地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2015.03.10 議会改革

「市民に開かれた議会」を目指して~議会運営ルールの「見える化」という論点から~

LINEで送る

 大津市議会では、「市民に開かれた議会」を目指して議会改革を推し進めており、平成26年2月「会議規則や傍聴規則の条例化」や平成24年5月「新旧対照表方式による例規改正」を主体とした議会法制の抜本的見直しを行った。これは、市民の権利をより尊重することや、議会運営を市民に分かりやすく伝えることに主眼を置いたものである。なお、文中意見に関する部分は筆者の個人的見解であることをあらかじめご了解いただきたい。

会議規則の条例化に当たって

 まず、今回の会議規則の条例化の動機について述べたい。
 そのようなことを考えた第1の理由は、一般的な法体系と議会例規体系との乖離である。一般的には、「形式的効力の原理」によって、条例は規則の上に位置付けられている。しかし、議会の世界では議会機能の中心となる本会議は規則に、議会内部の審査機関である委員会については条例で定めることとされていることから、会議規則の方が上位と考える方が自然ではないか? と考えた。そうであるならば、一般的な条例と規則の上下関係と異なる位置付けをあえてする理由は何であろうか。
 一方で、両者は並列関係であるとする考えもあるが、「形式的効力の原理」からは法形式が異なれば当然に上下関係が生じ、あえて並列関係であるとするなら、異なる法形式をとる必然性はどこにあるのであろうか。
 また別の論点としては、会議規則は改正に議決を要するとされているが、執行部では制定改廃に議決を要するのが条例、長限りで機動的に制定改廃できるのが規則との理解が一般的である。なぜ議会で定める規則は改正に議決を要するのであろうか。
 場合によっては、議会運営委員会での決定を経ての議長告示を、議会の意思としてもよいのではないか? 議会の意思決定は議決しかあり得ないとするならば、条例形式で規定する方が、より自然なのではないか?
 これらの疑問が、今回の議会例規構成見直しの原点となった。

会議規則が「規則」であるデメリット

 では、会議規則が「規則」とされてきた理由は何であろうか。
 研究者の世界では、要約すると以下のような意見があるようである。
 まず形式的には、法に「会議規則を設けなければならない」と規定されている以上、それ以外の法形式をとることは許されないとの考えである。
 また、実質的には、議会は自治体としての意思決定機関であり、その意思決定ルールを他の機関が決めることはあり得ないとの考え方から、首長も提案権を持ち、再議権を行使しうる条例で定めることはできないとの考えである。
 しかし、形式論については、題名と法形式が一致しない例規もあり、法の立法趣旨は会議に関するルールを定めることにあり、規則という法形式をとることまでも定めていないと解釈するものである。
 実質論についても、条例であっても常に議会と首長双方に提案権を認めるという法解釈、運用がされているわけでもない。一方で会議規則を規則としておくことには、以下のようなデメリットがあり、比較衡量すると会議規則を廃し、会議条例と会議規程に再編することが、市民の利益になると考えたものである。
(1)市民の権利保障が不十分であること
 憲法上の権利である「請願」に関する要件事項が、市民の直接請求によって改正可能な条例でなく、議会でしか制定改廃できない規則で定められていることは、憲法の規定趣旨に鑑みると適当でない。また、「秘密会の実施」及び「議会内の秩序保持」に関する事項や「傍聴規則」全般に関しても、市民に拘束力を及ぼしうる規定を、本来、機関内部のルールを定めるべき規則に置くことに関して同様である。
(2)「法秩序の構成原理」における疑義
 憲法を頂点とする法秩序の論理的一体性を確保するための原理とされているもののうち、下記の観点からも疑問が生じる。
① 「形式的効力の原理」の観点
 異なる法形式相互間においては、その効力の上下関係を認めることによって、法令相互間の矛盾を解決しようとする考え方から、一般に条例の形式的効力は規則に優先すると解されている。しかし、実態上「会議規則」が「委員会条例」の上位と解される議会の法体系は、一般的な法体系(法─条例─規則)と異なるが、独自の法体系をとる実体的利益に乏しい。
② 「所管事項の原理」の観点
 法形式の相違に応じて所管事項を定め、それぞれの規定内容の競合を避けようとする考え方からは、委員会についての会議規則と委員会条例のそれぞれの所管事項が必ずしも明確でない。また、本会議は規則の定めのみであるが、委員会については、法の定めにより委員会条例が制定され、「条例に定めのない事項については会議規則の定めるところによる」とされているが、議会内部の審査機関である委員会だけを、あえて条例と規則に分けて規定する必然性に欠ける。
(3)実務上の機動的運用が阻害されること
 会議規則は「規則」でありながら、その制定改廃に議決を要するとされていることは、実務上の詳細な手続規定を含む会議規則の運用上、機動性を欠く一面を否定できない。条例から規則に委任して運用上の機動性を確保しようとする執行部における例規の常識からは、議会例規に限ってそのような運用を認めないことに合理性を見いだし難い。

清水克士

この記事の著者

清水克士

大津市議会事務局議会総務課長 1963年京都市生まれ。同志社大学法学部卒。現在、大津市議会事務局議会総務課長。「議会事務局研究会」会員。 主な寄稿に「挑戦する『議会局』を目指して」(地方自治職員研修、2012年)、「議会改革の現場から~脱却せよ『先例・標準・横並び』~」(日経グローカル、2015年)などがある。

Copyright © DAI-ICHI HOKI co.ltd. All Rights Reserved.

印刷する

今日は何の日?

2024年 519

日本で初めてボクシングの世界チャンピオン(白井義男)誕生(1952)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る