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2016.03.25 議員活動

現職議員が語る二元代表制のリアル(上)

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控室では仕事ができない?!

――黒川さんはいかがでしたか。
黒川 初めて議員控室に通された際に、ソファーだけあって執務机がなかったときには驚きましたね。私は、古い仕事机でよいから使わせてとお願いしたのですが、事務局長から「ここは控室なので、仕事をする場所でありません」と言われました。そこで、改めて控室の内規を見たら、二度びっくり。「16時半までに退室しなければならない」と書いてある。「何じゃこれは?」と(笑)。こちらは、「市政チェックするぞ、見てやるぞ。市の政治文化を変えるんだ」と仕事をしに来たのに。職員にとっては、市庁舎に議員が常駐されることは、鬱陶しいことなのです。
 前の職場の労働組合の事務局の仕事では、清濁併せ呑(の)むことが多く、そうしようかと思いましたが、近隣市の議員に「あなたの持ち味はいい子ということではないよ。言うべきことを言った方がいい」と言われました。逆に「もっといい人ぶらなきゃ政治的には出世できないぞ」と、政治家仲間からアドバイスを受けることもあります。
 例えば「うちの駅に急行を止めてくれ」という意見に、みんなが「そうだ、そうだ」と言ったとします。けれども沿線レベルで全体の利益を考えたら、それは得策でも何でもない。そうしたドメスティックな都合だけの議論に、少数派とはいえ世の中そんなことではない、もっと違う道を探るべきときちんと言い切ることが、私たちに対して期待されていると思っています。
 ある政党が、絶対これは正しいと「いいこと」を言ったとします。反対する余地がない。だけど、何か変だぞと思ったときには、私は疑問をつけます。それは議会では感情を逆なですることもあると思います。黒川という議員は市民の期待を裏切ると、ビラなどに書かれてしまうこともありました。

黒川滋さん黒川滋さん

二元代表制のリアル

――半田さんから見た地方議会の実情はいかがでしょうか。
半田 ずばり「与野党体制」の存在です。地方議会は選挙で選ばれた議員と、同じく選挙で選ばれた首長による「二元代表制」です。首長は、与党の代表ではありません。本来は、首長はどの議員からの問題提起も等しく受け止めなければならない。しかし、現実の地方議会で起こっていることは、国会の議院内閣制と同じ、「数の力」が全てです。
 新人当時は不思議に思ったものですが、議員自身が「与党入り」を目指して会派や首長に擦り寄る状況がよく分かりました。その時点で、「与党でない議員の存在価値は、ほぼないに等しい」と分かった。そうした現状に向き合い、与党でない議員は自己の存在価値をどこに見いだすのか、それが問われていると思いました。つまり、まず与党でなければ政策の実現を考えること自体が間違っている。
――とても刺激的なご意見ですね。
半田 結局、政策実現できる議員は与党、もっといえば市長なわけです。我々議員にできることは、「政策を実現してください」と市長に頭を下げてお願いすることだけです。だから、少数派の議員がいくらよい政策を実現しようと発言しても、簡単に通るわけがない。そこははっきりと、「夢から覚めろ」ということですね。
 「政策を実現した」というのは、結局、政治家の自己満足なのです。極端な言い方をすれば、実現してほしい政策を、私が言う必要はない。誰か与党に言わせればいい。
 そもそも行政は強大な権限を持っている。政府が社会の秩序維持にとどまらず、一定の理念の実現を目指して国民の生活、経済活動のあり方に積極的に介入しようとする「行政国家」という概念があります。本来的には国のことを指していうのですが、自治体も似たようなことがいえます。
 例えば三鷹市の場合、トップである市長に職員1,000人弱がついています。対する議員には部下がつくわけではありません。「議会事務局職員がいるではないか」と言う方もいらっしゃいますが、「事務局職員の人事を決定するのは誰か?」と考えたら答えは簡単です。つまり、議員がはじめから信頼できるスタッフや部下というのは、ほとんどゼロというのが大前提です。
 いうまでもなく、三鷹市議会の事務局職員はみな優秀です。助けてくださる方はいっぱいいらっしゃいますよ。例えば、何か調査で23区の情報を集めてくれといったら、ぱっとやってくださいます。ただ、そういったことをやる、やらないという話と、本来的に行政と議会とが持つ権限の差、力量の差、キャパシティーの差、そういったことを考えた場合に、たかだか一議員が政策を提案すること自体がおこがましいんですね。
 「政治の世界は嫉妬とねたみの世界だ」と、これは私の言葉ではありません。以前、木村拓哉さんが総理大臣になるという「CHANGE」(フジテレビ、2008年)というドラマがありましたが、石黒賢さんが演じる国会議員が発したセリフです。政策を提案して議論をする。議会とはそういうものだというのは、あくまで学者の概念で、そういう概念の世界から脱皮することこそが、最も必要だと思います。

半田伸明さん半田伸明さん

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