学年(年齢)について[回答は自治体]
学習支援の対象年齢は、中学1~3年生を対象に実施している自治体が約7割。高校中退防止と高校卒業後の進路保障まで支援の目標にすることも。
学習支援の対象学年は、中学生が平均7割でした。学習支援は早い時期、小学校の低学年段階から始めた方がよりよいのはいうまでもありませんが、教室の場所、開室する時間などの問題を考えると小学校段階では難しいのが現実です。
高校中退は貧困層の中から多く出現するという現実や、貧困層の生徒の多くが通う高校(定時制高校や地域の教育困難校など)での中退率が非常に高いことから、高校を中退することを防ぐための学び直し、高校卒業後の進路保障までを含んだ長く持続性のある支援が必要になっていると思われます。
◉登録者が100%にならない理由について[回答は自治体]
対象世帯が全て参加しないのは、「学習支援に対する消極性」、「学ぶことへのあきらめ」が子ども、親の双方にあるため。ここから、保護者と対象者本人の貧困から抜け出すことへの絶望も見えてくる。
対象者の3割以下の生徒たちしか学習教室に登録しないという課題があります。
そこで、実施自治体に、対象人数に対する登録の割合において、100%にならない理由について聞くと、最も多かったのが「保護者が事業に対して消極的」で60.0%、続いて「子どもが事業に対して消極的」が49.7%となりました。
この結果、親が子どもに学習を受けさせることへの意欲のなさが分かり、保護者と対象者本人の自己肯定感のなさがうかがえます。
生活保護世帯では、世帯主(親)の約半数が、中卒や高校中退という調査結果もあります。そのため、学校での学習や仲間づくりといった体験を持たない親を持つ世帯の子どもたちに、学習教室への参加を呼びかけてもなかなか参加が難しいのが現状です。
◉人口規模ごとの平均予算について[回答は自治体]
学習支援事業の費用は厚生労働省が定めた「基準額」はあるが、自治体によって大きな差がある。自治体の首長、担当者の「意欲」と自治体の「財政力」が影響しているか。
学習支援事業を始めたい自治体にとって、支援者を確保したくても人件費がなければ安定して確保することはできません。安定した事業にするには、やはり人件費を含む予算が必要となります。学習支援はボランティアでというのが全国のすう勢であることが分かりますが、それだけでは安定した支援事業にはなりません。
◉関係機関との連携状況[回答は学習支援事業受託団体]
NPO等の学習支援事業受託団体は、小・中学校、高校等、教育機関との連携に必要性を感じていながらも、実際にはできていない。学習支援事業が子どもの貧困対策のコア事業となっている。
学習支援事業受託団体に、「連携・協力の必要性を感じる機関」について尋ねたところ、最も多かった回答は、「小・中学校」で88.8%、続いて「行政・福祉事務所」(81.6%)、「教育委員会」(66.3%)、「高校」(50.0%)、「児童相談所」(44.9%)の順となりました。
事業を運営するNPO等の民間の学習支援団体は、行政・福祉事務所とはしっかりと連携がとれているようですが、最も必要性を感じる「小・中学校」、また、「高校」、「児童相談所」といった子どもたちと実際に日々接している機関との連携ができていないことが分かりました。
これは、学校・教育委員会だけに責任があるわけではなく、学校にとっても制度として定着するかどうか分からない民間団体に生徒の個人情報を出したり、生徒の指導を委ねるのは不安と思われるのはある意味仕方ないかもしれません。
しかし現在、「学校をプラットフォームに」という議論がされています。それを実現するためにも、学校は、地域の子ども支援を行うNPOや民生委員・児童委員、児童相談所、教育機関、医療機関、厚生機関など外部資源の力を借りなければならない時代になっています。そのネットワークの構築こそが、最も困難を抱えた子どもたちのセーフティネットになっていくものと思われます。