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2022.10.11 議員活動

第11回 「行政改革と自治体現業職員のあり方」を考える

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地方議会からの観点

滝口〔弁〕 清掃業務の外部への委託について、区議会議員の方々は賛成の立場でしょうか。
加藤〔議〕 基本的には、民間ができることは民間に、と考えています。ここ十数年で、区側から提供するサービスは従前の1.5倍から2倍に増えたと職員は愚痴をこぼします。その一方で、区の予算は大きくは変わらないので、実際問題として、提供できる行政サービスのうち、民間にできることは民間に、と考えざるを得ません。
滝口〔弁〕 民間への業務委託以外の方法で、何か解決策はありませんか。
加藤〔議〕 少なからず東京都23区においては、一つの区だけでは解決に向けて動けません。例えば、ごみの有料化をすることがあるならば、23区で一斉にやらないと実行に移せません。区境で不法投棄が発生する可能性がありますから。
本目さよ〔議〕 私個人としては、民間委託を勧めたことは一度もありません。台東区では清掃職員を新規採用して人数を増やしています。藤井先生の今回のお話を聞いて、「他の区はそんなに増やしていないんだ」と初めて認識したところです。
田添麻友〔議〕 リサイクル運動が盛んだったときは、目黒区としても、対策を議論しましたが、このような清掃事業に関する議論自体が今は下火になっているという印象です。
滝口〔弁〕 どのような理由で下火になっているのでしょうか。
田添〔議〕 私個人としては、戸別収集をやってほしいと考えています。これを区の事業として行う場合、予算として約3億円かかるそうで、これをどうすればいいのか、というところで議論は終わっているようにも見受けられます。
藤井〔学〕 先ほども述べましたが、区が雇用する清掃職員は、必要不可欠な人材だと考えています。「お金が足りないから採用できない」ではなく、不足する原資を徴収していく手段を考えていくべきだと思っています。2019年に多摩川が氾濫して大田区、世田谷区が浸水したことがありました。このような災害が起きたときに、すぐに公的な立場で、現場で動ける人材が必要であり、このような現場で活躍できるのは、区で採用した清掃職員であると考えています。

清掃事業の将来展望を誰が描くか

滝口〔弁〕 少し話を変えたいと思います。リサイクルの話にも通じるかと思いますが、清掃事業の現場から将来の展望を描くことが可能なのでしょうか。例えば、循環型社会を実現できるのでしょうか。
藤井〔学〕 先進的な清掃職場の清掃職員の方々は、循環型社会を意識して仕事をされていますし、そのためにも住民とコミュニケーションをとりながら仕事をされています。そこから住民のニーズをくみ取り、政策形成に生かしていくような意識で仕事をされています。
滝口〔弁〕 地域の情報収集が清掃事業の将来展望に生かされていくのでしょうか。
藤井〔学〕 そうですね。地域を熟知し住民に近いところで仕事をしているので、ごみの収集のみならず、地域の情報や住民のニーズも収集し、地方自治体の政策形成に生かしていくことが今後の清掃事業の未来を開いていきます。

むすびに

千葉〔弁〕 清掃職員の採用維持・補充という点は、単に予算の問題だけではなく、災害対応にも深く関わることが分かりました。地方自治体の限られた予算の中で解決することはなかなか難しく、議員の皆さんはとても複雑な立場で活動されているのだなと感じました。今回のお話は、弁護士業務で関わる分野ではなく、完全に素人としてお話を伺い、大変勉強になりました。議員と弁護士との相互理解がさらに深まることを祈念し、今回の勉強会を終わりにしたいと思います。

千葉貴仁(弁護士)

この記事の著者

千葉貴仁(弁護士)

1983年、青森県生まれ。東北大学法学部卒業、同大学法科大学院修了後、2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。現在、東京リーガルパートナーズ法律事務所共同代表弁護士。同弁護士会民事介入暴力対策委員会委員、関東弁護士連合会民事介入暴力対策委員会委員。

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