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2017.03.27 政策研究

東日本大震災を受けて整備された最新の防災・復興法制について(その1)

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(3)南海トラフ法と国土強靱化法、津波防災地域づくり法
 南海トラフ巨大地震の発生確率が今後30年で70%であると、政府では推計しています。そのため、南海トラフ巨大地震を前提にして災害予防対策を講じる法律として、南海トラフ法(南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法)、国土強靭化法(強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法)、津波防災地域づくり法(津波防災地域づくりに関する法律)が制定されています。
 主管は、それぞれ内閣府政策統括官(防災担当)、内閣府国土強靭化推進室、国土交通省水管理・国土保全局と異なります。それぞれの内容については、必ずしも論理的に整理されているものではありません。地方公共団体ではそれぞれの特徴をよく理解して、うまく活用することが大事です。
 特に、南海トラフ法は、避難路、避難タワーなどの避難施設への補助率のかさ上げや、高台移転のための農地法許可の特例法などが措置されているので、この点をうまく活用するといいと思います。
 3つの法律の関係を整理すると以下のとおりです。

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(4)土木施設計画、まちづくり計画、防災計画の関係
 防潮堤などの土木施設は、海岸法などの公物管理法に、まちづくりについては都市計画法に、防災計画については災害対策基本法に根拠を置いています。担当部局も、県、市町村に分かれ、それぞれの組織の中でも担当が分かれています。
 小規模な災害の際には、それぞれが独立して対処してもあまり問題はありません。しかし、東日本大震災のような大規模な災害で、復旧・復興事業が大規模・長期に及ぶ場合には、将来の世代につけを回さないように、計画段階で相互に調整することが本来必要です。
 東日本大震災では、結果として、土木施設計画が先行し、次に土地区画整理事業や高台移転(防災集団移転促進事業)などのまちづくり計画、最後に避難計画などの防災計画が策定されることになってしまいました。事前に十分に準備しておかないと、どうしても予算規模が大きくなり、事業手法も用地買収をして構造物を設置するという単純な土木施設工事が中心になります。
 このような課題を今後の大規模な災害の際に繰り返さないためには、平時から、土木施設計画、まちづくり計画、防災計画の調整を行っておく必要があります。その際には、各計画策定主体それぞれが対等の立場に立って、住民が早期に生活再建できるような計画づくりを目指すことが肝要です。さらに、その調整主体としては、住民に最も近い市町村長がなるべきと考えます。

 次回(4月25日掲載予定)は、「応急対策」について述べます。

※書籍『最新 防災・復興法制』の内容紹介等については、こちらをご覧ください。
 https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/102732.html

佐々木晶二(国土交通省国土交通政策研究所長)

この記事の著者

佐々木晶二(国土交通省国土交通政策研究所長)

1982年東京大学法学部卒業、建設省入省、岐阜県都市計画課長、建設省都市計画課課長補佐、兵庫県まちづくり復興担当部長、国土交通省都市局総務課長、内閣府防災担当官房審議官などを経て、現在、国土交通省国土交通政策研究所長。主著に、『最新 防災・復興法制』(第一法規、2017年)、『政策課題別 都市計画制度徹底活用法』(ぎょうせい、2015年)など。

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