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2019.02.25 政策研究

「議員の役割を果たして」 ─大槌町旧役場庁舎問題から見る議会の役割─

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議論不十分なまま、各議員に判断委ねる

 議会は2016年4月、旧庁舎について、住民との意見交換会を町内17か所で開催。11月には専門家を招き、協議を行いました。ただ、意見交換会の参加者は高齢者が多く、参加人数は平均9人ほど。専門家を交えた協議は2~3時間程度で、専門家の意見を聞いたり、各議員が考えを示したりする程度のものでした。
 平野町長は11月、解体予算案の提出を再度見送る方針を示しました。議会はその翌月、解体よりも復興事業を優先させるよう求める意見書を平野町長に提出。今後は各議員の判断に委ねることにしました。

旧庁舎解体、当初予算案に組み込まれず

 それから1年。議会では、旧庁舎についての議論はなされませんでした。そして2017年12月の議会初日、平野町長は、「来年3月定例会に(旧庁舎)解体費用を補正予算として計上したい」と述べました。
 新年度当初予算案がまだできていない段階で、新年度の補正予算案に言及すること自体、異例なことです。解体予算案を当初予算案に組み込まない理由について、平野町長は、「当初予算全体を否決されないため」と述べました。
 補正予算は通常、当初予算成立後に発生した災害など、やむを得ない場合に組み込まれますが、議会はそれを問題視しませんでした。当初予算の中にある議案に反対するのであれば、減額修正を行えばいいだけの話ですが、町も議会も、「当初予算を否決するのは大変なこと」という考えから、「補正予算案として別出しすることで、しっかり審議すべきだ」というゆがんだ考えになったようです。
 県外の識者は、「解体予算は補正予算で計上する内容ではない。しかも、新年度分として3月議会に計上するのは意味不明」、「賛否が分かれるような重大議案こそ、当初予算に位置付けるべきだ。町当局と議会のなれ合いではないか」と指摘しました。

議会の意見書、自ら踏みにじる

 平野町長が2018年3月議会に旧庁舎解体予算案を提出すると表明したことを受け、小松則明議長は、「問題の再検討はしない」と述べました。町議会が2015年と2016年の二度にわたり提出した意見書の内容はほとんど満たされていませんでしたが、議会の総意で提出した意見書を、議会は自ら踏みにじりました。

Ooduchi_hyo01 表1 町議会が2015年と2016年に提出した意見書の概要

住民有志、「おおづちの未来と命を考える会」を設立

 旧庁舎解体に危機感を抱いた住民有志は2018年2月10日、住民団体「おおづちの未来と命を考える会」を設立しました。髙橋英悟吉祥寺住職を代表とし、旧庁舎保存を訴えた前町長の碇川豊氏が顧問に、2017年3月まで町議会事務局長を務めた佐々木健氏が事務局長に就任。会は、「解体予算の提案よりも、議会の意見書への対応が最優先されるべきだ」と訴えました。

Ooduchi_ph04 住民団体「おおづちの未来と命を考える会」の設立集会。(左から)前町長の碇川豊氏、吉祥寺住職の髙橋英悟氏、前町議会事務局長の佐々木健氏=2018年2月10日

菊池由貴子(大槌新聞社)

この記事の著者

菊池由貴子(大槌新聞社)

1974年岩手県大槌町生まれ。岩手大学農学部獣医学科在学中に大病を患い、やむなく中退。東日本大震災の経験から、全国紙でも県紙でもない「市町村新聞」の必要性を痛感。2012年6月30日大槌新聞を創刊し、2016年4月一般社団法人大槌新聞社を設立。取材から執筆、編集、事務経理や広告受付までを一人でこなす。大槌新聞は町外にも発送可。電子データでの購読もできる。詳細は大槌新聞社HP(http://www.otsuchishimbun.com)。

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