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2020.03.25 議会運営

【続・緊急寄稿】緊急事態にも議会として動ける、そして動かなければならない!~議会による検証・提言は行政対応を豊富化

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議会による行政対応に対する検証と提言による行政対応の豊富化

 議会には、危機状況下で実施された自治体の政策を検証することが課せられている。同時に、継続する危機状況の下で(局面は移動し多様な問題が噴出することを認識しながら)、議会として多様な住民の声を聞き、地域状況を把握して検証と政策提言することも必要となっている。
 いずれも、地域政策体系とそれを推進する組織・手続きを問うことになる。治療薬の研究は民間や国の研究機関等に委ねざるを得ない。感染拡大の防止・治療への対応だけではなく問題は連鎖し、対応は複眼的になる。地域政策体系として、感染防止策と医療体制整備の政策、住民生活の負荷の軽減政策、そして経済対策といった複眼的思考とその実践が必要である。組織・手続きについては、危機管理部門の体制や、決定の際の手続きを念頭においている。

① 行政対応の検証
 行政対応の検証には、政策とその策定の手続きの妥当性が含まれる。まず政策そのものについては、感染拡大の押さえ込みを軸とする。ただし、これは単に医療の充実・連携にとどまらない。これらはまた、問題の連鎖を引き起こす。
 たとえば、学校の休校措置は、安倍首相から要請されていた。小中高、特別支援学校の休校措置、期日の妥当性等が問われる。休校した場合の学業、給食の代替措置はどの程度議論したのか。学校休校だけではなく、児童館・公立図書館なども休館となる中で、休校の際の「居場所」の設定(子ども食堂の支援等)を検討したのか。休暇をとらざるを得ない保護者の補償問題について自治体としてどう考えるのか。この事例をとっても、1つの対応は、問題の連鎖を引き起こす。したがって、感染拡大の防止のための対応であっても、規模だけではなく連鎖的問題が生じ、対応への検証は容易ではない。
 また、その対応組織の作動の妥当性、危機管理部門の対応も今後検証する必要がある。前述の休校措置は教育委員会事項である。ほとんどの自治体で実施された休校について、教育委員会はどのような議論をしたのであろうか。専門家の意見をどの程度参考にしたのか。どの程度児童、教員や保護者当の声が活かされたのか(こどもの権利条例制定自治体の対応も問われる)。そして、教育委員会の議論において、児童等をめぐる連鎖的問題の発生とその対応についてどの程度議論して決断したのであろうか。
 問題は連鎖しているので検証も容易ではない。とはいえ、今後のためにも地域政策体系と組織の作動についての検証が、議会としても不可欠である。

② 今後の対応の提言・提案
 すでに指摘した対応を念頭において、新たに生起する問題群に対して、議員・議会として提案することは必要である。議員は、議会の構成員であるとともに、地域リーダーである。地域の現状を踏まえた提案が可能である。「地域エゴ」と揶揄される場合もあるが、地域の問題抜きに地域政策は語れない。また、議員は自治体を超えた議員間ネットワークを有している。それらの情報を自治体の対応に活かすことは有用である。
 地震や豪雨といった災害時と同様に、個々の議員が行政に働きかけることは、行政の停滞を招く。そこで、委員会等によって議員の情報や提案を議会として受け止め集約し、行政に提言するべきである。

危機状況に対応する議会の創造

 議会が政策体系を意識し検証や政策提言を行うための手法を模索したい。平常時(通常状況)では、すでに「議会からの政策サイクル」が開発され、いくつかの議会で実践されている。危機状況での開発である。議会は、問題意識を有して調査研究することが必要である。これらを進めるには、特別委員会の設置が必要である。

① 行政の対応への評価、今後の対応を提言する特別委員会設置
 地域政策体系や組織・手続きへの議会の検証、および提言を行うには、議会として特別委員会等を設置して主題的に扱う必要がある。
② 議会運営の検証
 第1回(3月)定例会(定例月会)の対応の検証を行う(一般質問辞退等)。上記①の行政対応への評価・提言をする特別委員会で行ってもよい。議会版BCPにおいて、「インフルエンザ」が対象となっている自治体もあるが(滋賀県大津市)、そうでない議会では、今後はこうしたウィルスへの対応を議会版BCPに組み込むことが必要となっている。
 たとえば、議員は「議事堂に参集」することになっている(全国三議長会のそれぞれの標準会議規則1)。庁舎、議事堂が残存している場合でも(4)、例外的に換気のよい場所に移動して開催することを規定することも必要だ(残存していない場合は当然規定)(5)。この場合、傍聴者の権利を阻害しないルール整備が不可欠である(周知徹底)。
 また、行政組織への検証・提言にまで及ぶ。なお、前述のように、休校を決めるのは教育委員会である。委員人事に同意するのは議会である。ここでどのような議論があったかを検証するとともに、そもそも教育委員の同意基準を議会として設定しているかどうかも問われる。これを機会に、行政委員会・委員の同意・選挙基準を設定してほしい。
③ 住民・専門家の意向を聞きながら行う
 行政の対応や議会の対応、また問題状況について住民や経済界、NPOからヒアリングを行うべきである。それらの対応の検証にあたっては、専門家の意見収集は不可欠である。

江藤俊昭(山梨学院大学法学部政治行政学科・大学院社会科学研究科教授)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学法学部政治行政学科・大学院社会科学研究科教授)

山梨学院大学法学部政治行政学科・大学院社会科学研究科教授  博士(政治学、中央大学) 1956年東京都生まれ。 1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、山梨県経済財政会議委員、第29次・第30次地方制度調査会委員(内閣府)、総務省「町村議会のあり方に関する研究会」委員、全国町村議会議長会「議員報酬等のあり方に関する研究会」委員長、等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、全国町村議会議長会特別表彰審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員、など。 主な著書に、『議員のなり手不足問題の深刻化を乗り越えて』(公人の友社)『議会改革の第2ステージ―信頼される議会づくりへ』(ぎょうせい)『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)、『議員NAVI』(第一法規)連載中。

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