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2020.04.10 議会運営

【続々・緊急寄稿】新局面に「住民自治の根幹」としての議会をどう作動させるか~専決処分の限定と今後の議会対応

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残された課題:危機における二元的代表制の作動

危機状況における議会の作動を二元的代表制の充実の視点から3回にわたって検討してきた。より詳細な議論は、筆者が連載している「新しい議会の教科書」において行いたい。なお、これまでの「緊急寄稿」では主題的に議論されていない論点もそこで行う予定である。
① 危機状況とは何か(日常の議会改革が問われる(日常と例外の連続性の視点)
 例外を視野に入れないと、結局例外状況における「危機」を錦の御旗に首長主導政治が確立する。この視点から、「危機状況」を具体的に判定する準備をする(今回の専決処分のルール化もその1つ)。危機における二元的代表制の作動の意義、危機の時間軸と空間軸の設定(複合も想定)、議員の性格(住民・地域リーダー・公職者の認識、議員は議員としてだけで動けるものではない)
② 危機対応体系整備
 危機対応体系の整備を行う。災害対策基本条例、地域防災計画(議決事件の追加の有無)、住宅耐震化促進条例、避難所の機能整備及び円滑な管理運営に関する条例、議会BCPなどの体系整備が必要である。これらの多くは、自然災害を対象としているものがほとんどであるが、感染症の蔓延への対応などを含みこんだ条例、計画等が必要になっている。
③ 危機状況下の選挙運動
 議員も首長もその任期の終了前には、新たな選挙が行われる。危機状況であっても、そうである(6)。感染拡大防止をしながら、その際の開かれた選挙運動を模索する必要がある。

(1)ただし、東京都と国との調整が難航した。特別措置法では、知事は施設に休止を要請・指示できるが、感染拡大対策は政府による基本的対処方針に基づくとも規定しているからだ。その対処方針では制限の要請・指示を行う際には「国との協議」を行うこと、制限は「外出の自粛を見極めた上で行う」と記されている。
(2)ハンガリーでは、非常事態法が成立した(3月30日)。「理論上では、政府が無期限に超法規的な権限を振るうことも可能」となる。「新法の施行直後、政府は『挙国一致』の名の下に、選挙で選ばれた地方自治体の首長の権限を事実上無力化する法案を国会に提出。首長から激しい反発を受け撤回した。政府が危機に乗じて自治体の権限縮小を狙った格好だ。」という事例も紹介されている(「緊急事態宣言 海外では」『朝日新聞』2020年4月8日付)。
(3)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57727400W0A400C2L83000/

(4)2006年自治法改正以前では「議会を招集する暇がないとき」となっていた。
(5)なお、軽易でも議決による事項でもない「地方税法等の一部を改正する法律」の公布に伴う「税条例」及び「都市計画税」の一部改正が3月には必要になる。税に関わる重要な条例であるが、裁量がほとんどないことから、179条専決を慣行としている議会も多々ある。その場合でも、事前に閉会前に報告を受けたり(兵庫県宝塚市議会)、会派代表者会議で首長から説明を受け専決処分を了承したり(会津若松市議会)する議会もある。
 また、通年議会を実施している議会では、この179条専決は理論上不可能になる。
(6)災害などにより投票日に投票ができない、さらに別の日に投票を行う必要があることは公職選挙法に規定されている(繰延投票、公選法57①)。また、大震災にあたって、例外的に臨時特例法が制定されれば、延期が可能となる。


【附記】緊急寄稿(第1回~第3回)にあたって、緊急事態という用語は、一般名詞として活用してきた。しかし、緊急事態宣言が出された今、今後はそれに伴う場合に限定的に用いるべきだろう。緊急寄稿にあたって、前回までの論稿では混在してきたことにお許し願いたい。

【附記2】第1回定例会(3月議会)をめぐって、通常通り行った議会もあるが、右往左往した議会の問題点を指摘し、日頃の議会改革が新型コロナウィルス感染拡大といった危機状況で問われることを指摘した。危機状況は深刻化しているが、ぜひその危機に「住民自治」を進める視点から活動してほしい。特別委員会の設置の提案のほか、古賀市議会の動向も紹介した。
 なお、今回紹介できないが多くの取り組みもある。たとえば、板橋区議会は「板橋区議会新型コロナウイルス対策会議」を議会に設置し、議会としての対応を公開している( https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/020/389/gikai-c01.pdf )。
 この苦境にあたって、それぞれの議会は多様で積極的な実践が行っていると思われる。紹介もしていただきたい。
 ◆著者メールアドレス:teto0717@yahoo.co.jp

【附記3】すでにさまざまな実践が行われている。たとえば以下のものである。とりわけ、緊急寄稿の「続」と「続々」と密接な関連がある。
「板橋区議会新型コロナウイルス対策会議」設置(4月9日)ついては、次のWEBサイトを参照されたい。
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/020/389/gikai-c03.pdf
 また、議会として行政に対して提言を行っている議会もある。長野県飯田市の状況については(新型コロナウイルス感染症対策について、執行機関(飯田市新型コロナウイルス感染症対策本部長)に対し、市議会(飯田市議会災害対策本部会議代表)から2回目の提言を行った)、次のWEBサイトを参照されたい。
https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/life/70628_165752_misc.pdf

【参考】
地方自治法
第百七十九条 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、第百六十二条の規定による副知事又は副市町村長の選任の同意及び第二百五十二条の二十の二第四項の規定による第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市の総合区長の選任の同意については、この限りでない。
○2 議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。
○3 前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。
○4 前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、普通地方公共団体の長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。

第百八十条 普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。
○2 前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない。

第百二十一条 普通地方公共団体の長、教育委員会の教育長、選挙管理委員会の委員長、人事委員会の委員長又は公平委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員、農業委員会の会長及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならない。ただし、出席すべき日時に議場に出席できないことについて正当な理由がある場合において、その旨を議長に届け出たときは、この限りでない。
○2 第百二条の二第一項の議会の議長は、前項本文の規定により議場への出席を求めるに当たつては、普通地方公共団体の執行機関の事務に支障を及ぼすことのないよう配慮しなければならない。

第百十三条 普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議を開くことができない。但し、第百十七条の規定による除斥のため半数に達しないとき、同一の事件につき再度招集してもなお半数に達しないとき、又は招集に応じても出席議員が定数を欠き議長において出席を催告してもなお半数に達しないとき若しくは半数に達してもその後半数に達しなくなつたときは、この限りでない。

江藤俊昭(山梨学院大学法学部政治行政学科・大学院社会科学研究科教授)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学法学部政治行政学科・大学院社会科学研究科教授)

山梨学院大学法学部政治行政学科・大学院社会科学研究科教授  博士(政治学、中央大学) 1956年東京都生まれ。 1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、山梨県経済財政会議委員、第29次・第30次地方制度調査会委員(内閣府)、総務省「町村議会のあり方に関する研究会」委員、全国町村議会議長会「議員報酬等のあり方に関する研究会」委員長、等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、全国町村議会議長会特別表彰審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員、など。 主な著書に、『議員のなり手不足問題の深刻化を乗り越えて』(公人の友社)『議会改革の第2ステージ―信頼される議会づくりへ』(ぎょうせい)『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)、『議員NAVI』(第一法規)連載中。

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