地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2016.01.15 議会改革

政策のベクトルを若い世代に ~議会が取り組む地域課題解決型キャリア教育〜

LINEで送る

地域課題解決型キャリア教育支援事業を始めた理由

 議長時代、私の議会運営のモットーは、気づき(アイデア)→ひらめき(インスピレーション)→行動力(アクティビティ)→相互理解(コミュニケーション)→実施(インプリメンテーション)→規定(レギュレーション)でした。つまり、気づいたこと、ひらめいたことは何でもチャレンジしてみて、それが成功した場合、その事業を条例や規則などで規定していくことが大切であると考えています。
 2年間議長を務める間に様々なチャレンジをしてきましたが、中でも県立可児高校と行った地域課題懇談会(地域課題解決型キャリア教育支援事業)は大きな成果を上げつつあります。議長1年目初の定例会(9月議会)と議会報告会が無事終わった2013年11月末、議会基本条例の条文を暗記しようと読み込んでいたところ、第3条にある「市民の多様な意見を的確に把握し、これを市政に反映させるために必要な政策提言、政策立案等を行うこと」、「市民の意思を尊重するため、市民参加の機会拡充に努め、情報公開を行うとともに、議会の議決及び運営に対して、その経緯及び理由を説明する責任を果たすこと」の2項が目に留まりました。
 議会基本条例では「市内に居住し、通勤し、通学する個人又は市内で活動する団体」を『市民』と定義しています。そこで、「議会や行政は20歳以下の市民の声をどこで政策に取り入れているのか」という疑問が湧き、議会事務局に調査を依頼したところ、可児高校でのキャリア教育の取組の話を聞き、すぐに可児高校の校長先生と担当の浦崎先生と面談しました。そして双方の思いが一致して、議会の支援事業がスタートしました。
 翌2014年1月には、全議員を対象として浦崎先生が可児高校の取組を説明する研修を開催、2月に本会議場で高校生議会とIPE(多職種間連携教育)手法を活用した意見交換を実施しました。その後も地域課題懇談会を可児医師会、可児金融業協会と実施し、対象校を可児工業高校、東濃実業高校(御嵩町)へと拡大を図りました。

金融協会と共催した地域課題懇談会の様子。金融協会と共催した地域課題懇談会の様子。

 さらに、議会中心に進める事業ではどこかで限界が来ると考え、その課題を解決するため浦崎先生とともに、可児高校OBに白羽の矢を立て、『NPO縁塾』を立ち上げました。その後、縁塾が中心となりコーディネートするエンリッチプロジェクトがスタートし、2015年の夏休みに「夏のオープンエンリッチプロジェクト2015」が開催されました。期間中71の講座が開かれ、延べ400人の生徒が参加する大プロジェクトとなり、学校は1年生全員に参加を義務付けました。可児市の職員や隣町の職員、文化創造センターの館長、国際交流協会の事務局長、可児高校OBの現役大学生など、様々な講師陣による種々の講座が開催され、生徒たちのやる気スイッチを刺激しました。今後も本気の大人と若い世代が交流する場の創出に力を入れていきます。

新たな取組――高校への出前講座

 2015年12月10日に、可児市議会地域課題懇談会出前講座 IN 可児高校「18歳選挙権をきっかけに政治と選挙を考える」と題した出前講座を行いました。主催は可児市議会の議会改革特別委員会で、場所は可児高校会議室で行いました。生徒35人のほか、市長をはじめ選挙管理委員会職員が5人、NPO縁塾会員5人、可児市議会議員17人が参加しました。

出前講座で筆者は議会を代表して「地方議会から見た政治の役割」について講演をした。出前講座で筆者は議会を代表して「地方議会から見た政治の役割」について講演をした。

 まず冒頭に可児市長が「政治と選挙にどう向き合うか」と題した講演をし、筆者からは「地方議会から見た政治の役割」と題し、国と地方の仕組みの違い、年代別投票率や選挙へ行くことの意義などについて話をしました。その後、9つの班に分かれ、「どうしたら選挙に行くのか?」をテーマにグループディスカッションを行い、個人的な意思とは関係なく生徒を「行く派」、「行かない派」に分け、それぞれの立場から意見を出し合い、行くにはどうしたらいいかの結論付けをし、各班で発表し問題を共有しました。生徒からは「学校でも投票できるようにする」、「国や地方の選挙の投票日を同じ日にすれば、投票率が上がり、経費も削減できる」といった意見が発表されました。中には「若者の考えを反映させるため、年代別の人口に応じて1票に格差をつける」との提案もありました。

出前講座では高校生と議員や職員等がグループディスカッションを行った。出前講座では高校生と議員や職員等がグループディスカッションを行った。

高校生自ら、ディスカッションの内容を発表した。高校生自ら、ディスカッションの内容を発表した。

 参加した生徒のアンケートでは、『視野が広がり、理解が深まり、参加してよかった』という設問に対しての回答では、「とてもあてはまる」が21、「あてはまる」が11、「どちらかというとあてはまる」が4、「まったくあてはまらない」・「あてはまらない」・「どちらかというとあてはまらない」はゼロでした。また、『社会・政治・選挙が、より身近に感じられるようになった』という設問に対しては、「とてもあてはまる」が11、「あてはまる」が19、「どちらかというとあてはまる」は6で、否定的な回答はゼロでした。さらに、『自分の将来や日頃の生活について、より深く考えるヒントになった』については、「とてもあてはまる」が17、「あてはまる」が12、「どちらかというとあてはまる」が7で、これについても否定的な回答はゼロという結果となりました。
 ここで、参加した生徒の感想文を紹介します。
 「今まで選挙なんてまだ先の話だからと考えようともしませんでした。講座に参加してみて、市長さんや可児の議員さんたちと話し、どうしたら選挙に行くのか考えました。いろいろな案が出て話合いも深まりました。しかし、出た案が実行に移るのは、まだまだ先だと思います。これを機会に選挙について、これからの未来について考え直したいと思います。」
 今後は、出前講座を可児市の各高校で開催することを視野に入れて活動します。また2016年2月10日に開催を予定している高校生議会では、高校生が考え、そして提案する条例づくりを進めていきたいと考えています。

2015年に開催した高校生議会の様子。2015年に開催した高校生議会の様子。

川上文浩

この記事の著者

川上文浩

1960年生まれ。国際医学総合技術学院放射線科卒、診療放射線技師。現在は有限会社ファインフード代表取締役。一般社団法人可児青年会議所25代理事長。2007年可児市議会議員初当選、現在3期目。2期目で議長を2年間務める(再任)。現在、予算決算委員長、議会改革特別委員長。

Copyright © DAI-ICHI HOKI co.ltd. All Rights Reserved.

印刷する

今日は何の日?

2024年10 4

世界初の人工衛星「スプートニク1号」打上(昭和32年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る