2023.03.10
市民協働による橋のセルフメンテナンスモデル ─福島県平田村を例に─
5 橋のセルフメンテナンスの実施
名付け親プロジェクトや歯磨きプロジェクトを通して、平田村の住民の橋に対する意識を醸成しつつ、もともとある平田村の地域力を生かして、地域住民で橋を守る仕組みである「橋のセルフメンテナンス」を構築した。「橋のセルフメンテナンス」は「地域の橋を、その利用者である住民や管理者らが日常的に点検し、簡易なメンテナンスを行うことにより、健全な状態に維持すること」と定義している。具体的には、簡易橋梁(きょうりょう)点検チェックシートを用いて住民や管理者等が橋面上の簡易点検を行い、橋マップを通じて橋の歯磨きの必要度や橋梁に関する情報を住民へ公開・共有することで、住民による橋の歯磨きにつなげるというものである。このセルフメンテナンスサイクルがうまく機能することで、5年に1回の定期点検だけでは収集しきれない日常の橋梁の状態を把握し(図1)、定期点検の間に起こった緊急性の高い損傷に早期に気がつくことができ、さらに橋面上をきれいに保ち排水を常に確保することで、長寿命化を図ることができると考えた。
出典:浅野和香奈「市民協働と人材育成に立脚した橋のセルフメンテナンスモデルの構築に関する実践研究」(博士論文、2022年)
図1 平田村における橋のセルフメンテナンス
(1)簡易橋梁点検チェックシートの構築
橋の知識がない住民が橋梁の点検を行うには、安全に点検できる範囲でポイントが絞られた、具体的で分かりやすいツールを構築する必要があると考え、「簡易橋梁点検チェックシート」(図2)を作成した。視覚的に難しさや堅さを感じさせないツールであること、A4判1枚に収まるように構築すること、普段の橋の利用方法から逸脱しなくとも点検できる橋面上の部材のみとすることを意識した。点検項目は文章ではなく、「変形」、「錆(さび)」等の単語に分け、それぞれの損傷や変状に対して、「有」、「無」を記入し、「有」の場合は「部分的」、「広範囲」の程度も記入することで、現状の把握ができるようにした。
出典:みんなで守る。橋のメンテナンスネット
図2 簡易橋梁点検チェックシート