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2020.07.10

コロナ禍と公務の非正規化があぶり出す公共サービス崩壊の危機 〜議会は責任を自覚しているだろうか〜

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2 非正規公務員を襲った二つの悲劇

 誰にも認識されないまま、むしろ「隠された真実」として、地方自治体は質量ともに非正規依存を高めていた。そこに二つの悲劇が襲った。
 一つは、会計年度任用職員制度の導入である。
 同一労働同一賃金原則に基づく非正規公務員の処遇改善をうたい文句に、期末手当を支給することとした会計年度任用職員制度(2020年4月1日施行)だったが、施行段階では、期末手当支給相当分の月例給が引き下げられ、年収さえも維持できないという事態が生じる惨状だった。筆者も協力して実施されたNHK非正規公務員問題取材班の調査(調査期間:2020年2月〜3月、調査対象:全国の県庁所在市、政令市、東京都と東京23区の合計75自治体)では、月給あるいは年収が減る職員がいるかという問いに対し、31自治体(41%)が「毎月の給料が減る職員がいる」と回答。また多くの自治体が「月給が減る分、ボーナスを支給するので年収では変わらない」などとしたものの、10自治体は「年収ベースでも減となる」と回答した。特に東京都と23特別区を除く残りの51自治体(県庁所在市と政令市)では、30自治体、約60%で月例給を減額するという調査結果であった。相対的に財政力のある県庁所在市や政令市でこの状態なのだから、財政規模が小さい自治体の惨状は容易に推測できる。
 収入が増える、報われるとの希望が打ち砕かれたときに、第2の悲劇が襲った。
 コロナウイルス禍である。
 NPO法人官製ワーキングプア研究会が実施し、筆者が結果をとりまとめた「新型コロナウイルスによる公共サービスを担う労働者への影響調査アンケート」(ウェブ調査、調査期間:5月1日〜31日、回答者:235人)では、回答者の53%に当たる125人が何らかの不利益な扱いを受けたと回答し、学童保育、相談支援員、介護福祉職を中心に、「仕事の量や勤務時間が増えた」21%(49人)、「正規職員と異なる取扱い」9%(21人)、「勤務時間の減少と収入減」が9%(20人)、「雇止め、無給の自宅待機」、「無給の特別休暇」が合わせて8%(19人)、「仕事のキャンセル等」が2%(4人)だった。そして、感染予防のために休校・休館等による在宅勤務や休暇が要請される中にあっても「いつもと変わらない勤務」に従事したものが、医療職・保健職を中心に18%(42人)だった。
 コロナは正規・非正規を選ばない。感染リスクの高い現場に非正規公務員を選んで配置しているのは人なのだ。ここに正規・非正規間の処遇格差が加わると、非正規公務員のモチベーションは下がり、離職へのドライブがかかる。「やりがい」だけでは、仕事を続けていけない事態が目の前に迫っている。
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出典: NHK非正規公務員問題取材班「“待遇改善”のはずが月給減? 非正規公務員の新制度とは」(2020年3月24日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200324/k10012346631000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_001(2020年4月10日最終閲覧)
図1 新制度下での非正規公務員の給与 政令市・県庁所在市・東京都・東京23区の状況

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図2 新型コロナウイルスによる仕事上の不利益を受けた人

上林陽治(公益財団法人地方自治総合研究所研究員)

この記事の著者

上林陽治(公益財団法人地方自治総合研究所研究員)

1960年、東京都生まれ。1985年、國學院大學大学院経済学研究科博士課程前期修了、2007年より現職。主要著書に『非正規公務員』(日本評論社、2012年8月)、『非正規公務員という問題』(岩波ブックレット、2013年5月)、『非正規公務員の現在』(日本評論社、2015年11月)など。共著に『自立と依存』(公人社、2015年5月)。

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