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2020.11.10 議員活動

第3回 中央防波堤埋立地の帰属を巡る江東区・大田区の紛争を考える

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弁護士 中川洋子

「地方自治勉強会」について

 この勉強会では、議員と弁護士とが、裁判例や条例などを題材にして、それぞれの視点からざっくばらんに意見交換をしています。本稿では、勉強会での議論の様子をご覧いただければと思います。発言者については、議員には〔議〕、弁護士には〔弁〕をそれぞれ付しています。
 なお、勉強会は自由な意見交換の場であり、何らかの会派、党派としての見解を述べるものではありません。

〔今回の勉強会の参加者(五十音順)〕
石田慎吾(元品川区議会議員)
加藤拓磨(中野区議会議員)
上村遥奈(弁護士・第一東京弁護士会・弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所)
重松佳幸(江東区議会議員)
鈴木克哉(弁護士・第一東京弁護士会・半蔵門総合法律事務所)
滝口大志(弁護士・第一東京弁護士会・丸の内仲通り法律事務所)
千葉貴仁(弁護士・第一東京弁護士会・日比谷ステーション法律事務所)
中川洋子(弁護士・第一東京弁護士会・榎本・藤本総合法律事務所)
松尾浩順(弁護士・第一東京弁護士会・シグマ麹町法律事務所)
渡邉健太郎(弁護士・第一東京弁護士会・堀法律事務所)
 

境界確定を巡る紛争について

中川洋子〔弁〕 今回のテーマは、「地方自治法に基づく境界確定請求」です。記憶に新しい、中央防波堤埋立地の帰属を巡る江東区・大田区の紛争を取り上げます。この紛争はオリンピック前に解決しようという機運の中で、最終的に裁判所が境界を判断しました(東京地判令和元年9月20日判時2442号38頁)。
滝口大志〔弁〕 中央防波堤埋立地といえば、オリンピックの会場地ですね。海の森クロスカントリーコースと海の森水上競技場があります。
中川〔弁〕 写真を見ると膨大な空間が広がっていることがよく分かります。

 

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【中央防波堤埋立地】
出典: 江東区ホームページ「中央防波堤埋立地の帰属について」(https://www.city.koto.lg.jp/010121/kuse/shisaku/torikumi/20191007.html)

滝口〔弁〕 民民の境界であったり、官民の境界であったり、土地の境界を巡る紛争というのはそう珍しいことではありません。しかし、地方自治体同士で境界を争うというのは珍しいと思います。どのような手続で争うことになるのでしょうか。
中川〔弁〕 市町村の境界に関し争論がある場合、まずは調停(地方自治法9条1項)、都道府県知事による裁定(地方自治法9条2項)による解決を図ることになります。都道府県知事が裁定に適しないと認めたときなどには、関係市町村は、裁判所に市町村の境界の確定の訴を提起することができるという仕組みです(地方自治法9条9項)。

調停は成立しなかったのか

上村遥奈〔弁〕 今回取り上げる江東区・大田区の紛争でも、まず調停が行われていると思いますが、当該調停では、何か調停案が示されたでしょうか。
中川〔弁〕 面積比でいいますと、「江東区86.2%対大田区13.8%」という内容の調停案が示されました。
上村〔弁〕 この調停案では成立しなかったのでしょうか。
中川〔弁〕 江東区は調停案を受諾しましたが、大田区が受諾せず、地方自治法9条9項の規定による境界の確定の訴が提起されるに至りました。

中川洋子(弁護士)

この記事の著者

中川洋子(弁護士)

東京大学法科大学院修了、2015年弁護士登録(第一東京弁護士会)。経営法曹会議会員。第一東京弁護士会労働法制委員会委員。著書・論文として「多様化する労働契約における人事評価の法律実務」(労働開発研究会・共著)、「現在の制度検証から労働組合との交渉まで 制度変更時のプロセスに即した実務課題と紛争予防の視点」(中央経済社「ビジネス法務」2020.12)。

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