議会への報告は十分なのか
滝口 専決処分として債権の放棄が行われたときには、議会は事後的に報告を受けるという仕組みになっています。仮に議会が承認しなかったとしても専決処分の効力は失われませんので、一度専決処分が行われるとその内容どおりに執行されてしまうおそれがあります。
加藤(拓) 専決処分というと、首長に強い権限がある処分に聞こえるかもしれませんが、裁判となる案件に関しては基本的に行政側に一任することで議会との調整がされています。
加藤慶二〔弁〕 議員から見ておかしいと思うことはありませんか。
加藤(拓) 議会では専決処分によって事件が終了した後に報告を受けます。個人情報保護の観点から個別のケースの細かい内容までは分かりませんが、どの案件も基本的には致し方ない結論だったと思います。
裁判での和解に不都合はないのか
滝口 地方自治体が当事者となっている裁判で和解することも「債権の放棄」の一つです。裁判での和解については、議会を通さなくてもよいのでしょうか。
加藤(拓) 議会は公開されていますから、裁判になっている案件を議会で話し合ってしまうと、裁判の相手方に情報が漏れてしまう可能性があります。
鈴木優吾〔弁〕 それだと和解はうまく進まないかもしれません。
加藤(拓) そのような不都合を避けるために、首長には専決処分という権限が与えられているともいえます。専決処分はそういった場合に行われます。
鈴木(優) 裁判の相手方には分からないようにしながら議会がチェックする方法はないのでしょうか。
加藤(拓) 中野区で初めてといわれる「秘密会」で議論したことがあります。秘密会は開いたことすら秘密で、役所の担当のみがそのことを知っています。その件は内容に区の瑕疵(かし)があったこと、また金額も大きかったため、議会の承認が必要であるということで、このような扱いになりました。裁判が終了し、その事実は議事録とともに公開されました。
専決処分とすることが妥当なのか
滝口 そもそも専決処分というのは、議会を開くと間に合わないような緊急性があるときなどに専決処分を認めようという趣旨で設けられたはずです。しかし、実際には、必ずしも緊急性があると思えないようなケースでも専決処分が幅広く行われているようです。例えば、区が原告となって裁判を起こすというケースでは、議会を開くと間に合わないといえるのでしょうか。
加藤(拓) 議会は通年開催ではありません。年に数回しか議決をする機会がありませんので、ある程度の専決処分も致し方ないでしょう。今年は新型コロナウイルスの関係で臨時議会が開かれますが、逆にいうと、そのレベルでないと臨時議会は開かれないのです。