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2016.04.11 議会改革

第31次地方制度調査会と住民自治(上)

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2 諮問と答申の構図

(1)諮問事項と答申の構図
 31次地制調が設置されたのは、2014年5月15日である。首相による諮問事項は次の通りであった。

表1 31次地制調の諮問事項表1 31次地制調の諮問事項

 31次地制調が設置された時期は、一方では「地方消滅」というキーワードが全国を席巻した時期であった。「増田レポート」が提出され「消滅可能性都市」が実名で紹介され、「まち・ひと・しごと創生法」が制定されたのと同時期である。
 他方では、新たな時代の「地方行政体制及びガバナンスのあり方」に関する改革はすでに行われていた時期でもある。連携協約によって、広域連携(自治体間連携・補完)は新たな段階に突入している。また、議会基本条例制定自治体数は、着実に増加し約800までに至り、新たな議会像をめぐる議論と改革が行われていた。
 こうした時期の課題に応える答申が期待されていた。しかし、後に確認するように、法改正にまで至らないさまざまな提案によって、「地方創生」の施策にとって、自治法改正が必ずしも必須ではないことは明らかになった。とはいえ、答申の項目は、諮問の項目に沿っているわかりやすい構成となっている。第1章が基本的な視点、第2章が人口減少社会に対応する地方行政体制、第3章が人口減少社会に対応するガバナンス、といった構成である(表2左欄は目次)。
 つまり、今日の人口減少社会に対する対応として、地方行政体制の確立、ガバナンスの確立を探るという問題構成になっている。「地方行政体制を確立することが、人口減少対策を的確に講じることにつながる」、「適切な役割分担によるガバナンスは、地方公共団体に対する住民からの信頼を向上させ、人口減少社会に的確に対応することにも資する」というものである。
 地方行政体制とガバナンスの確立について答申の概要については、表2を参照していただきたい(表2右欄は答申の論点)。この答申から法律(自治法)改正に直接結びつく事項はそれほど多くはないと思われる。「次の国会以降に提出」(190国会(2016年、常会)以降)とされている。下線を付しているのは、現時点では自治法改正の可能性にとどまるが、それを確認しておきたい。これらの事項のうち法改正に至らないものもあるであろうし、他の事項が法改正になる可能性もある。議論の末に答申に盛り込まれ、現時点で想定される法改正の事項の参考として理解してほしい。

表2 31次地制調答申の目次と答申の論点(概要)表2 31次地制調答申の目次と答申の論点(概要)
 

江藤俊昭(山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授)

山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士(政治学、中央大学)。 1956年東京都生まれ。1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 三重県議会議会改革諮問会議会長、鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、第29次・第30次地方制度調査会委員等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員など。 主な著書に、『続 自治体議会学』(仮タイトル)(ぎょうせい(近刊))『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい、2012年)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)連載中。

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