地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2015.03.10 議員活動

子育て世代の議会参加~ありのままの働く母として~

LINEで送る

命、人権の問題として考える

 2014年6月に東京都議会で女性議員に対する、いわゆるセクハラやじ問題が発生して以来、新聞・テレビなど多くのメディアが女性政治家に対する公務・政務でのセクハラの実情を取り上げ、そのあり方が顧みられたことは記憶に新しい。
 現在、地方議会の女性議員数は増加傾向の一途にあり、女性議員の比率が最も高い特別区では、すでに4分の1が女性議員となっている。同様に、25~30歳未満の若年議員の割合も増加傾向にある。今までは、女性議員が在任期間中に妊娠出産するという実例が少なかったが、今後は制度整備の必要性も論じられるようになるだろう。
 新宿区では、2005年に、議員任期中の出産に伴う議会等公務の欠席に対し、特別職公務員(区議会議員)も、新宿区職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例、同施行規則を援用し、同様の扱いとすることを議会が認めることで女性議員が産休を取得した実績があった。私は2014年11月にそれを履行し、産休を新宿区職員と同等の、産前8週、産後8週取得した。
 他の地方議会に目を向けてみると、各議会所属議員の妊娠出産のたびに、「議会単体では先例がない」などとして、妊産婦議員に対して、法的にも一般観念的に見ても不平等な処遇がなされていることも多い。例えば、望まぬ臨月公務従事・早期復職の助長等がその一例である。マタニティ・ハラスメント(マタハラ)は母子の生命に危害を及ぼす場合もある。議員であろうとなかろうと、母体・母子保護の観点に立って、全ての妊産婦は平等に扱われるべきである。これはフェミニズムの問題ではなく、命の問題・人権の問題なのだ。

政策をもっと広めたい!マニフェスト大賞への応募

 産休取得後、自身の任期中における出産に伴う議会の欠席と産休の取得事例が、他の議会に比べ全国的にもまれ、かつ先進的であったことが分かり、取得事実を公表し、マニフェスト大賞への応募を決めた。導入実例を共有化し、制度化を促すことで、全国の女性議員はもちろん、企業の女性社員にも、「新宿区議会でできたならうちでも」と主張する根拠にしてもらえたらと願いを込めた応募であった。そして、ありがたいことに、最優秀政策提言賞をいただいた。
 このたびのマニフェスト大賞の受賞は、新宿区議会の全ての議員、区長をはじめとする職員の皆さん、そして何より新宿区民の皆さんの深いご理解に対しいただいた賞であると思っている。ここに改めて感謝の意を表したい。
 今回の産休取得は前述のとおり、「区議の産休も区職員と同じ規定にする」だけと、いたってシンプルである。しかし、これには、2つの利点がある。
 ひとつは、区職と基準を同一にしたことにより、有権者への説明責任が明確になったという点。もうひとつは、導入障壁の低さだ。新宿区議会において、産休取得のために議会規則の改正は行ってはいない。議運理事会で、「出産」を欠席理由の「事故」のひとつとして認めただけである。つまり、「制度ありき」ではなく、多様性を認め、相手の立場を尊重できる議会であったからこそ、制度運用が後からついてきた結果である。どこの自治体でも明日から導入可能であるといえよう。最も重要なのは、考え方や立場の違う一緒に働く者同士の「共感」とコミュニケーションではないだろうか。法整備や規則の成文化以上に、人が人と関わって働く上で、最も欠かすことのできない要素であると感じている。
 このように、今回私が産休取得に当たって使った産休制度は、議会のメンバーの気持ちひとつで、他の自治体の議会でも取り入れていただくことが可能である。新宿区以外の自治体において、これを参考に、又はこれが採用されることにより、ゆくゆくは、真の意味で「政策」になることを心から願っている。

鈴木ひろみ

この記事の著者

鈴木ひろみ

新宿区議会議員 1983年生まれ。現職最年少の新宿区議会議員(民主党)。2011年初当選後、任期中に妊娠、出産を経験し、自らも子育てと仕事の両立を目指しながら政治活動を行う。第9回マニフェスト大賞、政策提言賞優秀賞を受賞。人権問題、自殺対策、防災、子育て支援に特に力を注ぐ。

Copyright © DAI-ICHI HOKI co.ltd. All Rights Reserved.

印刷する

今日は何の日?

2024年 519

日本で初めてボクシングの世界チャンピオン(白井義男)誕生(1952)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る