協働の概念はひとつではない
第3部としては、パネルディスカッションが、月刊「ガバナンス」編集長・千葉茂明氏をコーディネーターとして行われた。冒頭、千葉氏からは、「議会事務局職員が実名で論文を書くようになり、一個人としても責任を持って発言することが住民自治を高める」との持論が展開された。
ディスカッションでは、各研究会のパネリストが「議員と事務局の協働の在り方、事務局は議員とどう関わるのか?」、「議会の信頼をどう確保するか(特に、議会の見える化、政務活動費に係る事務局の役割に関して)」という2つの論点に関して、各自の意見を述べた。
いわて議会事務局研究会の長内氏は、「最初は執行部のスパイであったが、執行部と議会が情報を共有しなければ協働は成立せず、事務局職員も立ち位置を変える覚悟が必要」とした。
議会事務局実務研究会の市川市議会事務局議事課主査・野村憲一氏は、「協働の概念はひとつではないが、政と官の役割分担はある程度絶対的なもので、それを踏まえたものであるべきである。事務局はメニューをいつでも提示できるよう備えることが仕事。しっかりと議案審議をする意識を議員に持ってもらい、目覚めてもらえるようプランニングしておくことが必要」と述べた。
「脱・指示待ち」、「脱・ひとごと意識」、「脱・思い込み」
議会事務局研究会の筆者からは、「協働関係の成立は対等性を基本とするため、議長以外の議員とは法的に上下関係にはない議会でこそ、公選職と任命職の協働関係は成立する。その必要条件としては、最終決定できる議員には、局職員の意見に耳を貸す懐の深さ、職員には『脱・指示待ち職員』、『脱・ひとごと意識』、『脱・思い込み』という意識改革が重要。また、大津市議会では、『先例』、『申し合わせ』などの内部ルールが市民にも知り得るよう、議会の例規構成を抜本的に変えることや、議員個人の賛否態度や一般質問の内容をICTの活用によって、議会の見える化を図っていること、公金の支出ルールに性善説に立った運用などあり得ないことから、議会局が政務活動費については監視機関の役割を果たしていることによって、市民からの議会に対する信頼の確保に資している」ことなどについて語った。
次に、コメンテーターとして伊万里市議会議長・盛泰子氏、山梨学院大学法学部教授・江藤俊昭氏が意見を述べた。
盛氏からは、「議会を守る意識と強くする意識を事務局には持ってもらいたい。もちろん、執行部からの反発も議員からの反発もあり、覚悟が必要ではある。私が議長になってからは、何かあれば議長の立場で支援するので見直しを進めてほしいと言っている」と主張。
江藤氏からは、「議会改革の成果を、住民福祉の向上のために、どう位置づけるか? 受動的な議会事務局から脱却し、チーム議会のために議会事務局をどう位置づけるか? 理論的に議員と議会事務局職員との協働は成り立たないとの意見もあるが、実態的な協働論として議論すべきで、チーム議会として議員に提言するところから始めればよい」とされた。
パネルディスカッションの後半は、会場の参加者からの意見に基づいて論じられた。
「少数会派との接し方」、「事務局職員人事に関して、議長、議員、職員それぞれの立場からの考え」、「人が代わったときの議会改革の継続に必要なこと」、「議員を本気にさせる方法論」などについて議論され、「改革を逆戻りさせないシステムづくり」や「外部組織である研究会を発展させることが有効な対応策」との共通理解が得られた。
議論の最後に、今後の展望として江藤氏が、「それぞれの研究会の活動の広がりに期待するとともに、執行機関に戻るときの人事のアフターケアの重要性、議会図書室の連携、強化の必要性」にも触れて議論を総括した。