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2016.02.10 議員活動

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民間企業とのあまりの違いに驚がくし、市政を志す

 私は大学卒業後、ずっと会社員として働いてきました。漠然とですが、ずっとこのまま定年まで民間企業で働いていくものだと考えていました。
 そんな私に転機が訪れたのは2010年の春、初めて自治体相手のプロジェクトに従事したことがきっかけです。当時私は、総合電機メーカーで顧客向けの人事系のシステム企画や制度設計業務に従事していました。顧客はすべて民間企業で、その多くが製造業でした。日本の製造業はグローバル化の中で厳しい競争にさらされています。国際競争に打ち勝つため、1円たりとも無駄にしないよう常に業務プロセスや組織制度の改善・改革を行っているのです。私は長年、評価制度や報酬制度、業務プロセスの現状を整理し、その上で新しい制度やシステムの提案を行っていたため、企業の改革や合理化が他と比べてどの程度進んでいるのかを知ることができる環境にいました。
 さて、そんな私から見て、自治体は理解し難い異質な業界でした。仕事のやり方、お金の使い方、社会保障などの人事制度の仕組みなど、民間企業からしたら考えられないほど「ぬるい」世界だったのです。「なぜこんなひどい状況なのか?」若干の憤りとともに地方自治に興味を持ち、調べるうちに、日本の自治体の置かれている厳しい状況や根深い問題の数々を知り、この国の将来に危機感を感じ『何とかしないと!』との思いから、翌2011年4月の統一地方選挙で市議会議員に立候補し、政治の世界のことなど何も知らないままに川崎市議会議員となりました。今振り返ればお恥ずかしい限りですが、まさに、勢いで突っ走った結果、議員となった今の自分があるのです。

(著書『ここが変だよ地方議員』萌書房、2015年より)(著書『ここが変だよ地方議員』萌書房、2015年より)

目の前に立ちふさがる政治業界の壁

 さて、市の行財政改革に取り組むべく地方議員になってからしばらくして、ふと周囲を見回してみたところ、私のように政治の世界に全く関係ない分野から入ってきた人間が非常に少ないということに気づきました。ほとんどの議員が政治業界の関係者ばかりだったのです。多くは二世・三世議員や議員秘書、そして政治に密接な関係を持つ団体に所属している人ばかりでした。
 それはどこの会派(政党)も同様で、当時私は「第三極」と呼ばれる新興の改革政党に属していましたが、そこに所属する議員ですら、6人中4人が議員秘書経験者といった状況でした。
 会派では、この業界の先輩である彼らから様々なことを教えてもらいました。選挙のセオリーや地元での付き合い方、支援者の獲得方法などです。しかし、そうした話を聞く中で「地方議員の仕事とは一体何なのだろう?」と疑問に思うようになりました。
 二元代表制の下、地方議会議員に求められる役割は「行政のチェック」と「政策への提言」です。多岐にわたる行政サービスの運用や税金の使途を調査するだけでも、朝から晩まで働いても時間が足りないくらいです。
 しかし、実際には多くの議員が、一部の団体や組織による地域の会合やイベント・地域の祭りや運動会や餅つきなど人の集まる行事への参加、所属している国政政党の支持率獲得のための政治活動や選挙活動、支援者の獲得と維持のためのイベントや旅行の準備などに日々多大な時間を費やしていました。
 政策こそまじめに行うべきものであり、そうすればおのずと市民からの支持は得られるはずだ、と訴えても、皆「それは正論だ。しかし、選挙で勝たねば何も成し遂げられない」と口をそろえて言います。
 確かにそうでしょう。しかし、選挙に勝つことが目的化しすぎて、本来なすべきことがなおざりになってしまっているとも感じます。政策をまじめにやろうと志した人間ですら、こうした業界の中で生き残るために(彼らいわく)意に沿わない活動に多くの時間を割いており、「こんな状況はおかしい、変えるべきだ」と声を上げることはしないのです。
 また、もうひとつおかしいと思ったことがあります。それは、「国政政党の対立関係を地方議会に持ち込みすぎている」ということです。繰り返しになりますが、地方議会は二元代表制を採用しています。二元代表制とは、行政(市長)と議会が相互にけん制し合うことで、健全な市の運営を実現する仕組みです。議院内閣制である国会とは根本的に異なる点は、対峙(たいじ)すべきは行政や市長であり、対立する政党ではないということです。しかしながら、地方議会の会派はまるでミニ国会のように、会派(政党)が混じり合うことはありません。議会内部で国政政党の代理戦争を行っているのですから、二元代表制の意図した議会の機能が働いているとは言い難い状況です。

https://www.facebook.com/odarieko/about ©小田理恵子https://www.facebook.com/odarieko/about ©小田理恵子

小田理恵子

この記事の著者

小田理恵子

川崎市議会議員 明治大学法学部卒業。前職は総合電機メーカーにて人事・人材育成関連のITコンサルティングに従事。2010年に初めて自治体相手の仕事にプロジェクトのチームリーダーとして参画し自治体の抱える多くの課題を知ったことから、「市民目線の行政」を実現するため、市議会議員に立候補して2011年に初当選し、現在2期目。 住民自治の推進を目指し、自治体業務や予算の見える化を推進。政策面では、若者施策や子育て施策に注力している。昨年のマニフェスト大賞の政策提言部門で、都市部の「隠れ待機児童問題」への取組が評価され審査委員会特別賞を受賞。 文中のイラストの出典となった著書『ここが変だよ地方議員』は、号泣議員に政務活動費の私的流用……、地方議員の不祥事が紙誌面をにぎわす昨今、会社員から川崎市議会議員へと転身した著者が、地方議員や議会の「?」や「!」を、4コマ漫画とエッセイで市民にお知らせしようと立ち上げたホームページの記事をまとめた一冊。「怒り心頭」、「抱腹絶倒」の議員・議会の実態がよく分かると全国で好評発売中(萌〈きざす〉書房、2015年3月刊)。

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