小金井市議会議員 白井亨
議会と住民の間に横たわる大きな溝
私は、地方議員になる2年前まで、市議会に興味関心を持つことはありませんでした。毎晩夜遅くまで働き、小金井市という街はただ寝に帰るだけのところでした。住宅地が広がる地域であれば、そういう方は多いのではないでしょうか。その後、子どもが生まれたことで視野が広がり、地域に興味を持ち、人と知り合い、地域活動を担うようになってから初めて、行政との接点ができました。さらに全国的ニュースにもなった、市の“可燃ごみ処理問題”を通じて、市議会というものの存在にも目を向けるようになったのです。
その理念を知れば知るほど、“行政執行を監視し、場合によっては自ら政策提案する”という地方議会の役割は重要であると感じ、また、こうした二元代表制という仕組みの素晴らしさを認識しました。しかし理念は別として、実際には国会の政治システムである議院内閣制の擬似バージョンが地方議会で行われており、各地方議員は本来求められている役割を本当に理解しているのか、不思議に思ったものです。
さらに、地方議員は本来その地域で最も身近な存在であるはずが、住民からは最も遠い存在と感じられがちであり、住民は住民で「議会は分からない」という認識がまん延し、いわば悪循環が構築されているように見えました。なぜでしょうか、議会と住民の間には大きな溝ができ上がってしまっていたのです。
議会業界では、効果的な広報戦略を立て実行するノウハウがない
私は2013年3月に選挙を経て議員になった際、まずは議員の役割を住民にきちんと知ってもらうことがスタートだと思っていました。小金井市議会が2012年に行った住民意向調査(市議会についての無作為抽出アンケート)によると、議員の活動を知っている人は約4割、二元代表制について知っている人はわずか1割という結果でした。その反面、「議員の報酬が高い」と回答する住民は多く、住民には議会を評価するための情報や考えの軸がないことが分かりました。これまで各議員も議会活動の情報発信に各自で努めてこられたはずですが、住民に対してどうもうまく伝わっていないようです。これは、相手の立場に立って広報活動をしてこなかったことが原因だと私は考えています。
結局、地方議会業界では、『広報』を体系立てて考え、整理するノウハウが存在しないのです。これまで各議員がやってこられた活動報告の仕方といえば、チラシを作成し駅前配布やポスティングをする、ホームページを制作する、ブログやSNSなど新しいメディアツールが出てくればそれに何とか対応はしている、という状態といえます。考えられる情報発信のためのツールは使っているし、トレンドに対応できる議員も少なくないと思います。ただし、そこに哲学がないのです。私は前職でコミュニケーションデザインに関する仕事をしていたものですから、その問題点にはすぐに気がつきました。やり方がまずかったのです。