不交付団体が借金になる臨時財政対策債を発行するはモラルハザードだ
2001年度から国が地方に交付する現金が不足したので、自治体が不足分を起債すれば国が地方交付税で返済するという制度が導入された。臨時財政対策債である。これは地方交付税の代替財源ともいえる。調布市は全国でも数少ない不交付団体だ。2014年度の不交付団体は全国市町村で55団体しかない。調布市に交付税は来ない。調布市がこれを発行すると借金を増やすことになってしまう。
私は2002年度予算に臨時財政対策債が起債され基金に積み上げる予算提案に反対した。借金になる起債だと他会派も反対した。同年7月市長選では、大型公共事業反対を唱えた新人市長が当選し現職が落選した。ところが、新市長の初予算では大型公共事業を継続し、様々な要望に対応するため、財政調整基金も取り崩した上に、臨時財政対策債を15億円も起債する場当たり的な予算を組んだ。私は反対したが、前年度予算に反対した会派が、与党会派になった途端、多額な起債を含む予算に賛成した。ここで、政治的思惑による監視機能が低下する体験をした。以後、臨時財政対策債の発行が恒常化し、私以外の全会派が予算に賛成するようになった。臨時財政対策債に頼る予算は財政の硬直化を招くと警鐘を鳴らし続け反対してきた。その結果、議会でも臨時財政対策債は縮小すべしとの共通認識が進み、借入額は減少していった。
2013年度から不交付団体は借入れできなくなった。そもそも臨時財政対策債は「発行可能」なもので「発行しなければならない」わけではなく、地方公共団体の責任と判断で発行できることを思えば、国が抱える膨大な借金に地方議会も加担してきた責任は重い。地方議会が「財政監視」の責任を果たせば、国の財政のあり方も変わるはずだ。
自治の種よ、芽を出せ、 議会はあなたを待っている
家計では当たり前の“身の丈に合った行財政運営”が今後必須になるのではないか。公共施設の老朽化と、人口減による生産人口の減少が広がりつつある。公共施設の統廃合は避けられない。行政は市民サービスを、市民と協働で汗をかきながら生み出す時代になってくる。私たち大人世代が、子どもの貧困や若者の非正規雇用など深刻化する今、未来世代にこれ以上ツケを回してよいはずがない。持続可能な地域社会を次世代に手渡すための議員活動とは何かを心して考え、行動する時期に来ている。
そのひとつの解決策が、暮らしの目線を持った女性たちの政治進出だ。今や社会全体が経済優先で、人間が生きていく上で大切にしなければならない命につながる環境問題や、教育問題、世界に類を見ないテンポで進む高齢化社会への対応が置き去りにされている。私は「女性と政治センター」主催の「女性を議会へ!全国キャラバン─2015統一地方選を前に」で、長崎、島根、石川にキャラバン隊の一員として参加した。女性議員の比率を上げるには、出たい人より出したい生活実感のある地域を熟知した女性を議会に送り出すためにお金をかけない住民参加型選挙を実践することだ。
世界から見て日本の政治の大きな特徴は、女性議員が極めて少ないことだという。社会を構成する半分の性が社会の半分の責任を担い、地域で暮らす市民が自分たちのまちのことを決めていくべきだ。住民自治は、一人ひとりが自分のまちの暮らしを考えていくことから始まる。これまで経済を中心に考えてきた物差しをいったん横に置いて、命を大切にした未来世代につながる暮らし目線で社会全体を考えることから始めてはどうか。私は、無所属市民派議員こそ自治の芽を地域で育てる担い手になるべきと考えている。キャラバンで訪れた地域で、様々な活動をしてきた女性たちの瞳の輝きが今も忘れられない。自治の種をまいてきたが、その種が来春には花開き、地域にしっかり根差していくことを期待してやまない。