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2023.02.27 議会運営

第15回 「議会報告会(住民との意見交換会)」を議会からの「政策サイクル」の起点に ~「議会報告会あるある」を「ワールドカフェ」が変える~

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「議会報告会あるある」を「ワールドカフェ」が変える

 コロナ禍の中、全国のどのくらいの議会が、「議会報告会(住民との意見交換会)」を開催しているのか。全国市議会議長会、全国町村議会議長会の調査によると、2020年中に議会報告会を実施した市議会は221議会(27.1%)、町村議会は180議会(19.4%)である。それに対して、コロナ前の2018年中に実施した市議会は452議会(55.5%)、町村議会は383議会(41.4%)であった。コロナ禍だからこそ、住民の意見を聴かなければと、Zoom等のオンライン会議システムを活用して、議会報告会を継続する議会が少数ながらあるものの、残念ながら、感染拡大防止を理由に、議会報告会の開催を中止、延期している議会が多い。
 また、筆者が全国の議会を回っていて、議会報告会についてよく聞く話が、「参加者がそもそも少なく、いつも同じメンバー」、「参加者の属性が男性、高齢者に偏る」、「声の大きいクレーマーのような住民が場を荒らす」、「だから議会報告会は意味がないので開催をやめた、躊躇(ちゅうちょ)している」という話である。
 議会基本条例に位置付けられたことで、議会報告会を実施する議会が増えたものの、当初、市町村内の「地域単位」で、議員と住民が向かい合った「対面式」での開催が多かった。そうした開催方式もあり、住民からの苦情、陳情、要望、個人的な見解の演説等で炎上する議会報告会が全国で頻発した。また、改善を試みずそのままのやり方を継続した結果、雰囲気が悪くつまらない場のイメージが定着し、参加者も徐々に減少。それが「議会報告会あるある」につながっていく。
 筆者にとってこの問題の解決策のヒントになったのが、2014年、福岡県志免町の町民有志による「まちづくり志民大学」が開催した、「議員と語ろうワールドカフェ」だった。「ワールドカフェ」とは、カフェにいるようなリラックスした雰囲気の中で、4~5人の少人数のグループに分かれ、参加者の組み合わせを変えながら、自由に話し合いを発展させていく「対話」の手法である。「席替えをする井戸端会議」とも紹介されたりする。議員と住民がワールドカフェを行う姿を現場で見て、大きな衝撃を受けた。
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福岡県志免町「議員と語ろうワールドカフェ」

 同年、岩手県久慈市議会で、議会基本条例に基づく市民との意見交換会をワールドカフェで開催するに当たり、筆者はファシリテーターを務めた。テーブルには赤と白のチェックのテーブルクロスを敷き、会場にはBGMでボサノバを流し、お菓子と飲み物を用意する等、気楽に会話できるカフェのような雰囲気を演出した。終了後、参加者から、参加して楽しかった、話しやすかった等の感想をもらい、手応えを感じた。よくあるワークショップのように付箋を使わず、最後にグループ発表の場も設けなかったことも、参加者の心理的負担を下げた。
 「対話」というと、楽しく雑談すること、サシでじっくり意見交換すること、車座で話し合うこと、国際紛争の解決に向けた話し合い等、人によってイメージは様々だ。哲学の社会構成主義では、「対話とは、あるテーマについて、意味付けを確認し、新しい関係性を創り出すプロセス」と定義されている。ポイントは、「意味付け」という部分である。我々は、日々様々な物事に意味付けをしている。同じものを見ても、それぞれの意味付けが異なるので、見え方、感じ方が違う。雪国に住む筆者にとって「雪はうんざり」だが、雪が珍しい地域の人にしたら「雪はきれい」かもしれない。相互に理解し合うためには、物事を一緒に意味付ける対話のプロセスが欠かせない。
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久慈市議会「かだって会議」

 地域の課題についても、住民それぞれ、そして議員それぞれの意味付けが異なる。議会報告会では、地域の課題についてのお互いの意味付けを、その背景、ストーリーも含めて聴き合う、そんな「対話」が重要になる。

佐藤淳(青森大学社会学部教授/早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)

この記事の著者

佐藤淳(青森大学社会学部教授/早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)

青森大学社会学部教授、早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員。 1968年青森県十和田市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、さくら銀行(現三井住友銀行)入行。法人部門を中心に12年間勤務後退職。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科修了、社会福祉士。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。マニフェスト型選挙、地方自治体の組織開発、地方議会改革、市民協働のまちづくり、シチズンシップ教育のテーマで研究と実践を行う。 共著に「スピード開票実践マニュアル」(ぎょうせい)、「点描~変わりゆく現代社会」(ぎょうせい)、「あなたにもできる議会改革」(第一法規)、「実践学校模擬選挙マニュアル」(ぎょうせい)、「議会改革実践マニュアル」(第一法規)等。

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