「市民マニフェスト」策定への挑戦
NPO法人「湘南ビジョン研究所」は、湘南海岸のビーチクリーン活動をきっかけに2011年5月に立ち上がった環境保全活動を中心とする市民団体である。
湘南地域は、海や緑の豊かな自然と文化、多彩な産業等に恵まれた魅力的な地域であるが、一方で、河川や海岸の環境問題、津波対策、観光振興など、一市町村の枠組みでは解決できない多くの広域的な課題がある。これに対して現在、湘南地域の各市町では、「総合計画」という長期的・体系的な行政計画を策定しているが、自治体ごとの計画となっているため、これらの広域的な課題は解決できていないのが現状である。
そこで、当研究所は、行政の枠組みを超えて、湘南9市町にわたる「湘南地域」を一体として捉えた市民マニフェスト「湘南都市構想2022」を策定し、議会・行政に提言するとともに、自分たちで実現していこうとする壮大なプロジェクトに挑戦することとした。
1,200人以上の市民意見を反映
「湘南都市構想2022」は、私たち市民が理想とする10年後の湘南地域のまちづくりビジョンである。
本構想の策定に当たって、会社員、自営業、学者、研究者、公務員、自治会、カメラマン、主婦、NPO、プロサーファー、学生など10歳代〜70歳代の40人の多彩な顔ぶれが集まった。メンバーは、湘南地域の抱える課題を把握するため事前に行ったヒアリングで出会った人たちが中心であったが、さらにFacebookなどのSNSで広く公募することで、湘南地域全域からやる気のある市民をそろえることが可能となった。
メンバー40人は、「教育・スポーツ」、「観光・産業」、「医療・福祉」、「防災・交通」の4分科会に分かれ、月1回の全体会と、月1〜2回の分科会を開催し、10か月間で80回以上の会議を開催した。
本構想の策定過程では、専門家を講師として招いた「湘南の海を考えるミニフォーラム」(全14回・参加者延べ800人)、小学生との「100人ワールドカフェ」(参加者120人)、有識者ヒアリング(約100人)、中間発表会(来場者180人)などを開催した。また、インターネット番組「湘南ビジョンTV」を立ち上げ、本構想の策定過程をネット上に積極的に配信するとともに、手づくりによるフリーペーパー『読む湘南』を毎月1,000部発行。さらに、ラジオ「J-WAVE」、「レディオ湘南」、タウン誌や新聞等のメディアでも積極的にPRすることにより、市民から多様なフィードバックをいただいた。
このように市民意見を吸い上げることに徹底的にこだわった結果、合計1,200人以上の方々からの意見を本提言に反映させることができ、専門家と市民の視点が高度に融合された市民マニフェスト「湘南都市構想2022」ができ上がった。