川崎市議会議員 小田理恵子
多くの国民は政治家をどう見ているのか
「どうせ票目当てなんでしょ?」
地方議員になって1年目のことです。地域の子育て環境の実態を知りたくて頼み込んで参加させてもらったある会で、私と同年代の女性から言われた言葉です。そんな気持ちは一切ありませんでしたので、そう思われてしまったことは残念でしたし、何より腹を割って話ができないことへのもどかしさを感じました。
議員になってからというもの、会社員や主婦、自営業者などの政治とは縁の薄い方々の声を拾うべく、議員と付き合いのない場所へと足を運ぶように努めていますが、地方議会議員という名の政治家である私に懐疑的な目を向ける方や、拒絶反応を示す方は非常に多いのが現実です。政治に対し不信感やアレルギーを持っている人がいかに多いかということを日々思い知らされていますが、議員になる前、私が政治家に対して抱いていたイメージも、彼らと同じようなものでしたので、こうして拒絶されても「そうだよな…」と納得してしまう自分がいます。
しかし、一方、普段から地方政治に密接なかかわりがある地域の団体や組織の方々はそうではありません。自分たちのイベントや会合へ地方議員を積極的に招待してくださいますし、常にかかわろうとしてきます。そして、そこで自分たちの意見や要望を地方議員に伝える努力を欠かしません。ここでは少なくとも拒絶されることはありませんし、むしろ尊重してくださいますから居心地がよいのです。
さて、地方議員の活動を「普通に」続けていると、かかわりが持てるのは後者の方々ばかりです。イベントや会議で連日同じ方と顔を合わせることはよくある話です。気がつけば、いつもほんの一部の人の意見ばかり聞いているという状況に陥ってしまっているのが、地方議員の現状です。議員のいう「地域の声をお聞きしました」のほとんどは、こうした方々の声なのです。
ですから、地方議会議員として慣例どおりの動きをしているだけでは、実は多くの方が政治に不信感を持っていて、政治家自身も嫌われているということに、実感を持って気づくことはないだろうと感じます。狭い社会の中で自分たちに都合のよい環境にとどまり続けた結果、それ以外の多くの国民・市民とのかかわりをなくしてしまい、ガラパゴス的な価値観を醸成してきたのが今の政治業界なのです。
ダイバーシティ(多様化)の実現は、まず女性議員を増やすことから
しかし、それはとても危険なことです。国政選挙や地方選挙の投票率は年々低下し続けています。多くの人は政治に期待もしていなければ興味もないということの表れです。このままでは、政治は国民・市民から完全に見放されてしまいます。そうなったときに、この国はどうなってしまうのでしょう?
私たち議員は、この狭い「政治島」を抜け出し、より多くの島の外の市民と交流することで感覚を同じくし、その価値観を政治の場に持ち込む必要があると考えます。つまり、市民目線の政治です。
そして、政治を市民目線に変えていくために必要なこと、それは政治の世界にダイバーシティ(多様化)をもたらすことであると考えます。今は一部の人間の価値観しか共有していない政治から、多様な価値観やバックグラウンドを持つ議員を増やしていく必要があるのです。そのための第一歩は、少数派の中で最も多数派である女性の数を増やすことです。全国における女性議員の割合は約1割にすぎません。私の所属する川崎市議会の女性議員の数は60人中11人と18%で平均よりは高いものの、半分には程遠いのが現状です。
人口の約半分は女性であるにもかかわらず、政治の世界では女性はマイノリティなのです。ここから変えていかねば、さらに少数派の人々を受け入れる土壌などできようはずがありません。
女性議員の数を増やすことは政治を市民の手に取り戻す第一歩であると、今はそう考えています。しかし、そのように考えるようになったのは、議員になってしばらくたってからです。次に、なぜそう考えるようになったのか、その理由について説明します。