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2016.05.25 議会改革

第1回 地方政治の台頭――行政重視から住民が主体の政治へ――

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3 ウィン・ウィンとしての住民・議会・首長関係

 地方政治は、地域民主主義であり、その成熟には住民の政治・行政参加の拡大がポイントである。もちろん、住民だけが政治・行政を担うことを想定しているわけではない。住民による恒常的な参加が困難というだけではなく、議員間、住民と議員、及び議員と首長等との討議空間が政治には不可欠だからである。また、住民の政治・行政参加の拡大は、議会改革を進め、議会が果たす役割(活動量)を高める。そして、住民の政治・行政参加の拡大と議会の活動量の増大は、首長等の役割(活動量)を増大させる。
 より具体的にいえば、次のようになろう。今日、住民の要望や提言を中央集権制を理由として拒絶するわけにはいかなくなっている。住民の監視・提言の機会が増大し、日常化すれば、議会や首長ともそれに応えなければならず、そのためには改革が必要になる。また、議会の政策提言・監視能力の向上は、首長等の政策能力を高めるだけではなく、住民もそれを踏まえて議論できるようになり、地域民主主義に資するものである。さらに、首長等の政策能力の向上は、議会との緊張関係を増大させ議会改革を進める起爆剤となり、住民も同様にその水準から出発できる。地方政治は完結するものではない。また、住民自治を推進する運動は制度化されると形骸化する傾向を持つが、それを意識しつつ住民自治のさらなるバージョンアップを求める運動が再生される。まさに、「運動化と制度化の無窮運動」を担う主体が動きやすい環境(地域経営の自由度の増大)が整備されてきている(神原 2009:121-123、 篠原 1977:134)。
 なお、住民、議会・議員、首長等の三者関係はゼロ・サム(一方の勝利)ではなく、ウィン・ウィン(三者の勝利=地域協働)の関係として捉えられるし、その方向での地域経営を模索することが必要である。
 まさに、二元的代表制=機関競争主義の作動である。代表制の改革、代表制と住民とを結ぶチャンネルの改革、住民参加の手法の進展、進展した住民自治の保障の制度化、といった論点を概観しているのが、下記の表である。詳細は本連載で明らかにしていくが、ここでは住民自治の進展があることを確認しておけば事足りる。

表 住民自治の新展開表 住民自治の新展開

江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士(政治学、中央大学)。 1956年東京都生まれ。1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 三重県議会議会改革諮問会議会長、鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、第29次・第30次地方制度調査会委員等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員など。 主な著書に、『続 自治体議会学』(仮タイトル)(ぎょうせい(近刊))『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい、2012年)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)連載中。

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