山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授 江藤俊昭
はじめに
地方自治法等の一部改正法が国会を通過した。「等」としているのは、地方自治法(以下「自治法」という)だけではなく、地方独立行政法人法(以下「地方独法」という)の一部改正があったからである。
周知のように、この間の自治法改正の内容の多くは、地方制度調査会(以下「地制調」という)答申(及び意見)を踏まえて行われている。今回の改正(自治法と地方独法)は、第31次地制調答申に基づいている。ただし、この答申は最終の総会において、全会一致ではないという委員(武藤博己)からの発言が出て、畔柳信雄会長自身も「まさに武藤委員に私のかわりにおっしゃっていただいたようなところがある……きょういただいた御意見で今後の検討課題ということについては事務局とも十分に踏まえまして対応してまいりたいと思います」(第3回総会、2016年2月29日)と引き取った。このこともあり、法律案の形成に時間がかかっている。それだけではなく、答申と内容が異なる項目もある。この異なる内容は、本改正をめぐる争点ともなっている。
自治法の一部改正は、ガバナンスの強化という視点からの改革である。同時に、アングルを変えて読むと、住民参加や議会の拡充にも活用できる。改正によってどのような活用が可能か、その際の留意点、つまり課題も併せて示したい。
もちろん、議会による活用というと、議会自体の問題点を挙げる方もいる。政務活動費の不正受給、首長提案への追認機関化などである。こうした問題はあるが、今回の改正は一方ではこうした状況を改革するためにも、また新たな議会を創り出す上でも活用できるものがある。
住民自治、その根幹としての議会活動の充実に活用できるかという視点から、改正法を考えたい。なお、自治法等の抜本的な改革という視点からは、様々な提案ができる。ただし、本稿では現行法体系を踏まえて改正法についてベターかどうかという視点でのみ論評したい。第31次地制調答申との関係も問うことになる。
「上」(今回)においては、自治法等の改正の概要を議会改革の視点から確認する。住民福祉の向上に活用する視点からのものである。「下」(次回)においては、改正項目それぞれの意義と自治法等の改正を含む課題・留意点を確認する。