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2022.10.25 議員活動

第4回 学校・行政対応のまずさ(2)─事故調査委員会・教員の処分

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5 教員の処分(顧問:停職6か月。副顧問停職2か月)

 この事故調査報告書を受けて、平成21年12月28日に、顧問に対しては停職6か月、副顧問に対しては停職2か月の処分が下されている。
(1)処分理由について
 平成21年度大分県教育委員会12月臨時会会議録によれば、「教職員の懲戒処分について」、「安全配慮義務及び注意義務違反による処分発令(案)」として、処分理由としては、「同教諭は、平成21年8月22日(土)午前9時ごろから午後0時ごろの間、県立竹田高等学校の剣道場において、同部主将の2年生男子生徒に対して、十分な休憩や水分補給をさせずに連続して約1時間30分にわたり練習を行わせ、同生徒の体調不良に気付くのが遅れ、その後も午前11時55分ごろ意識が朦朧(もうろう)となり倒れるまで練習を継続したものであります。その後、同教諭は、副顧問とともに、午後0時10分ごろ救急車の出動を要請し、同生徒は午後1時ごろ、公立おがた総合病院に搬送されましたが、同生徒は同病院搬送後、約4時間後に様態が急変し、その約2時間後の午後6時50分に死亡しました。同教諭は、剣道部の顧問として部員の生命、身体の安全を確保する義務があったにもかかわらず、同生徒の体調不良に気付くのが遅れ、適切な予防措置を怠り、体調に異常が生じた後も練習を継続しようとし、緊急の対応が必要な熱中症に対する救護措置が遅れたものであります。なお、同教諭は、練習中において、同生徒の動きが悪いというなどの理由で同生徒の腰の横を蹴り、頬を平手で複数叩くなどしており、これらの行為は、学校教育法11条に禁止されている体罰に該当するものであります。同教諭の行った行為は、生徒の生命、身体の安全の確保を最優先すべき教育公務員として、誠に遺憾な行為であり、その職に対する信用を著しく失墜させたことは地方公務員法第33条の規定に違反するものであります」とし、停職6か月としている。
(2)処分理由の検討
 当該教育員会における処分理由は、顧問の生命、身体に対する安全確保義務違反であり、その内容として、①体調不良に気づくのが遅れた点、②熱中症に対する救護措置の遅れを指摘している。そして、なお書で、③学校教育法11条が禁止する体罰該当行為を挙げている。しかし、本来上記③の暴行行為等が処分理由の第一に取り上げられるべき事柄であるはずである。それにもかかわらず、なお書の位置付けで説明する教育委員会の姿勢からは、子ども側・保護者側に立って再発防止を徹底しようとの姿勢が見られない驚愕(きょうがく)すべきこの事件の捉え方である。同じ教員である身内をかばうものであると批判されてもやむを得まい(この点、委員から「なお」ではなく、並列の「また」とすべき旨発言があったことは救いである)。そして、副顧問についても同様の構成で説明され、「顧問の補佐する立場(ママ)」、「顧問に進言すべき等の義務が不十分である(ママ)」として停職2か月としている。
(3)情報操作の疑念
 奈美さんらは、学校・教育委員会に対して、真実を明らかにすべく資料提供を行い、かつ、学校・教育委員会側への資料要求も行ってきた。しかし、学校・教育委員会側からは、必ずしも十分な情報提供はなされてこなかった。自分たちが集めてきた事実や資料が無視されていないか、顧問・副顧問側にとって都合のよい説明や解釈に基づいて教育委員会が事実認定しているのではないか、こうした疑念や不信感が高まっていった。
 きちんとした形で真実が理解されてほしい。どのように学校・教育委員会側が情報を把握し、整理しているのか。それを確認するために、平成22年4月22日付けの大分県教育庁への個人情報開示請求に始まり、同年7月1日の第2回口頭弁論期日における文書開示請求等により、教育庁又は竹田高校が所持している本件事故(直後)の状況が記載された報告書(本件事故に関し顧問・副顧問から聞き取り等した結果をまとめた資料を含む)の開示を行い、教育庁が行った顧問や副顧問への事情聴取書等を入手する。
 そこで、顧問等が、剣太への暴行事実について、(ア)指導のためとの説明、(イ)強い心を持ってほしいがために行ったとの説明、(ウ)剣太の技術が足りないから稽古を継続せざるを得なかったかのような説明等を繰り返していることを知る。突きダレを上げて叩いたり、椅子を投げたり、前蹴りしたり(顧問は前足で押したと説明する)する行為のどこに、指導の要素があるのであろうか。学校・教育委員会側は、こうした説明を許容してはならないはずである。しかし、残念ながら、その後の裁判でも被告県側は、こうした顧問・副顧問にとって都合のよい説明や解釈を土台にした主張を繰り返すのである。
 処分理由に記載された「生徒の生命、身体の安全の確保を最優先すべき教育公務員として、誠に遺憾な行為であり、その職に対する信用を著しく失墜させる行為である」との当該顧問及び副顧問教員に向けられた指摘は、こうした顧問・副顧問の主張を土台にした遺族対応を事後的に継続する学校・教育委員会側にこそ(組織に対する信用を著しく失墜させる行為として)最も当てはまる行為なのではないか。
 英士さんは、この一連の顧問の行為は「リンチ」であり、学校外で行われれば即暴行・傷害・殺人として刑法で処罰される行為が、なぜ学校内では許容されるのかと憤る。筆者も一連の剣太事件を詳細にたどり、全く同じ思いである。
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剣太小学6年生の卒業旅行(別府)。両親と。
 

(1) 翌年、竹田高校の学校長となる。
(2) 奈美さんは、剣太事件について、事件時から詳細な日誌を書き続けている。そのノート記載事実参照。


 

鈴木秀洋(日本大学危機管理学部教授)

この記事の著者

鈴木秀洋(日本大学危機管理学部教授)

日本大学大学院危機管理学研究科教授兼日本大学危機管理学部教授。元文京区子ども家庭支援センター所長、男女協働課長、危機管理課長、総務課課長補佐、特別区法務部等歴任。都道府県、市区町村での審議会委員多数。法務博士(専門職)。保育士。著書に『自治体職員のための行政救済実務ハンドブック 改訂版』(第一法規、2021年)、『行政法の羅針盤』(成文堂、2020年)、『子を、親を、児童虐待から救う』(公職研、2019年)、『虐待・ⅮⅤ・性差別・災害等から市民を守る社会的弱者にしない自治体法務』(第一法規、2021年)等。

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