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2017.02.27 政策研究

地方創生、その先へ ~地域の未来、農山漁村の未来を考える~

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日本大学経済学部教授 沼尾波子

1 社会経済構造の転換

 日本社会は、大きな変化のときを迎えている。いうまでもなく、その第1は本格的な人口減少と高齢化時代の到来であろう。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の人口は2010年の1億2,806万人から、2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人へと減少することが見込まれている。また、65歳以上人口は2,948万人(2010年)から3,464万人(2060年)へと516万人も増加し、高齢化率は23.0%から39.9%へと上昇するとされる。今後、労働力の確保はもちろんのこと、人口減少による国内市場の規模縮小で、消費の伸びを期待することは難しくなる。他方で、高齢化が進み、年金・医療・介護等の社会保障負担は大きな課題となるだろう。
 第2に、経済の低迷である。1990年代以降、日本のGDP(国内総生産)はおおよそ500兆円のまま横ばいの状態が、四半世紀にわたって続いている。この間、政府は巨額の財政支出を通じて、たび重なる景気対策を実行してきたが、リーマンショックや東日本大震災などの影響も重なり、必ずしも経済成長には結びついていない。
 第3に、格差の拡大が挙げられる。日本では、この四半世紀を通じて、所得格差・資産格差が拡大している。所得が中央値の半分以下となる割合を示した相対的貧困率は16%に達し、2010年のOECD加盟国34か国中でワースト6位という水準にある。特に子どものいる一人親世帯や、高齢単身世帯の貧困率が高い。安定した職と所得を得ることが難しい状況に置かれた人々の暮らしが脅かされている。その背景にあるのが雇用環境の変化である。いわゆる労働者派遣法改正等により、労働者に占める非正規雇用の割合は現在4割近くに及んでいる。男性の非正規雇用者の増大により、給与所得者のうち年間200万円未満の所得しか得ることのできない人々の割合は約24%に達しているのである。
 政府は、少子化対策や子どもの貧困対策などの次世代育成支援への取組みを進めるとともに、景気回復のための成長戦略を掲げ、すべての人が社会で活躍できる「一億総活躍」を掲げる。しかしながら、財政難の中で政府に対応できることには限りもあり、政策の効果は見えてこない。

2 都市―農村関係の変容

 このように日本では、経済の低迷とともに、格差拡大、貧困世帯増大といった課題が生じているが、本稿で取り上げるのは、その状況が、これからの都市・農村の関係にどのような変化をもたらすのかということである。
 20世紀後半の高度経済成長期を経て、日本経済は先進諸国の仲間入りをした。だが、その間、都市と農村の経済格差は拡大し、多くの人々が農村から都市へと流出した。科学技術の進歩を通じた工業化・機械化による生産効率性の拡大により都市は大きく発展したが、農業はこれに追いつかず、農工格差が拡大を見せたのである。これに対し、政府は1961年に国土の均衡ある発展を目指す全国総合開発計画を策定し、その後も条件不利地域への様々な支援策を推進することで、インフラ整備やサービス確保を図ってきた。その結果、平場の農村では都市化が進み、開発による利便性の向上が目指されていく。だが、国土の7割を占める中山間地域では、開発にも限界があり、農工格差の解消には至らなかった。若い世代は、相対的に所得が高く、労働環境もよいとされたホワイトカラーを目指して大学へと進学する。大企業への就職によって、安定した収入と生活保障を手にすることがひとつの成功モデルとされてきた。

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沼尾波子

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