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2015.03.10 議会改革

生まれ変わる地方議会~大津市議会のチャレンジ~

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大津市議会議会運営委員会委員長 竹内照夫

 大津市議会は、先進的な施策等を表彰する「マニフェスト大賞」で、平成25年度は「大学との連携による議会からの政策提案」のテーマで「議会グランプリ」、平成26年度も「地方議会初となる議会BCP(業務継続計画)」のテーマで「審査委員会特別賞」の受賞という2年連続の栄誉に浴した。これまで、滋賀県の県都でありながら、必ずしも全国では存在感を示せなかった大津市議会が、いかにして変わってきたのかについて、私見を交えて述べてみたい。

加速した議会改革

 大津市議会では、議会改革のテーマについては、副議長を委員長とする議会活性化検討委員会で議論してきた。平成11年に同委員会が設けられて以来、様々なテーマが議論され、改革が実行されてきたが、大きく加速したのは前述の「議会グランプリ」の受賞テーマである「大学との連携による議会からの政策提案」が軌道に乗ったことである。それまでの議会活動は、行政の監視機能に特化されたものであったが、外部から専門的知見を導入し、「政策検討会議」と称する会派を超えた議員間討議の仕組みが定着することによって、政策提案機能が飛躍的に向上したのである。
 その成果が、平成24年度には「子どものいじめの防止に関する条例」、平成25年度には「議会BCP(業務継続計画)」の策定につながり、平成26年度は「議会基本条例」と「災害等対策基本条例」を策定中であり、その全てに知的資源ともいえる大学の専門的知見を生かしている。
 従前は執行部とのやりとりが主体で、外部機関との関わりや市域を超えての情報発信などとは無縁であり、他の地方議会を意識する機会も多くはなかった。しかし、議会グランプリを受賞してからは、視察受入件数やメディアで取り上げられる機会も増え、必然的に全国のレベルを意識することとなり、大津市議会議員としてのモチベーションも確実に高まっている。

平成25年度にはマニフェスト大賞で「議会グランプリ」を受賞平成25年度にはマニフェスト大賞で「議会グランプリ」を受賞

大津市議会の強み

 そして視察対応などで、他の議会から不思議がられるのが、会派を超えた議員間の関係性と、事務局との距離感である。例えば議会によっては、安易に他会派の控室に出入りするようなことは、スパイ行為との誤解を生むため、あり得ない行動とされているようであるが、大津市議会では極めて日常的風景である。プライベートでも、異なる会派議員同士での個人的な酒席、混成議員チームでの市民レガッタ参戦(ナックルフォアに異なる会派議員が同乗するので、文字どおりの「呉越同舟(!?)」である)、全議員での大忘年会などが、自然発生的に行われている。大津市議会ではごく普通のこれらのことが、会派を超えた議員間討議ができる雰囲気を形成するものなのかもしれない。
 もちろん、その前提としては、少数会派であってもその主張を尊重するという文化があってのことである。具体的には、3人以上の交渉会派であることが構成委員の要件である議会運営委員会においても、委員長裁量でオブザーバーである非交渉会派にもできる限り意見表明の機会を設けている。それは私自身にも一人会派であった時代があり、そのときの経験を今に生かしているのである。
 次に議会事務局との距離感については、私が平成12年に初めて議長を務めたときから、常に事務局職員に対しては、「いい意味でのエリート意識を持て」と言い続けてきた。今でこそ、議会事務局は首長の支配下から離れた議会のための組織との認識が定着してきた。しかし、当時は大津市議会でも執行部職員の着ける市章と議会事務局バッジの2つを背広に着けて、その正当性を主張し譲らない議会事務局長が出向してくるなど、職員にも任命権者である議長に仕えるという意識がなかったのである。その根底には外局に出されたとの劣等感があり、そのような職員が本気で議会のために働こうとするとは思えないため、だからこそ「エリート意識を持て」と言いたいのである。
 幸いにして、近年の議会事務局職員の士気は高く、議会改革を進めるには今のタイミングしかないと他の議員にも訴えかけてきた結果、事務局職員との協働文化も定着し、その成果として、数々の議会改革が達成できた。
 そして、最初は分不相応だと私自身も思って聞いていたが、議会事務局は「議会局」であるべきだとの職員の意見を入れて、異論を唱える会派も説得し、大津市議会事務局は来年度から「議会局」に組織再編することとなった。事務局職員のモチベーションアップを図ることも、議員の重要なミッションであろう。

竹内照夫

この記事の著者

竹内照夫

大津市議会議会運営委員会委員長 1956年大津市生まれ。近畿大学法学部卒。1991年大津市議会議員初当選、1998年第67代大津市議会副議長、2000年第74代大津市議会議長、2010年第83代大津市議会議長。現在、大津市議会議会運営委員会委員長。

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