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2017.05.12 政策研究

子育て政策で、人が集まる街づくりを

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東大和市子育て支援部副参事(子ども・子育て支援施策推進担当) 榎本 豊

1 こんな自治体です

 東大和市は、東京の都心から西方35キロメートル圏にあって武蔵野の一角に位置し、北は埼玉県所沢市に隣接しています。市の面積は13.42平方キロメートルで、地勢は武蔵野台地の一端を形成する平坦地です。首都東京のベッドタウンとして発展し、現在、人口約8万6,000人のコンパクトな街です。
 市の特徴として、市域の北部には、10年以上の年月をかけて昭和2年に完成した東京の水がめである多摩湖(村山貯水池)と周辺の狭山丘陵があり、市域の約25%を占めています。多摩湖周辺は、緑豊かな公園や自転車専用道路が整備された桜の名所でもあることから、市民のみならず都民の憩いの場となっています。また、昭和53年に日本で初めて女子フルマラソン大会が開催された場所でもあり、現在も多くのランナーでにぎわっています。

写真1 日本で一番美しい取水塔のある多摩湖(村山貯水池)(第1回東大和市まちフォトコンテスト 最優秀賞作品)写真1 日本で一番美しい取水塔のある多摩湖(村山貯水池)
(第1回東大和市まちフォトコンテスト 最優秀賞作品)

 一方、南部は、昭和13年に軍需工場である東京瓦斯電気工業株式会社立川工場(後の日立航空機株式会社)が建設され、先の戦争では空襲を受けた場所でもあります。この地には、当時の機銃掃射の弾痕などが残る戦災建造物「旧日立航空機株式会社変電所」があります。この戦災建造物は、「西の原爆ドーム 東の変電所」とも呼ばれています。市では、文化財に指定するとともに、保存のために、ふるさと納税を活用し、多くの方々に寄附のご協力を呼びかけています。

写真2 旧日立航空機株式会社変電所(戦災建造物)(第2回東大和市まちフォトコンテスト 優秀賞作品)写真2 旧日立航空機株式会社変電所(戦災建造物)
(第2回東大和市まちフォトコンテスト 優秀賞作品)

2 子育て日本一を目指して

(1)待機児童数の減少
 市では、人口減少社会に対応するために、平成27年から「日本一子育てしやすいまちづくり」を重点施策としています。その結果、保育施設の待機児童数は平成25年が79人、26年が14人、27年が4人、28年が7人と推移し、東京都23区26市の中でも上位に位置しています。

表1 東京都23区26市の待機児童数(平成28年4月1日現在)表1 東京都23区26市の待機児童数(平成28年4月1日現在)

(2)出生数の増加
 平成19年の合計特殊出生率は、全国1.34、東京都1.05に対して、当市は1.47でした。これが、平成27年には、全国1.45、東京都1.24に対し、当市は1.67と大きく数字を伸ばしています。過去10年間、東京都26市の中では、平成19年が1.47で1位、平成24年も1.54で1位でした。また、平成27年の1.67は、東京都23区26市で1位となっています。

表2 東京都23区26市の合計特殊出生率(平成27年)表2 東京都23区26市の合計特殊出生率(平成27年)

(3)充実する子育て支援
 日経BPが運営する情報サイト「日経DUAL」が「共働き子育てしやすい街総合ランキング」を毎年発表しています。このランキングは日本経済新聞社と共同で全国の主要都市162自治体(平成27年度は100自治体)を対象に実施した「自治体の子育て支援制度に関する調査」に基づくものです。
 このランキングで当市は、平成27年が5位、平成28年が4位と順位を伸ばしています。これは、当市の着実な子育て支援への取組みの成果であると考えています。

表3 共働き子育てしやすい街総合ランキング表3 共働き子育てしやすい街総合ランキング

3 様々な子育て支援

(1)待機児童対策
 これまで待機児童対策として、施設が老朽化した認可保育園の増改築・移転に伴う施設整備が3園、小規模保育施設の新規開設が2園、認証保育所の小規模保育施設への移行が1園、幼稚園から認定こども園への移行が2園等の施策を行ってきました。その結果、保育施設の定員は平成24年4月1日現在1,747人であったものが、平成29年4月1日現在2,214人となり、5年間で467人、26.7%の拡大を図りました。
 今後も保育園の移転・増築予定が2園あります。

(2)特色ある子育て支援
 子育て支援事業は、他の自治体の施策を参考に、当市の地域性を活かせるように独自の工夫を加えています。

① 病児・病後児保育室のお迎えサービス
 保育園等に在籍しているお子さんが体調不良となったとき、保護者に代わって、病児・病後児保育室の保育士が、タクシーで保育園等にお迎えに行き、医師の診察後、病児・病後児保育室でお預かりする事業です。保育料は1回2,000円で、送迎のタクシー費用は無料です。定員は最大10人です。

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写真3 病児・病後児保育室の様子写真3 病児・病後児保育室の様子

② 保育コンシェルジュ
 保育コンシェルジュは、一般的には保育園の紹介等が主な業務です。しかし、保育園探しに苦労している世帯はいろいろな事情を抱えている場合もあることから、当市では、母子保健に詳しい保健師資格のある職員と、保育士経験の長い職員の2人を配置し、子どもの健康状態、障害の程度、対応医療機関、母親の心理・精神状態など、保護者に寄り添いながら、その世帯にとってより良い方法を探すことができる人材を配置しています。

③ アナフィラキシーホットラインの開設
 学校や保育園等の教育及び子育て関連施設での食物や虫刺され等によるアレルギー緊急対応時に医師の指示を仰ぐことができる「アナフィラキシーホットライン」を公立昭和病院及び国立病院機構災害医療センターと結んでいます。乳幼児、児童、生徒にアレルギー症状が出た場合、「パルスオキシメーター」を使用して動脈血中酸素飽和度等を測定し、ホットライン専用回線により医師に客観的数字を伝えることで、適切な対応の指示を仰ぐことができます。また、救急車も優先的に受け入れてもらえるため、児童・保護者の安全・安心の向上につながっています。

④ 居宅訪問型保育事業
 重度の障害により集団保育が困難な児童に対し、その居宅において保育を行う事業です。重度障害児の保護者は、将来の不安を抱えているため就労を希望される場合があります。また、保護者の健康管理の点からも、介護から解放される時間が必要とされています。しかし、重度障害児の保育施設はありません。そこで、当市は、社会福祉法人鶴風会 東京小児療育病院に委託して試行的に居宅訪問型保育を実施しています。東京都26市では初めての試みです。

⑤ 休日保育
 就労形態の変化に伴うニーズに対応するため、休日保育を平成28年度から定員13人で開始しました。これにより、両親が休日勤務をする世帯に対する子育て支援も充実が図られました。しかし、休日保育には、児童と両親の関わり方の点で利用方法によっては課題もあります。そこで、当市では、休日保育を利用する週は、必ずその分を平日に家庭で保育する日を事前申告することとし、家庭保育されていることを確認する仕組みとしました。また、虐待やネグレクト等の対応や支援が必要な家庭に対しては、関係機関と連携しながら対応していく体制が整備されています。

⑥ 年末保育
 年末に保護者が仕事等で保育が必要な児童のために、平成27年度から市内で保育需要が最も高い地区の保育園で年末保育を開始しました。他園の園児も利用可能です。

⑦ 保育士採用推進助成金
 保育士確保支援策として、保育園が人材派遣会社から保育士紹介を受ける場合の費用の半分(30万円を上限)を補助しています。これにより、保育士不足の解消を図っています。

⑧ 子育てひろば
 市内の3か所の保育園と子ども家庭支援センターで実施しています。地域の子育て拠点として、地域の子ども家庭支援ネットワークの一翼を担っています。各保育園の敷地内に、独立した部屋として「子育てひろば」を確保し、子育て中の親たちがホッとする場所として、親子で遊んだり、親同士が交流する場所となっています。

⑨ 各種研修・講習会の実施
 保育・教育の質の向上を目的として、関係団体の協力で市内全施設の保育士、養護教諭、幼稚園教諭、学童保育所指導員、給食調理員等を対象に各種研修や講習会を実施しています。東京都保健所と東大和市医師会の協力による食物アレルギー研修(年2回実施)、警察署の協力による防犯対策講習会(年1回実施)、消防署の協力によるAEDの操作方法及び緊急時の心肺蘇生法の救急救命講習会(年1回実施)などを実施しています。

⑩ 学童保育の充実
 市内には公立の学童保育所が11施設あります。平成26年度までは小学3年生までが対象でしたが、平成27年度から小学6年生までに対象を拡大しました。また、平成28年度からは延長保育を開始し、必要とする児童については、午後7時まで利用することができるようになりました。
 今後、平成30年4月には、民間学童保育所の設置を予定しています。定員は公立学童保育所の2施設分に相当するため、定員の大幅な増員が見込まれます。

⑪ ランドセル来館事業
 平成29年4月1日現在、学童保育所の待機児童が249人いるため、補完事業として入所できなかった全ての児童を対象に実施している事業です。受入施設は、小学校の余裕教室や児童館で、放課後に居場所のない児童がいないよう対応しています。また、放課後子ども教室をボランティアの協力を得て市内の小学校全校で実施しています。

⑫ その他
 誕生をお祝いする事業として、子どものネーム刺繍(ししゅう)入りオリジナルタオル、トートバッグ等を組み合わせた「うまべぇ子育て応援パック」を手渡しで配布しています。また、「観光・子育てアプリ~東大和スタイル」という子育て支援サービス情報や、成長記録や予防接種の管理機能を持つアプリケーションを官民学協働により作成し、無料で配信しています。

写真4 うまべぇ子育て応援パック(東大和市観光キャラクター“うまべぇ”をデザインしたもの)写真4 うまべぇ子育て応援パック
(東大和市観光キャラクター“うまべぇ”をデザインしたもの)

写真5 観光・子育てアプリ~東大和スタイル写真5 観光・子育てアプリ~東大和スタイル

4 おわりに

 東大和市は決して財政が豊かな自治体ではありません。しかし、地域の住民・事業者・関係団体等とともに知恵を出し合い、汗を流しながら、市民のニーズに沿った「日本一子育てしやすいまちづくり」を推進しています。このことを広く市内外に発信し、子どもの数が増え、また、多くの若い世帯が当市へ転入し、子どもを生み育て、そして、定住してくれるまちを目指しています。

写真6 市内の公園でくつろぐ家族(第5回東大和市まちフォトコンテスト カシオ賞作品)写真6 市内の公園でくつろぐ家族
(第5回東大和市まちフォトコンテスト カシオ賞作品)

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この記事の著者

榎本 豊

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