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2021.04.12 議員活動

第5回 「再犯防止」から「安全・安心なまちづくり」を考える

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地方自治体が「再犯防止」に取り組むための課題は何か

鈴木〔弁〕 再犯の防止等の推進に関する法律(以下「再犯防止推進法」という)が平成28年12月に施行されました。国は「誰一人取り残さない」社会を実現するために「再犯防止推進計画」を策定しました。この計画では「国と地方との連携」が重点課題の一つとして掲げられています。再犯防止推進法の施行を受けて、地方自治体でも再犯防止推進計画を制定する動きがあります。
滝口〔弁〕 東京都の状況はいかがでしょうか。
鈴木〔弁〕 東京都は再犯防止推進計画を策定しています。
滝口〔弁〕 特別区はいかがでしょうか。
鈴木〔弁〕 策定済みの特別区は、千代田区、豊島区及び中野区の3区のみです。
加藤〔議〕 中野区は、保護司を務める議員がいたこともあり、平成28年に再犯防止推進法が施行され、直ちに区の再犯防止推進計画を策定する機運ができました。そのため東京23区で3区だけというのには驚きました。
大倉たかひろ〔議〕 再犯防止推進計画の策定は、区の内部でも多くの課に関わってくる上、国や都などの関係機関との連携も必要になります。これらを調整していくとなると、そのハードルは低くないものと聞いています。
滝口〔弁〕 中野区は全国に先駆けて「犯罪被害者支援条例」を制定するなど先進的な取組みをしている地方自治体だと思います。中野区が再犯防止推進計画を策定したことで、何か変化はあったのでしょうか。
加藤〔議〕 中野区の再犯防止推進計画は令和2年5月に策定されたばかりですので、具体的に何か変わったという段階ではないように見受けられます。中野区としては、例えば、シンポジウムを開催して、問題意識の掘り起こしをしています。
滝口〔弁〕 地方自治体が「再犯防止」に取り組むための課題は何でしょうか。
本目〔議〕 問題としては、福祉につながるべき人がつながっていないことだろうと思います。「加害者よりも被害者支援が先だ」というのが区民感情でしょうが、「再犯防止」は安全・安心なまちづくりにとって重要です。それこそがみんなが求めているものだと思います。
江口〔議〕 まずは計画を制定しなければ何も先に進みません。行政には何らかの根拠が必要なので、条例や計画がなければなりませんが、それを決めるのは政治の役割です。そうすれば、保護司への連携といった施策もやりやすくなります。

中野区再犯防止推進シンポジウム

滝口〔弁〕 先ほど、中野区で「中野区再犯防止推進シンポジウム」が開催されたとの話がありました。
加藤〔議〕 このシンポジウムは新型コロナウイルス感染症の影響でなかなか開催できませんでしたが、ついに令和3年3月25日に開催する運びとなりました。
滝口〔弁〕 登壇者の発言について教えください。
加藤〔議〕 中島隆信教授(慶應義塾大学)が基調講演に立ち、経済学の観点から、再犯防止、更生保護の必要性を強調しておられました。出所者には「失いたくないもの」をつくることが重要であるとの指摘がありました。
滝口〔弁〕 更生保護の観点からの議論はありましたか。
加藤〔議〕 中島隆信教授、永見光章様(元東京都保護司会連合会会長)、小畑輝海様(更生保護法人両全会理事長)によるパネルディスカッションがありました。出所者の居場所づくりには地域、勤め先の理解が必要ですが、個人情報の取扱いの難しさ、犯罪歴を知られた時点で保護観察者が勤め先を去ってしまう傾向があるなど、多くの課題を参加者と共有しました。
本目〔議〕 シンポジウムは広報のあり方としても大事ですね。

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中野区で開催された「中野区再犯防止推進シンポジウム」

滝口大志(弁護士)

この記事の著者

滝口大志(弁護士)

1982年千葉県生まれ 千葉大学法経学部法学科卒業、九州大学法科大学院修了 弁護士登録(第一東京弁護士会)(新第65期) 主な著書に、『建物明渡請求の事件処理50』(税務経理協会、2016年)など

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