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2017.04.25 政策研究

第11回 住民自治の進展(上)――地域経営の新たな手法――

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【行政主導からローカル・ガバナンス、協働、新しい公共へ、という問題設定】
 この問題設定自体を問う必要がある。なぜならば、日本では(一般に欧米とは異なってといわれる)、オカミ崇拝という行政主導の側面はあるが、地域経営において公共サービス供給を行政だけでという行政主導で行ってきたわけではない。側溝の清掃、子どもの見守り、ごみ置き場の管理・ごみの分別、広報誌の配布等、自治会・町内会が担っていることを想定すればよい。
 今回検討しているローカル・ガバナンス、協働、新しい公共を強調するのは、公共サービス供給を行政だけで担うという意味ではなく、「行政の下請け」(この表現自体論争的である)を担ってきた自治会・町内会等による地域経営を、住民、NPO、企業等が主体的に担うこと、対等関係を創り出すことだけを想定しているためではない。公共サービス供給の範囲自体、そして担い手(行政なのか、住民、企業なのか等)を住民が決めていくという政治にかかわる側面を重視したいからである。そこで、本連載ではその新たな関係の理念と制度を模索することになる。


(1) 一般的には、「協働」が用いられている。ローカル・ガバナンス、あるいはローカルガバナンスの登場は、2005年(聞蔵Ⅱビジュアル)、あるいは2006年(ヨミダス歴史館)であるが、その後年間数件か、全くない年も多い。
(2) 松下圭一も同様の視点から、住民と行政職員は緊張関係にある、「『協働』という概念がおかしい」と主張している(松下 2005:13)。
(3) 多摩市自治基本条例の市民案4条4項は「市民は、まちづくりに参画しないことを理由に不利益を受けることはありません」と規定している(実際の条例では削除)。

〔参考文献〕
◇足立幸男(2009)『公共政策学とは何か』ミネルヴァ書房
◇今村都南雄(2002)「公共空間の再編」今村都南雄編著『日本の政府体系――改革の過程と方向――』成文社
◇江藤俊昭(2000)「地域事業の決定・実施をめぐる協働のための条件整備―〈住民―住民〉関係の構築を目指して―」人見剛・辻山幸宣編著『協働型の制度づくりと政策形成』ぎょうせい
◇木暮健太郎(2008)「ガバナンス概念の系譜」杏林社会科学研究24巻3号
◇木暮健太郎(2009)「第1世代から第2世代のガバナンス論へ――ガバナンス・ネットワーク論を中心に――」杏林社会科学研究25巻1号
◇小滝敏之(2005)『地方自治の歴史と概念』公人社
◇自治研究会(1946)『新地方制度の解説』ニュース社
◇自治立法研究会編(2005)『分権時代の市民立法―市民発案と市民決定―』公人社
◇新藤宗幸(2003)「『協働』論を越えて―政府形成の原点から」地方自治職員研修2003年3月号
◇杉原泰雄(2002)『地方自治の憲法論―「充実した地方自治」を求めて』勁草書房
◇渋谷望(1999)「〈参加〉への封じ込め―ネオリベラリズムと主体化する権力」現代思想1999年5月号
◇東京大学社会科学研究所=大沢真里=佐藤岩夫編(2016)『ガバナンスを問い直す〔Ⅰ〕、〔Ⅱ〕』東京大学出版会
◇中野敏男(1999)「ボランティア動員型市民社会論の陥穽」現代思想1999年5月号
◇原田尚彦(1995)『地方自治の法としくみ(全訂2版)』学陽書房
◇原田尚彦(2005)『新版 地方自治の法としくみ』学陽書房
◇堀雅晴(2017)『現代行政学とガバナンス研究』東信堂
◇松下圭一(2005)『自治体再構築』公人の友社
◇松本英昭(2015)『新版 逐条地方自治法(第8次改訂版)』学陽書房
◇Bevir, Mark ed.,(2007)Encyclopedia of Governance Vol.ⅠⅡ, SAGE Publications, Inc.
◇Bevir, M.(2012)Governance: A Very Short Introduction, Oxford University Press.=べビア, M.、野田牧人訳(2013)『ガバナンスとは何か』NTT出版
◇Pierre, J.(2011)The Politics of Urban Governance, Palgrave Macmillan.
◇Schaap, P.(2007)“Local Governance”in Bevir, M. ed., Encyclopedia of Governance Vol.Ⅰ, Ⅱ, SAGE Publications Inc.

江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士(政治学、中央大学)。 1956年東京都生まれ。1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 三重県議会議会改革諮問会議会長、鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、第29次・第30次地方制度調査会委員等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員など。 主な著書に、『続 自治体議会学』(仮タイトル)(ぎょうせい(近刊))『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい、2012年)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)連載中。

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