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2023.02.27 政策研究

水道インフラの諸問題

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 さらに職員の技量アップを図りながら有収率を向上させた。岩手中部水道企業団では、管路の更新率を上げようと統合当初に更新事業を増やしたが、有収率は上がらなかった。有収率とは、給水する水量と料金として収入のあった水量との比率だ。
1 有収率が低い場合、主として漏水が原因だ。そのほかに水道メーターの不調、公共用水、消防用水の利用量の多さなどが考えられるが、昨今では老朽化管から漏水し、浄水場でつくった水が家庭まで届かないケースが主な要因だ。水をつくるまでにかかるあらゆるコストが無駄になっている。有収率が上がらない原因は、工事のしやすい管路が更新される一方、他機関との協議、交通遮断などが必要な中心市街地の漏水多発管は手付かずだったことにあった。
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出典:筆者作成
表 管路更新率と有収率の関係

 この点を改めると、更新投資額が下がったにもかかわらず、2015年から2018年の3年間で有収率が6.2%上がった。有収率が上がると、それまで漏水していた水が有効に使用される。岩手中部水道企業団では有収率が上がった結果、配水量が日量7,000トン減り、結果として6,000トンを供給する新浄水場建設を30億円かけて建設する計画が白紙に戻った。前述の施設削減によるコストダウンに加え、漏水量の削減、先進技術の導入などにより、総額で約92億円の将来投資が削減できた。
 コンセッション方式を導入した浜松市の下水道事業では、コンセッション期間の20年間のVFM(バリュー・フォー・マネー)を86億円と試算しているが、岩手中部はそれを上回る将来投資の削減を実現した。広域化とダウンサイジングの効果を示しているといえる。

橋本淳司 東京財団政策研究所研究主幹/「未来の水ビジョンプログラム」

この記事の著者

橋本淳司 東京財団政策研究所研究主幹/「未来の水ビジョンプログラム」

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表。武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹。NPO法人地域水道支援センター理事。水問題についてメディアで発信。「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」、「東洋経済オンライン2021 ニューウェーブ賞」など受賞。また、学校での探究的・協働的な学び、自治体、企業の水に関する普及啓発活動をサポート。主な著書に『水辺のワンダー 世界を旅して未来を考えた』『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)、『水道民営化で水はどう変わるか』(岩波書店)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎)など。

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