政治資金の流れを明らかにすることにデメリットはあるのか
滝口〔弁〕 収支報告書に不記載がある場合、どのような不都合があるのでしょうか。
渡邉〔弁〕 存在するはずの収入が消えてしまって、何に使われたのか分からないということになります。
滝口〔弁〕 政治家の立場からすると、自分のお金の流れや経済活動が世間に明らかにならない方が政治活動はしやすいのでしょうか。また、マスメディアから追及されるかもしれないと思い、萎縮してしまうということはあるのでしょうか。
加藤拓磨〔議〕 世間に明らかにした方が政治活動をしやすい、とはなりません。
滝口〔弁〕 何かご経験があれば教えてください。
加藤〔議〕 私自身の例ですが、個人献金として私の想定以上の金額をいただいたことがあります。私の考え方に共感いただき、志に対する献金として受領しました。政治資金規正法上、5万円を超える寄附については収支報告書に名前を記載しなければならないので、もちろん記載しました。
滝口〔弁〕 第三者からの視線を意識しましたか。
加藤〔議〕 そのことで何か後ろめたいことをしているつもりは毛頭ありません。ただ、収支報告書を見た第三者からすると、私が何かしらの見返りを求められているように見えるかもしれません。その点は気にしています。
江口〔議〕 国民や市民に説明ができない後ろめたいことは、政治家として絶対にやってはいけないことだと思います。お金のことは特にそうです。
千葉〔弁〕 個別の政治家に対して特に大きな金額の献金があった場合、仮に具体的に依頼がなかったとしても、政治家としては、献金をしてくれた方から無言の働きかけを感じることはないのでしょうか。
江口〔議〕 その方の意見を取り入れる、取り入れないというのは、その政治家の考え方であって、どちらが間違っているということはないと思います。ただ、その政治家も全市民に対して自らの行動について説明をする責任はあると考えます。
収支報告書の提出について
滝口〔弁〕 ところで、議員の皆さんはどのように収支報告書を提出していますか。
加藤〔議〕 私はオンライン提出をしています。収支報告書専用のExcelファイルを使えば計算とか楽ですし。区議会議員の中では、これまで手書きでずっとやっていて、今さらオンラインではできないという人も多いですね。周りでオンライン提出をしている人を見たことがありません。いまだに政治の世界はFAX文化ですしね。
江口〔議〕 私は紙媒体で提出しています。オンライン提出も考えてはいるのですが、何より正確に書きたいので、提出場所にいる職員に直接質問しながら、その場で書いて提出しています。その場でプロに聞けるのがいいです。
本目さよ〔議〕 私は間違いがあることもあって、直接提出しに行っています。もともと、オンラインでできるものはオンラインでやるタイプなのですが、オンラインを使うのにも一度紙で提出してからでないと使えないなど制約もあって……。なかなか収支報告書に関してはオンライン提出に踏み切れません。
滝口〔弁〕 やはり議員の皆さんとしては、収支報告書に誤りがないよう大変気を使っておられるのですね。また、オンライン提出には運用面での課題もあるようですね。
おわりに
今回の勉強会では、「政治資金規正法」から「政治への信頼」を考えました。収支報告書というツールが大きな役割を果たしていることが分かりました。
議員と弁護士の交流と相互理解が一層進むよう祈念して本稿を終わりとさせていただきます。