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2016.07.25 政策研究

地域創生 成功の方程式―担い手養成・定着の着眼点―

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(2)「知り気づき」を「行動」へ移す原動力
 「知り気づき」を新たな「行動」へ移すための重要な原動力は、地域の諸課題が適正に解決されているのか否かを費用対効果と併せて検証することである。例えば、リーマンショックの前後で、観光振興を推進するまちの市民1人当たりの所得、人口や若者流出、教育環境が、どの程度変動したのかなどの調査結果に目を通し、分析することは重要である。そのために必要となるのが、「地域創生のものさし(指標)」である。
 前述した点を筆者の経験から根拠付けたい。筆者は、全国の各地域や海外諸国を回り、主に農林水産業や製造業、サービス業等の多くの現場の方に接している。その際に行っていることは、まず、まちの主産業を十分に調査・分析することである。その上で、主産業の強化を図り、関連産業の起業・創業の意欲を高め、地域間の産業連携を模索・推進している。それは、特にこれから伸ばそうとする地場産業の地域人財の養成と定着を図るためである。
 要するに、「部分・個別最適」な状態を、「全体最適」、「価値共創」、「住民満足」、「循環型社会の実現」、「費用対効果」重視へ転換するという思考を前提に、①地域所得・売上げの向上、②地域人財の養成と定着のシステム化、③地域で汗する人を評価する仕組みづくり、④女性、若者、年配者の活躍する場づくりと支援体制、⑤まちの将来を見据えた新たな産業・文化おこしを構想・実現している。このように、私たち自身が、今、地域創生モデルとなっているまちの現状・課題を、自分や家族、知人の暮らすまちに照らし合わせ、確認、検証作業をすることが重要である。

(3)事業構想のための人財養成と定着の重要性
 「知り気づき」を「行動」に移すことは、課題解決のためではなく、時代を先取りするためにも求められる。その点を、観光産業の動向から示したい。筆者が住む北海道小樽市において年間観光客の動向が明らかに変化していることは、観光スポットの小樽運河、堺町通り商店街や歴史的建造物群のある地域などを直に散策しているとよく分かる。小樽市の年間観光客の入込数は約795万人(平成27年)である。年間観光客数は、リーマンショック時の減少傾向を脱し、現在は落ち着いている。現在の観光客の傾向は、道内観光客及び国内観光客数の減少を中国人など海外観光客数が増加しカバーしていると考えられる。
 今、早急に行うべきことは、全国各地、官民問わず産業振興に関する事業構想ができる専門的な人財の養成と定着である。かつて、小樽市は1986年に小樽運河が現在の姿に生まれ変わり、急速に観光客が増加したことがある。だが、主な施設の整備も、おもてなしの心の研修や受入れ準備も、観光基本計画もなく、まちの事業構想をすることも、リーダー・プロデューサー人財も後手となり、チャンスを地元がモノにでき得なかった苦い経験をしている。その経験も踏まえるならば、産業振興は、現状の課題解決能力のみならず、世界の情勢も踏まえた先取り能力が重要といえるのである。

3 時代を先取りする自治体のカギとは?

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木村俊昭

この記事の著者

木村俊昭

1960年北海道生まれ。慶應義塾大学大学院博士過程。1984年小樽市入庁。産業振興課長、産業港湾部副参事。実学・現場重視の視点を持ち、地場産業の振興から産業クラスター形成や地域ブランド化などを推進。2006年から内閣官房・内閣府企画官、2009年から農林水産省大臣官房企画官。主に基幹産業の6次産業化、地域ビジネスの創発、地域と大学との連携による人財養成と定着などを推進。現在、東京農業大学教授、内閣官房シティマネージャー(自治体・特別参与)、コミュニティ総合プロデューサー、一般社団法人日本事業構想研究所代表理事、一般社団法人五感六育ファーム代表理事等として、大学講義のほか、年間120か所以上で講演・現地アドバイスを実施中。地域活性学会常任理事(北海道支部長)。特に全体最適思考による基幹産業や地場産業振興、「0~100歳のコミュニケーション・コミュニティ形成の場づくり」として、木村モデル「五感六育」(知育・食育・木育・遊育・健育・職育)事業を展開中。NHK番組「プロフェッショナル 仕事の流儀 木村俊昭の仕事」、フジテレビ「新報道2001」、BSフジ「プライムニュース」、BSジャパン「日経プラス10」、テレビ東京「たけしのニッポンのミカタ!」、TBS「キズナ食堂」ほかに出演。著書は単著『「できない」を「できる!」に変える』、単著『自分たちの力でできる「まちおこし」』(ともに実務教育出版)、共著『 知られざる日本の地域力』(今井出版)ほか多数。『地域創生 成功の方程式――できる化・見える化・しくみ化』(ぎょうせい、2016年7月27日発刊)。

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