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2015.03.10 議会改革

「市民に開かれた議会」を目指して~議会運営ルールの「見える化」という論点から~

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議会運営ルールの「見える化」の促進

 会議規則を会議条例と会議規程に分離することによって、議会運営ルールの「見える化」という大きなメリットが得られる。従来、議会運営は、先例や申合せによる部分が多く、それを知らない傍聴人には理解できない状況も多々生じてきた。
 先例や申合せはウェブ上で検索しても各自治体の例規集に含まれないことが多く、市民はもとより、執行部職員でさえその内容を容易に知ることができない自治体も多い。これは、市民への積極的な情報公開が問われている現在の行政常識からは、かなり特異な状況である。
 こういった状況を改善するためにも、手続に関する条項などを議長告示である会議規程に移し、より機動的な運用を可能とするとともに、先例、申合せなどの内容もできる限り会議規程に移した。これは例規集に登載することによって、市民が容易に内容を知り得る状況を実現し、議会運営ルールの「見える化」を促進するものである。

図:会議規則条例化のイメージ:会議規則条例化のイメージ

例規を考える視点

 会議規則を廃しての条例化については、議会事務局研究会会員からも多くの反対意見をいただいた。やはり主な反対論拠は、規則という法形式も含めて法定されており、それによって外部からの介入可能性を排除するところに意義があるというものである。
 確かに法律論として一理あるとは思うが、疑問を感じるのは、そこに市民視点はなく、内部視点の解釈論であることだ。執行部であれば市民権利に関わる規定を、長限りで決めてしまえる規則に置くこと自体が批判されるのではないか。まして市民の権利保護よりも組織の都合を優先して、法形式を選択するということが許容されるとは思えない。もちろん地方議会に法改正の権限がない以上、議論が解釈論になりがちなことも一定やむを得ない。しかし、地方議会においても解釈の枠を超えて実現できることがあるはずである。
 その実例は、三重県議会基本条例に附属機関条項が盛り込まれたことである。当時は地方自治法138条の4の反対解釈として、議会には附属機関は設置できないとの見解が一般的で、総務省や知事からも違法との指摘を受けていた。しかし、その後、明文で禁止されていないので設置可能との解釈が一般的になり、法改正を待たずに多くの地方議会が追随した。それは、総務省見解とは異なっても、議会に附属機関を置くことが、結果として市民利益になるとの考えがオーソライズされた結果である。本来は立法論で対処すべきものであっても、解釈論で現場ニーズに応えた好例だと思う。

「市民に開かれた議会」を実現するために

 例規は目的を達するための手段にすぎず、学術的意義よりも市民利益を優先したものであるべきである。また、抜本的には法改正が必要と思われても、当面は市民視点からの解釈、運用でその障壁を突破しようとするスタンスも必要だと考えている。
 大津市議会の会議規則を廃しての条例化は、もちろん現行法でも先に述べた解釈論で適法との立場ではあるが、長期的には立法論での決着を望むものである。いずれにしても、少なくとも一部の人にしか理解できない例規構成が、市民目線で考えたときにふさわしいものとは思えない。
 何よりも、地方議会改革が求められている理由には、議会が市民から分かりにくく、遠い存在になってしまっていることがある。したがって、市民にとって分かりやすい例規構成とすることや、「新旧対照表」による例規改正方式の導入など、地方議会法制についての改革の取組も、地道ではあるが「市民に開かれた議会」の実現に資するものと確信している。

清水克士

この記事の著者

清水克士

大津市議会事務局議会総務課長 1963年京都市生まれ。同志社大学法学部卒。現在、大津市議会事務局議会総務課長。「議会事務局研究会」会員。 主な寄稿に「挑戦する『議会局』を目指して」(地方自治職員研修、2012年)、「議会改革の現場から~脱却せよ『先例・標準・横並び』~」(日経グローカル、2015年)などがある。

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