鳥羽市議会議長 浜口一利
平成28年10月13日に田原市議会と鳥羽市議会は、西日本では初となる地方議会同士の協定を締結した。両自治体による友好都市協定も結ばれていない中、なぜ県境を越えて友好交流協定を議会単独で締結するに至ったのか。その概要を紹介する。
背景
愛知県田原市(人口6万3,543人/10月末日現在)と三重県鳥羽市(人口1万9,726人/同)は、伊勢湾口の対岸に位置している。
県境を越えた両市の行政間連携は、平成6年に指定された太平洋新国土軸構想による伊勢湾口道路(三遠伊勢連絡道路)の一環として、両市の対岸を大橋で結ぶ伊勢湾架橋構想の実現に向けた取組がある。また、平成22年には、両市を結ぶ伊勢湾フェリー株式会社が鳥羽~伊良湖航路の廃止を決めた際、航路存続に向けて両県・両市による航路存続対策協議会を立ち上げて支援をした結果、航路廃止が撤回され現在に至っている。
その他、商工会議所や観光協会等の民間団体においても、鳥羽伊良湖観光交流イベント「鳥羽VS伊良湖 勝つのはどっち? Vol.2 五番勝負!」など、様々な交流が続いている。
しかし、このような関係にもかかわらず、これまで両自治体による友好都市協定は結ばれていない。
一方、田原市議会と鳥羽市議会は、平成21年から議会同士が相互に訪問し合い、交流を断続的に続けてきた。先の伊勢湾フェリー航路存続問題の際も、両市議会が協力して「『鳥羽~伊良湖航路』の存続に向けた施策を国に求める意見書」を相互で可決し、平成22年4月28日に両市の議長が持参して国土交通大臣政務官へ提出した実績もある。
そこで、両市議会としてはこれからも交流を続けていくに当たり、協定という公的な合意を交わすことでさらに関係を強化していこうと双方が判断するに至った。
協定の内容と期待される効果
協定を締結するに当たり、どのような内容とすべきかについて統一した認識を図る必要がある。そこで、両市議会事務局長による事前調整後、東海市議会議長会定期総会の際に両市の議長が話し合う機会を見つけて協議した。その後、両市議会で内容の最終確認を経て協定案が固まり、以下の項目を定めることとなった。
1 両市議会は、緊密に連携し情報交換を行う。
2 両市議会は、適切な時期に相互の訪問を実施する。
3 その他、本協定に定めのない事項は、両市議会が協議して決定する。
協定項目については、文化・防災・交通・経済活動等の交流まで詳しく書き込むのか、情報交換や相互訪問を主体とする内容にとどめるのかという点が協議されたが、最終的には後者となった。これは、行政間の協定と違い、議会同士の対応次第でどのようにでも拡張していけるとの柔軟性を持たせる意図がある。
協定締結で期待される効果としては、①高速道路から両市を通る国道県道の一体整備要請や、観光振興・防災対策の支援等について両市議会による国や両県への意見書提出、両市議長による関係機関への陳情要望活動の実施等、②両市の諸問題に係る議会や委員会同士による情報交換の場の創出、③両市議会共催の合同議員研修会の実施、④両市議会事務局職員の交流、等が考えられる。
西日本初の地方議会単独協定締結
協定締結に当たり、全国の事例についてインターネットによる独自調査を試みたところ、地方議会同士による単独協定締結は驚くほど少ないことが分かった。岩手県久慈市議会と千葉県袖ケ浦市議会、東京都北区議会と群馬県中之条町議会、東京都町田市議会と神奈川県相模原市議会と、東日本で3例しか確認できなかった。今回の協定締結は、おそらく西日本では初の事例※ではないかと思われる。今後、両市議会の議会改革にも弾みがつくものと確信している。
※ただし、次の例はカウントしていない。
① 行政間の協定(友好都市協定等)に議会も含めている場合
② 議員連盟として交流している場合
③ 議長会同士の協定
④ 海外の議会との協定
全国的にも珍しい船上での協定締結式
今回の協定締結に当たり、せっかく協定を結ぶのであれば、田原市と鳥羽市の架け橋である伊勢湾フェリーの船上で実現できないかとの提案を田原市議会から発案した。そこで、伊勢湾フェリー株式会社に相談したところ、社長自ら「ぜひやりましょう!」と快く引き受けていただき、全国的にも大変珍しい船上での協定締結式を開催することとなった。
当日は、田原市議会議員18名と議会事務局職員4名が伊勢湾フェリーに乗船して鳥羽に到着した。そして、鳥羽市議会議員14名と議会事務局職員3名、地元テレビ局など報道関係者が着岸したフェリーへ乗船し、船内の特別室において協定締結式が執り行われた。
両市の議員が見守る中、両議長が協定書に署名して手交し、固い握手とともに両市議会の活性化と交流促進を誓った。
記念撮影後に早速、合同議員研修会を開催し、株式会社地方議会総合研究所所長の廣瀬和彦氏(明治大学政治経済学部講師・元全国市議会議長会法制参事)から「質問・質疑の活用と議員としての発言のあり方について」を受講し、それぞれの議員が熱心に耳を傾けた。
一連の行事終了後には、鳥羽市議会議員が名残を惜しみつつ再会を約束して田原市議会議員に赤いハンカチ※を振ってフェリーの出航を見送った。
※鳥羽市出身で世界の真珠王である御木本幸吉のエピソードをもとに、「再会の約束」を込めて赤いハンカチで見送る出港セレモニー。







