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2014.09.10 議員活動

自治の種まき〜未来世代のために~

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調布市議会議員 大河巳渡子

財政なくして政策なし、政策なくして財政なし

 見過ごされがちな無党派市民の暮らしの声を市政に伝えていこう、“市民と市政の懸け橋”として議会に代表を送ろう、と個人的なネットワークができていった。集まった市民の中から、「市川房枝政治参画センター(当時)」で学び始めていた私が、カンパとボランティアによる住民参加型選挙で1995年の統一地方選で当選した。
 これまで「政治は生活そのもの」を信条に、議会会期ごとに会報を発行、議会報告会も欠かさず開催してきた。私は市民の目線から市政をチェックし、市民の声を政策提案することを中心に、一人会派「元気派市民の会」として活動、現在5期20年目になる。
 1期目のスタート時に自らに課したことは、必ず行財政運営について質すことだった。それには理由がある。現職を退いて久しいが町議だった郷里の父が、議員の心得を説いたことに由来する。立候補を伝えたとき、地盤・看板・かばんを持たない女性の立候補は無謀、と手紙をもらった。しかし、当選すると、父が独学で学んでいた大蔵省(当時)が発行していた予算の手引書や、議員必携等の資料を持参して調布市の予算書・決算書をひも解き、見方や考え方を指南してくれた。「行政と対等に議論し政策提案するには財政通になること。議員は最初の質問が大事。財政問題を質問すること。財政なくして政策なし、政策なくして財政なし。常に財政と政策を一体に考え、自分が首長だったら市政をどういう方向に導くのか、責任ある発言をすべし」の言葉が、その後の議員活動の羅針盤になっている。

未来世代に無用な借金を残さない

 当初、私は多摩地区の議員を中心とした財政研究会に参加。その後、市川房枝記念会女性と政治センターで学んでいた仲間とゼミ形式の研究会を立ち上げ、決算・予算審議に向けた研修を含め、年4回自主運営で欠かさず学んできた。公会計を深めるべく国際公会計学会にも籍を置いているが、大切にしているのは“未来を担っていく子どもたちに無用な借金を残さない”という視点だ。私が最初に取り組んだのは決算時期の早期化だ。市では私が議員になるまで12月が決算議会だった。予算案が固まった時期に決算審議しても生かされない。9月に決算審議して、次年度予算に反映できるように決算時期の早期化を提案。めげずに何回も取り上げ、2002年度の決算から9月議会審議が実現した。
 市民の暮らしに寄り添い仕事をするのが行政の役割だが、現実は首長の公約実現に向けた行政運営に傾きがちだ。経済状況が悪化すると景気対策や公共事業の拡大が求められ、身の丈を越えた予算編成をして、借金を次世代に回していないだろうか。家庭なら、借金する前に支出を見直し、やりくりして、新たな収入も探った上で貯金を取り崩す。最後にどうしても手立てできないときに、初めて借金について検討するものだ。

“未来世代のために”という視点で議会審議に臨む

不交付団体が借金になる臨時財政対策債を発行するはモラルハザードだ

 2001年度から国が地方に交付する現金が不足したので、自治体が不足分を起債すれば国が地方交付税で返済するという制度が導入された。臨時財政対策債である。これは地方交付税の代替財源ともいえる。調布市は全国でも数少ない不交付団体だ。2014年度の不交付団体は全国市町村で55団体しかない。調布市に交付税は来ない。調布市がこれを発行すると借金を増やすことになってしまう。
 私は2002年度予算に臨時財政対策債が起債され基金に積み上げる予算提案に反対した。借金になる起債だと他会派も反対した。同年7月市長選では、大型公共事業反対を唱えた新人市長が当選し現職が落選した。ところが、新市長の初予算では大型公共事業を継続し、様々な要望に対応するため、財政調整基金も取り崩した上に、臨時財政対策債を15億円も起債する場当たり的な予算を組んだ。私は反対したが、前年度予算に反対した会派が、与党会派になった途端、多額な起債を含む予算に賛成した。ここで、政治的思惑による監視機能が低下する体験をした。以後、臨時財政対策債の発行が恒常化し、私以外の全会派が予算に賛成するようになった。臨時財政対策債に頼る予算は財政の硬直化を招くと警鐘を鳴らし続け反対してきた。その結果、議会でも臨時財政対策債は縮小すべしとの共通認識が進み、借入額は減少していった。
 2013年度から不交付団体は借入れできなくなった。そもそも臨時財政対策債は「発行可能」なもので「発行しなければならない」わけではなく、地方公共団体の責任と判断で発行できることを思えば、国が抱える膨大な借金に地方議会も加担してきた責任は重い。地方議会が「財政監視」の責任を果たせば、国の財政のあり方も変わるはずだ。

自治の種よ、芽を出せ、 議会はあなたを待っている

 家計では当たり前の“身の丈に合った行財政運営”が今後必須になるのではないか。公共施設の老朽化と、人口減による生産人口の減少が広がりつつある。公共施設の統廃合は避けられない。行政は市民サービスを、市民と協働で汗をかきながら生み出す時代になってくる。私たち大人世代が、子どもの貧困や若者の非正規雇用など深刻化する今、未来世代にこれ以上ツケを回してよいはずがない。持続可能な地域社会を次世代に手渡すための議員活動とは何かを心して考え、行動する時期に来ている。
 そのひとつの解決策が、暮らしの目線を持った女性たちの政治進出だ。今や社会全体が経済優先で、人間が生きていく上で大切にしなければならない命につながる環境問題や、教育問題、世界に類を見ないテンポで進む高齢化社会への対応が置き去りにされている。私は「女性と政治センター」主催の「女性を議会へ!全国キャラバン─2015統一地方選を前に」で、長崎、島根、石川にキャラバン隊の一員として参加した。女性議員の比率を上げるには、出たい人より出したい生活実感のある地域を熟知した女性を議会に送り出すためにお金をかけない住民参加型選挙を実践することだ。
 世界から見て日本の政治の大きな特徴は、女性議員が極めて少ないことだという。社会を構成する半分の性が社会の半分の責任を担い、地域で暮らす市民が自分たちのまちのことを決めていくべきだ。住民自治は、一人ひとりが自分のまちの暮らしを考えていくことから始まる。これまで経済を中心に考えてきた物差しをいったん横に置いて、命を大切にした未来世代につながる暮らし目線で社会全体を考えることから始めてはどうか。私は、無所属市民派議員こそ自治の芽を地域で育てる担い手になるべきと考えている。キャラバンで訪れた地域で、様々な活動をしてきた女性たちの瞳の輝きが今も忘れられない。自治の種をまいてきたが、その種が来春には花開き、地域にしっかり根差していくことを期待してやまない。

大河巳渡子(調布市議会議員)

この記事の著者

大河巳渡子(調布市議会議員)

調布市議会議員 調布市議会議員。長野県生まれ。結婚を機に調布市へ、子育てのため退職後に生協やPTAなど地域活動を始める。1994年市川房枝記念会主催「女性の政治参画推進セミナー」を受講、1995年統一地方選に立候補(無所属)し当選。現在5期目。

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