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2022.10.25 議員活動

第4回 学校・行政対応のまずさ(2)─事故調査委員会・教員の処分

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(3)まとめ
 事件・事故が起きるたびに事故調査委員会が立ち上げられる。しかし、筆者は、委員会に遺族が入っている例を知らない。また、遺族側からの推薦も受け付けず、行政側がその委員を選抜し、遺族側の理解が得られないうちに委員会が立ち上がり、遺族側との十分な意見交換がないまま事故調査報告書が提出され、事故調査委員会から遺族側への説明もなされない。筆者が全国の事故調査委員会等を調査した限り、残念ながら、こういった事故調査委員会のあり方の例が続いている。こうした事故調査委員会の形式が続く限り、遺族側の怒りが収まることはないだろう。
 こうした遺族側の怒りに対して、行政側は、客観的事実の担保が大切であるとの説明を繰り返す。しかし、それでは客観的な調査が十分に行われ、事故調査報告書が作成されたのか、その観点から報告書を読むと、今度は行政及び事故調査委員会は捜査機関ではないから徹底的な調査はできず限界があるとの言い訳的な説明及び記述がなされる。
 今回の報告書でも「はじめに」の中で、「調査委員会の任務は事故の経過を明らかにすることであるが、調査の中で述べられたことが事実であったかどうかということになると、検証が難しく断定するわけにはいかないことも多い。また死亡事故であるから、学校以外の状況も調査すべきであると思うが、学外にまで調査を広げることはできなかった」と記述されている。つまり、事故調査委員会が事実の客観性を追求できるかというと、そもそも事故調査委員会には捜査権があるわけではなく任意の聞き取りしかできないという限界があることを前提としている。
 そうだとするならば、事故調査委員会の立ち上げ時に、何をどこまでこの事故調査委員会が行うのか、行うことができるのか、被害者である遺族らと話し合うことを真っ先に行うべきではないのか。警察が行うような強制捜査はできないとしても、客観的な真実解明に近づくことができるよう関係職員に真実の開陳を求め、少なくとも行政側資料は事故調査委員会が求めるか否かにかかわらず関係資料の一式すべてを積極的に遺族側に提供する。常に遺族側と対話をしつつ調査を進行させる。そのような事故調査委員会にすべきではないのか。完全一致は難しいとしても、遺族側と意見交換をしながら、遺族が求めるものにより近い形の手法と内容に工夫をした事故調査のあり方を模索する。事故調査報告書には、再発防止のための直接的・間接的・付随的なものも含めて広く改善提案を載せていく(死亡事故への直接的かつ厳格な因果関係に絞って報告書を作成するような手法をとらない)。こうした姿勢が望まれるのではなかろうか。
 この観点から本件事故調査委員会及び報告書を検証した場合、問題の多い事故調査報告書であったといわざるを得ないのである。
 そして、この問題のある事故調査報告書の記述は、次の教員の処分の甘さにつながる。
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高校のカバンに付けられたストラップ。キャプテンとして自らを鼓舞していたのか……。

鈴木秀洋(日本大学危機管理学部教授)

この記事の著者

鈴木秀洋(日本大学危機管理学部教授)

日本大学大学院危機管理学研究科教授兼日本大学危機管理学部教授。元文京区子ども家庭支援センター所長、男女協働課長、危機管理課長、総務課課長補佐、特別区法務部等歴任。都道府県、市区町村での審議会委員多数。法務博士(専門職)。保育士。著書に『自治体職員のための行政救済実務ハンドブック 改訂版』(第一法規、2021年)、『行政法の羅針盤』(成文堂、2020年)、『子を、親を、児童虐待から救う』(公職研、2019年)、『虐待・ⅮⅤ・性差別・災害等から市民を守る社会的弱者にしない自治体法務』(第一法規、2021年)等。

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