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2015.09.25 議員活動

議員と議会の広報戦略

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議会広報も、住民の立場に立った広報を

 議会広報にも上記と同じことがいえると考えています。これまでは、単に「議会のホームページを設けないといけない」というレベルでの広報だったのではないでしょうか。単に情報を公開していることに満足し、受け手である住民目線に立ったコンテンツマネジメント及び情報発信がなされてきていない、と感じています。
 パレートの法則(2)というものがあります。8対2の法則、又はばらつきの法則ともいわれます。あくまで経験則に基づいて経済学者が唱えた法則ですが、これを「住民の市政への関心」に当てはめてみます。自ら情報をとりにいき、また発信する市政に興味関心が高い主体的な住民の層が2、それ以外が8と考えます。ただし、その8も細分化すると6対2となるとされます。いわば、2:6:2の法則であり、後ろの2は何をしても反応しない層なので、どういう工夫をしても市政に興味関心を持つことはありません。前の2の層は主体的に情報をとる層ですから、私たちが積極的に働きかけないといけないのは真ん中6の層といえます。
 真ん中6の層、こういった住民を対象にして、議会の広報を考えないといけません。各議員の情報発信と同様に、最近は総体の議会としてもTwitterやFacebook公式ページを設けて情報発信に工夫をするということも、ようやく一般化してきました。ただし、そこには広報戦略が欠けているのです。ターゲットとどこで接触して、どの情報を目にしてもらい、その後どうアクションをとってもらうのかといったことを、全体を見据えて設計しないと、決して効果的な広報がなされているとはいえません。そのために最も大切なのは「現状把握」です。議会が住民からどう見られているのか、どういうニーズがあるのか、を定点観測する必要があります。それを基に、広報の手段である情報発信ツールの役割定義を踏まえて、コンテンツマネジメントを行っていくことが理想です。一方的な思いだけで情報発信に取り組んだとしても、受け手が得たいタイミング・手法・内容でなければ、効果は薄いと考えます。
 議会の広報戦略で先進的な取組をしている議会としては、例えば、流山市議会が挙げられます。現在の同市議会ホームページ(図5)の作成に当たっては、まず民間や大学との共同プロジェクトでサイトを制作・公開、その後ユーザーがどのコンテンツを見ているかを計測・把握して、コンテンツ配置などを変えるという工夫をしたと聞いています。民間では当たり前の取組ですが、地方議会ではまだこういう取組は稀有(けう)だと認識しています。

図5 流山市議会では市議会ホームページをオープン後、ユーザービューを計測・把握し、コンテンツ配置などを改善図5 流山市議会では市議会ホームページをオープン後、ユーザービューを計測・把握し、コンテンツ配置などを改善

議会そのものの活性化があっての、広報である

 最後に、決して間違ってはならないのは、議会のあり方を抜きにして広報のみの強化に取り組んではならないということです。それは全く議会の役割を果たせているとはいえません。そもそも取り組むべきことは、二元代表制の下で議会の役割を最大限発揮できる、議会内の合意形成とその仕組みづくりです。そこに住民意思をさらにくみ取り反映させるために、広報戦略が必要となるという構図であると認識しています。それは議員単位の活動広報も同様です。テクニックに走るだけで政策や活動などの内容が伴っておらず、住民へ当たり障りのない情報のみを提供し、「見た目だけの投票行動」へ拍車をかける危険性もあります。まずは議員・議会としての活動ありきです。
 広報はあくまで手段であり、何のための広報なのか、突き詰めて考え議論することが必要ではないでしょうか。広報のみならずいろいろな分野において民間企業の文化から10年以上遅れている議会業界ですが、こういう状況を一新し、広報を効果的に活用して地方議会が住民にとって“使える”議会にすることこそ、私の本望です。


(1) 「MECE」(ミーシー)とは、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの頭文字をとったもので、モレなくダブリなく、という意味。
(2) 所得分布の経験則。全体の2割程度の高額所得者が社会全体の所得の約8割を占めるという法則。マーケティングなど様々な分野で応用されている考え方。20対80の法則、ニハチの法則ともいう。

白井 亨(しらい とおる)

この記事の著者

白井 亨(しらい とおる)

東京都小金井市議会議員(2013年4月から現職)、会派 小金井をおもしろくする会(1人会派)所属。どこの政党にも所属せずどの組織からも支援を受けず素人市民でチームを作り未来の小金井市を創る為にまずは市議会議員に。元会社員(株式会社シー・レップにて企業や学校のコミュニケーション&プロモーション企画・制作のディレクター兼営業)。関西大学社会学部卒業。1975年生まれ、大阪府枚方市出身、2007年から小金井市民。

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