北海道自治体学会議会技術研究会
これまで北海道自治体学会議会技術研究会(以下「当研究会」という)の研究概要版として、「議会改革の第2ステージと議会技術研究会」(議員NAVI 2017年12月11日号)、さらに具体策となる「議会の政策活動における多様な場と方法」(議員NAVI 2018年2月26日号)、「議会の政策活動と政策情報の作成・公開──事業別政策調書の活用」(議員NAVI 2018年4月25日号)、「一般質問等追跡システムのあり方」(議員NAVI 2018年6月25日号)についてお伝えしてきました。最後に「議会起点の三者間討議(対話)の活性化策」について、解説します(このパートも前回同様に西科純氏(当研究会共同代表・北海道芽室町)が担当)。
1 合議制機関・議会の利点〜多元性と争点提起を生かそう
1977年に西尾勝氏(東京大学名誉教授)は、二元代表制の基本原理を示しました。それによると「第1に、長と議会は双方とも直接市民を代表する機関として、その正当性の根拠において対等の地位にある。第2に、議会は決して自治体の最高機関ではなく、立法権を完全独占していない(長の拒否権あり)反面で、行政権の一部をも所掌する(契約案件の議決等)議事機関である。要するに、自治体の『団体意思』決定は長と議会に分掌され、あるいは長と議会の相互作用によってなされる」(東京都都民生活局編『都民参加の都政システム』(1977年)73~89頁〔西尾勝執筆〕)というものです。
さらに同書の中で、西尾氏は「両機関の『統合機能』には、その構成構造に由来する差異があり、長は独任制機関であるため機関意思の形成が比較的容易であり、一貫した政治主導を積極的に展開しやすい反面、自らの行為において選択肢の多様性と争点の所在を開示することは困難である。これに対して、議会は合議制機関であり、政党会派に分化しているため機関意思の形成が簡単でなく、その行為に一貫性を保つことがむずかしい反面、多元的な利益分化を反映するとともに、審議過程において争点を提起する面ですぐれている」と議会が持つ機能面から見た長所・短所について示しています。
この二元代表制の理論が示す議会が持つ機能と長所部分を認識しつつ、自らの議会・議員としての現状と比較すると、多くの「気づき」があると思います。議会は単に長と機関対立するのではなく、互いの機能と利点を生かすことが自治をより良いものにするという理想と、その理想に近づくための技術修得と手法構築のための制度確立への立志が湧き上がってくるのではないでしょうか。
2 自治体は4つの主体で運営されることを認識しよう
西尾氏が述べるように、議会の利点は「多元的な利益分化を反映するとともに、審議過程において争点を提起する面ですぐれている」ことであり、議会の欠点は「合議制機関であり、政党会派に分化しているため機関意思の形成が簡単でなく、その行為に一貫性を保つことがむずかしい」ことであるとすれば、どのようにその利点を伸ばし、欠点を克服していくかが命題となります。この命題に向き合うことが議会改革、議会活性化の本丸であろうと思います。そして、その本丸は「討議の充実」にほかならないのです。
故松下圭一氏(法政大学名誉教授)は、議会は情報・意見さらに政策・制度開発をめぐる「市民のヒロバ」であるべきと述べています。これは議会改革の第1ステージの根幹をなす「議会報告会」、「市民と議会との意見交換会」、「市民と議会のワークショップ・ワールドカフェ」などの議会への市民参加策が多元的に実践され、そこから市民要望を受け止め、議会側が能動的に調査し、長や執行機関側に対し政策提言を試みる動きです。
意見交換会の開催も地区別、団体・組織別、世代別など対象を多様化しながら対話・交流の機会を増やし、傾聴から会話へ、会話から対話へ、対話から論点化・争点化のための討議へという方向に転換しつつあります。
二元代表制の一翼を担う議会を起点とした場合、他の主体は市民(法人・NPOなどの組織団体を含む)・首長・自治体職員の3つです。当研究会では、議員間はもとより議会と三者間での討議(対話)の充実化を図るべきと提言しています(図1)。
つづきは、ログイン後に
『議員NAVI』は会員制サービスです。おためし記事の続きはログインしてご覧ください。記事やサイト内のすべてのサービスを利用するためには、会員登録(有料)が必要となります。くわしいご案内は、下記の"『議員NAVI』サービスの詳細を見る"をご覧ください。