日本大学危機管理学部 鈴木秀洋/協力 工藤奈美
連載のはじめに─議員必修の法的知識とリーガルマインドを習得する連載!
議員は、日々様々な住民の課題や紛争解決の最前線で働いている。裁判等に至る知識・知見は議員活動の土台として必須のものである。例えば、自治体が裁判の被告になることは稀有(けう)なことではない。議会はどう対応すべきなのか。果たして、国家賠償請求訴訟、住民訴訟等の法的知識はどの程度あるのか。この連載の剣太事件を通して、法的知識とリーガルマインドを身につけ、自治体において命を守るとはどういうことか、修得してほしい。
【目次】(青字が今回掲載分) 第1回 剣太からのバトン─時間は当事者の気持ちを軽くしない 第2回 剣太事件概観─剣太誕生・事件当日・部活・被害者として 第3回 学校・行政対応のまずさ(1) ─危機管理学・行政法学・被害者学の視点から 第4回 学校・行政対応のまずさ(2) ─事故調査委員会・教員の処分 (【緊急特報】裁判記録は魂の記録である) 第5回 損害賠償請求事件(大分地裁) ─最初の闘い・地裁判決の法的位置付け 第6回 第1回口頭弁論に臨む遺族の気持ち(大分地裁) 第7回 口頭弁論と立証活動(大分地裁) 第8回 現地進行協議と証人尋問(大分地裁) 第9回 損害賠償請求上訴事件 第10回 刑事告訴・検察審査会 第11回 裁判を終えて 第12回 新たなステージ(剣太はみんなの心の中に) |
(編集部注:2023年4月25日 目次及び第1~6回タイトルを修正いたしました)
第1 剣太からのバトン
自治体行政は、住民の福祉の増進を究極の価値と定め(地方自治法1条の2)、個々の住民一人ひとりの日常の生活を守るためにある。この連載では、危機管理学の視点、法的視点、教育学の視点、心理学の視点、被害者学の視点など様々な学問的視点をもって、真に住民側の立ち位置から行政法及び地方自治法の再構成を行う。
本連載では、高校の剣道部(部活)において、顧問教師が、剣道部主将を務めていた工藤剣太さん(当時17歳・高校2年生。当時剣道3段。以下「剣太」と表記する)に対して、指導の名の下に集中的にしごき、暴行を加え、熱中症状態を生じさせ、かつ、その状態においても打ち込みを続けさせて死に追い込んだ事件(以下「剣太事件」という。体罰事件、熱中症事件との表記はいずれも事件の本質を誤らせるように思う)とその後の10年以上にわたる裁判等(①国家賠償請求訴訟、②住民監査請求、③求償権請求住民訴訟、④刑事告訴)をたどることで、子どもの命を守るとはどういうことなのか、学校・行政(議会を含む)はどうあるべきなのか、皆さんと考えていくこととする。
工藤剣太さん(中学校卒業式)