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2019.02.25 政策研究

「議員の役割を果たして」 ─大槌町旧役場庁舎問題から見る議会の役割─

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大槌新聞 菊池由貴子

 「議員の役割を果たしてほしい」──。岩手県大槌町の旧役場庁舎(以下「旧庁舎」という)の解体に熟慮を求めていた住民団体代表は、解体直前までそう訴え続けました。議員の役割とは何か。議員は誰に寄り添うべきなのか。これまでの取材から、旧庁舎問題をめぐる大槌町議会の動きを振り返ります。

Ooduchi_ph01 解体前の大槌町旧庁舎=2019年1月19日

東日本大震災で人口の約1割が死亡・行方不明に

 岩手県沿岸の真ん中に位置する大槌町。東日本大震災で人口の約1割に当たる1,286人が死亡・行方不明となりました。町は震災時、過去の津波浸水区域にあった旧庁舎前に災害対策本部を設置。避難勧告や避難指示を出すこともなく、当時の加藤宏暉町長ら町職員39人が死亡・行方不明となりました。

Ooduchi_ph02 大槌町旧庁舎前に設置された町災害対策本部=2011年3月11日(関係者提供。一部修正してあります)

町議会、旧庁舎問題の議論避ける

 2011年8月、町職員OBの碇川豊氏が町長選挙で初当選。2013年3月には旧庁舎の一部を震災遺構として保存する方針を表明しました。ところが、2015年8月の町長選挙では平野公三氏が、上司だった碇川氏を1,000票差で破り初当選。旧庁舎の扱いが大きく変わりました。
 平野氏は震災時、防災担当の総務課主幹で、町災害対策本部にいましたが、旧庁舎屋上に素早く逃げて助かった経緯があります。選挙期間中から旧庁舎の解体を訴え、10月には年度内解体の方針を示しました。理由として平野町長は、震災遺構として保存した場合の維持管理費や、「旧庁舎を見るのがつらい」とする住民感情を挙げました。
 当時の議会は、前町長を支持した議員が大半で、議員からは、「維持管理費の正確な資料を出して」、「住民の保存・解体(を望む声)は半々だ」などの意見が相次ぎました。議会は平野町長に対し、解体予算案を12月議会に出さないよう求める意見書を提出。震災犠牲者の慰霊の場が整備されるまでの間、震災検証や震災遺構としての価値検討をすべきだと提案しました。
 議会の要請を受け、平野町長は解体予算案の提出を断念しましたが、それに対する議会の対応は不可解でした。平野町長を評価し、12月議会で予定されていた旧庁舎に関する質問を取り下げました。ある町民は、「議会で正々堂々と議論してほしかった」と残念がりました。

Ooduchi_ph03 平野町長(中央)に旧庁舎解体予算案を提出しないよう求める議員=2015年12月10日

菊池由貴子(大槌新聞社)

この記事の著者

菊池由貴子(大槌新聞社)

1974年岩手県大槌町生まれ。岩手大学農学部獣医学科在学中に大病を患い、やむなく中退。東日本大震災の経験から、全国紙でも県紙でもない「市町村新聞」の必要性を痛感。2012年6月30日大槌新聞を創刊し、2016年4月一般社団法人大槌新聞社を設立。取材から執筆、編集、事務経理や広告受付までを一人でこなす。大槌新聞は町外にも発送可。電子データでの購読もできる。詳細は大槌新聞社HP(http://www.otsuchishimbun.com)。

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