一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアム理事長 松本玲央奈
1 はじめに
月経に伴う諸症状や、不妊治療・妊活、更年期の諸症状といった女性の健康課題に、社会としてどう取り組んでいくべきかについて、我が国ではこれまで必ずしも広く議論されていなかった。
しかし、ここ10年ほどの間に、欧米を中心に、女性の健康課題を解決することを目的とした「フェムテック」と呼ばれる新しい製品・サービスが次々と世に出ており、我が国でも、この2~3年で、「フェムテック」を通して女性の健康課題に取り組もうとするスタートアップ企業が急増し、その分野への投資も盛んになりつつある。
国もこの動向に注目し始め、昨年は、国会議員有志による議員連盟が発足したほか、関係省庁も、女性活躍・男女共同参画を推進するための方策として、また、新たな産業分野としてとらえ、「フェムテック」に関する実態調査や、制度上の対応を検討するといった動きが出てきている。
本稿では、この「フェムテック」とは何か、また、「フェムテック」をめぐる国や産業界の動きについてご紹介したい。
2 女性の健康課題に関心が集まっている
近年、女性の健康課題として、大きく分けて①月経に伴う症状、②不妊治療・妊活、③更年期における諸症状、の三つの分野が注目され、それらを背景に、女性の社会的・経済的活動に支障が生じたり、会社において昇進を諦めたり、離職を余儀なくされたりする等の課題があることに関心が集まりつつある。
そして、これらの課題解決に向けて、民間企業による製品・サービスの開発・提供、女性従業員を雇用する事業主の取組みが活発になってきた。
日本医療政策機構によると、月経前に生じるPMS(月経前症候群)及び月経に伴う諸症状のために、半数の女性が、元気なときに比べて働くパフォーマンスが半分以下になると回答したとの報告があり(1)、このように働く女性のパフォーマンスが低下することによる経済的損失額は約4,900億円と見込まれている(2)。
また、我が国では、5.5組に1組の夫婦が不妊治療を受けている、又は受けたことがあるとされており(3)、不妊治療を経験した女性の23%が離職を経験し(4)、11%が仕事との両立が困難であるために不妊治療を断念した(5)とされている。
また、更年期に伴う症状により、半数の女性が、元気なときに比べて働くパフォーマンスが半分以下になると回答したとの報告もある(6)。