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2015.01.10 政策研究

市民1,200人によるマニフェストづくり!〜10年後のまちづくりビジョン「湘南都市構想2022」〜【NPO法人 湘南ビジョン研究所】

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「市民マニフェスト」策定への挑戦

 NPO法人「湘南ビジョン研究所」は、湘南海岸のビーチクリーン活動をきっかけに2011年5月に立ち上がった環境保全活動を中心とする市民団体である。
 湘南地域は、海や緑の豊かな自然と文化、多彩な産業等に恵まれた魅力的な地域であるが、一方で、河川や海岸の環境問題、津波対策、観光振興など、一市町村の枠組みでは解決できない多くの広域的な課題がある。これに対して現在、湘南地域の各市町では、「総合計画」という長期的・体系的な行政計画を策定しているが、自治体ごとの計画となっているため、これらの広域的な課題は解決できていないのが現状である。
 そこで、当研究所は、行政の枠組みを超えて、湘南9市町にわたる「湘南地域」を一体として捉えた市民マニフェスト「湘南都市構想2022」を策定し、議会・行政に提言するとともに、自分たちで実現していこうとする壮大なプロジェクトに挑戦することとした。

1,200人以上の市民意見を反映

 「湘南都市構想2022」は、私たち市民が理想とする10年後の湘南地域のまちづくりビジョンである。
 本構想の策定に当たって、会社員、自営業、学者、研究者、公務員、自治会、カメラマン、主婦、NPO、プロサーファー、学生など10歳代〜70歳代の40人の多彩な顔ぶれが集まった。メンバーは、湘南地域の抱える課題を把握するため事前に行ったヒアリングで出会った人たちが中心であったが、さらにFacebookなどのSNSで広く公募することで、湘南地域全域からやる気のある市民をそろえることが可能となった。
 メンバー40人は、「教育・スポーツ」、「観光・産業」、「医療・福祉」、「防災・交通」の4分科会に分かれ、月1回の全体会と、月1〜2回の分科会を開催し、10か月間で80回以上の会議を開催した。
 本構想の策定過程では、専門家を講師として招いた「湘南の海を考えるミニフォーラム」(全14回・参加者延べ800人)、小学生との「100人ワールドカフェ」(参加者120人)、有識者ヒアリング(約100人)、中間発表会(来場者180人)などを開催した。また、インターネット番組「湘南ビジョンTV」を立ち上げ、本構想の策定過程をネット上に積極的に配信するとともに、手づくりによるフリーペーパー『読む湘南』を毎月1,000部発行。さらに、ラジオ「J-WAVE」、「レディオ湘南」、タウン誌や新聞等のメディアでも積極的にPRすることにより、市民から多様なフィードバックをいただいた。
 このように市民意見を吸い上げることに徹底的にこだわった結果、合計1,200人以上の方々からの意見を本提言に反映させることができ、専門家と市民の視点が高度に融合された市民マニフェスト「湘南都市構想2022」ができ上がった。

小学生との「100人ワールドカフェ」小学生との「100人ワールドカフェ」

24本のプロジェクト(政策)を提言

 本構想の特徴は、①市民主体(行政に依存しないで策定)、②湘南らしさ(海に特化した内容)、③広域連携(一市町村にとらわれないで湘南全域で連携)の3つ。コンセプトは「つながろう湘南、ひかろう湘南」。基本理念は、①湘南の次世代を担う人づくり、②湘南のポテンシャルを活かした活力創出、③湘南の源となる輝きつづける命と絆づくり、④湘南の安心を守る災害に強いまちづくりの4つ。
 最終的には24本のプロジェクト(政策提言)としてまとめ、100頁を超える冊子を作成した。2013年2月には最終提言発表会「湘南未来フォーラム2013 in 江の島」を開催し、500人を超える参加者が集まった。提言発表会では、防災・交通分科会は「誰もが湘南防災マイスター」、「自転車で湘南の風を感じよう!」、観光・産業分科会は「“なぎさの駅”~観光元年」、教育・スポーツ分科会は「郷土を学ぶ『湘南学』」、医療・福祉分科会は「50歳からの『湘南大人大学』」の提言を発表。さらに、専門家からの講評の後、来場者500人による政策コンテストの投票を行い、防災・交通分科会の2つの提言が「最優秀提言賞」に選出された。当日は湘南地域の市長、県議会議員、市町議会議員にも多数ご参加いただき、行政や政治家へも広く提言できた。

組織体制の強化と資金確保が課題

 本構想を実現するために、当研究所の組織体制の強化と運営資金の確保が大きな課題であった。そこで、当研究所は2013年12月にNPO法人格を取得し組織体制を強化するとともに、2014年度藤沢市公益的市民活動助成事業の助成金を獲得した。また、2014年11月の第9回マニフェスト大賞(マニフェスト大賞実行委員会主催、早稲田大学マニフェスト研究所、毎日新聞社共催)で、本構想の取組が評価され、当研究所が「優秀マニフェスト賞」と「審査委員会特別賞」を受賞した。
 これらの結果、当研究所の信用力が向上し、法人会員や企業協賛も得ることができ、当初からの組織体制の強化と運営資金の確保の課題は解決しつつある。
 しかし、助成金も企業協賛も単年度の支援であり、活動はいまだ不安定である。今後も企業と連携しつつ、将来的にはNPOとして収入を確保できるような事業を展開していきたい。

議会・行政と連携して実現へ

 本構想を実現するためには、今後も行政に依存せず、NPOとして市民主体で地道に活動していくことが大切である。しかし、本構想は行政計画ではないため、実現のための法令、予算、人員の担保はない。したがって、当研究所だけで本構想の24本のプロジェクト(政策提言)を実現することは困難であると考えている。
 湘南全域の構想という大きなビジョンを実現するためには、やはり、議会・行政との連携・協働は不可欠である。具体的には、本構想の理念や政策アイデアを積極的に提案することによって、湘南各市町の首長マニフェスト、議員マニフェスト、議会マニフェストへ一部でも取り入れてもらい、それが結果的に行政の「総合計画」に反映されれば幸いである。
 なお、2014年度からは、当研究所ではプロジェクトのひとつである「日本初!ブルーフラッグ※の国際認証取得」の活動に集中的に取り組んでいる。今後、本プロジェクトで議会・行政・企業・市民の連携を実現させるため、各種マニフェストへの反映を提案していきたい。

※ 国際的な環境NGOであるFEEが実施する海岸の国際的な環境認証制度。水質、美観、安全など30項目以上の基準がある。日本での取得事例はない。

検証サイクルを全国のモデルへ

 本構想の実現目標は2022年であり、10年間かけて実現していこうというものである。そこで、市民の方々に本構想の達成状況を検証してもらうことを目的に、毎年、達成状況評価イベントを開催することにした。今後、この市民マニフェストの検証サイクルをひとつのモデルとして成功させ、全国に広げていきたいと考えている。
 これからの時代、NPOは新たな時代を切り開くまちづくりの担い手として、ますます社会から大きな期待を寄せられる。その期待に応えられるよう私たちは、市民、企業、行政とさらに連携し、より多くの知恵と力を結集することにより、「湘南都市構想2022」の実現を目指していきたい。

表

この記事の著者

片山清宏

NPO法人 湘南ビジョン研究所 ウェブサイト:http://shonan-vision.org/ Facebook:https://www.facebook.com/shonanvision 住所:神奈川県藤沢市鵠沼桜が岡3-9-29 電話:090-9017-2459(片山) メール:info@shonan-vision.org

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